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世界のエネルギー事情2025

大阪・関西万博から世界へ発信するエネルギーの未来と可能性

EXPO 2025 大阪・関西万博「電力館」岡田康伸館長に聞く、エネルギーの可能性

4月13日に開幕した「EXPO 2025 大阪・関西万博」(以下、大阪・関西万博)。“SDGs万博”とも称され、環境や多様性、カーボンニュートラルなどのテーマに着目したパビリオンが多数展開されている。その中でも、電力をはじめエネルギーの最新技術について知る機会を提供するのが、電気事業連合会(以下、電事連)が出展する「電力館 可能性のタマゴたち」(以下、電力館)である。国内外から注目される万博で、どんな“エネルギーの未来”が世界へ向けて発信されているのか──。電力館の岡田康伸館長に話を伺った。

2025年、大阪・関西から「エネルギーの未来」を発信

国内電力会社10社から成る電事連は、これまで1970(昭和45)年の大阪万博、1985(昭和60)年のつくば科学万博、1990(平成2)年の大阪園芸博、2005(平成17)年の愛・地球博の特別博を含む4度の万博でパビリオンを出展。毎回テーマに即したエネルギーの展示を行い、合わせて約1920万人の来館者が訪れた。

5回目の出展となる大阪・関西万博の開催が決定したのは2018年。2021年夏に出展に向けた準備室が発足し、10月に出展申請された。

電事連の一員、関西電力株式会社に所属する岡田康伸氏は、出展を見据え2021年開催のドバイ万博を視察。このときが自身にとって初めての万博体験であり、後のパビリオン展開への大きなヒントを得たという。

「印象的だったパビリオンは、“体験”にフォーカスしていたドイツ館と日本館。展示や映像を見せるスタイルのパビリオンが多い中で、スマートフォンと連動した演出や体験ができたのはとても面白いと思いました。このときの視察が、今回の電力館で体験を強く意識した経緯に結び付きます」

「関西での開催決定には期待感を抱きましたし『何かできたら』という思いはあったものの、まさかパビリオンそのものを任されるとは夢にも思いませんでした」(岡田氏)

画像提供:電気事業連合会

ウクライナやガザなどでの軍事衝突、トランプ米政権のパリ協定(2026年1月に)離脱など目まぐるしい情勢変化は世界のエネルギー事情にも都度影響を及ぼす。そうした状況の中、大阪・関西万博が開催され、電力館を通してエネルギーの未来を世界へ向けて発信できることに「一定の意義を感じている」という。

「大阪・関西万博を契機にエネルギーをより身近で感じ、その在り方を考える機会になったらと願っています。電力館だけでなく多くのパビリオンで水素やバイオガス、核融合など電気を生み出すさまざまな最新テクノロジーを紹介しています。発電方法だけでなく送電方法など、電力供給を支える技術も日々進化しています。電力館でもエネルギーに意識を向け、その面白さや可能性に気付ける仕掛けを用意しています」

子どもから大人まで楽しめる体験型のコンテンツ

電力館は「可能性のタマゴ」というコンセプトを体現するようなタマゴ状の外観を有した建物だ。

パビリオン入館の際、来館者は好きなタマゴ型デバイスを一つ選び、首からかけて館内を探索する。

タマゴ型の近未来的なフォルムが来場者の目を引く「電力館 可能性のタマゴたち」

画像提供:電気事業連合会

大阪・関西万博パビリオン「電力館 可能性のタマゴたち」PR動画

「例えば、モーションキャプチャーによって映像に映る原子核を動かして融合させる核融合や、車、家電など電気で動くものへシューティングゲームのように電気を送る無線給電など、エネルギーがどのように働いているかを感じる体験ができます。このとき来場者の動作に反応してデバイスが光り、震えることでエネルギーの動きを可視化し、楽しめる仕様になっています」

来館者は、さまざまなエネルギーがどのように生み出され、届けられるのかを最新技術で可視化した疑似体験を通して楽しみながら学ぶことができる

画像提供:電気事業連合会

扱われている発電や送電の技術は約30種類。一度に全てを体験するには時間が足りないほどのボリュームを用意し、身近なところにエネルギーの可能性がたくさんあることを感じてもらうように設計している。

今回、電力館の展示で特に意識したことは「カーボンニュートラルの先にある未来」だと岡田氏は説明する。

「さまざまな発電技術がニュースで取り上げられる機会も増えてきましたが、『どうして発電できるのか』『どういうところが優れているのか』といった技術の深い部分まで知る機会は正直あまりありません。エネルギー技術や可能性を、次世代に伝えていくための舞台装置としての大阪・関西万博、そして電力館の使命は大きいと感じています」

子どもたちがエネルギーに触れ、知る、考える機会、いわばエネルギー教育は、可視化が困難なエネルギーを扱う意味でも小学校などでは指導が難しく、近年の教育課題でもある。この傾向は、世界でも同様に課題として抱える国があるのではないだろうか。
参照:未来を育むエネルギー教育

2050年のその先へ──。次世代へ受け継ぐエネルギーの可能性

万博は国内外の来場者が世界各国のパビリオン展示に触れる場としてだけでなく、各国のビジネスパーソンが最新技術やプロダクトに触れ、新たな事業の可能性を探るビジネスコミュニケーションの機会としての側面も持っている。

岡田氏も、そうした機会にも結び付くようなパビリオン間のコラボレーションやイベントは「ぜひやってみたい」と考え、10月13日までの開催期間中に、まだまだ変化することもありそうだ。

「他にも、夏休み期間は自由研究のテーマ探しの一助になればと考え、子どもたちに向けて電力館を含む複数のパビリオンを回るツアーを企画検討しています。エネルギーに関する事業者も複数出展されていますので、一緒に取り組めるような形を模索しているところです」

館内には人の動き、振動から電気を発生させる体験なども。まさに「エンタメ×エネルギー」を体現したような展示は、子どもたちとエネルギーをより身近に結び付ける

画像提供:電気事業連合会

エネルギー問題は2050年のカーボンニュートラル達成で終わるものではなく、よりよい形をこれからも探っていかねばならないだろう。

それを担うのは次の世代である子どもたちだ。

「だからこそ、子どもたちにエネルギーの面白さや可能性をたくさん知ってほしい。そこから一人でも、エネルギーの可能性や面白さについて追求してくれる人が現れたら、館長としてこんなにうれしいことはありません」

各国のパビリオンでも、エネルギーについて考えるコンテンツは多そうだ。2021年のドバイ万博の記憶を振り返りながら、岡田氏は次のように語った。

「ドバイ万博では、環境問題にフォーカスした展示をする国も多くありました。例えば、オランダ館では洪水をはじめとする“水”への関心やリサイクルへの意識が非常に高いことをそこで知りましたし、環境問題への対策のためにはインフラ整備も欠かせないのだと感じました。シンガポール館では生物多様性への問題を取り上げるなど、国によって緊急度や関心度の高い課題が異なることもそれまでは気にしたことがありませんでした。万博にはそれこそ各国が出展していますし、大阪・関西万博でも一つのテーマ、例えばエネルギーを軸として、国ごとの違いや共通点を体系的に知る機会にもなるのではと感じています」

カーボンニュートラルの達成目標である2050年まで、あと25年。

長いようで短い25年をどのように過ごすのか。

世界は意識の変容をどのように進め、エネルギー問題を解決へと導くのか──。

25年後、そしてその先へ、大阪・関西万博は世界中がエネルギーの未来を考える契機となる。

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