1. TOP
  2. 特集
  3. 世界のエネルギー事情2026
  4. 再エネはどこへ向かうのか──。世界の潮流と日本の現実
特集
世界のエネルギー事情2026

再エネはどこへ向かうのか──。世界の潮流と日本の現実

2026年、再生可能エネルギーの利活用における世界の事情

欧州のエネルギー価格高騰などを背景に、世界の再生可能エネルギー(以下、再エネ)を取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。欧州や米国で洋上風力発電プロジェクトの撤退が相次ぐ一方、日本でも政府によるメガソーラー支援の見直しが進むなど、再エネ業界には逆風とも言える変化が広がっている。こうした状況を踏まえ、2026年の世界の再エネ動向をどう読み解くべきか、一般財団法人 キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏に話を聞いた。
(<C>メーンおよびカルーセル画像:240pikaru / PIXTA<ピクスタ>)

再エネ評価のウラに潜むもの

米科学誌「サイエンス」は、2025年の科学分野における10の大きな成果を発表し、最も優れた成果である「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」に、世界的な再エネの普及を選出した。

2025年上半期に世界の再エネ発電量が石炭火力を上回ったことなどが評価された形だが、エネルギー政策研究の第一人者である杉山氏は次のように異論を唱える。

「再エネの発電量が石炭火力を上回ったことは事実です。ただし、その大半は水力発電によるものです。水力発電は再エネの中でも、電力を安定・大量供給できる主力電源として、以前から高く評価されてきました。サイエンス誌の発表だけを見ると、太陽光や風力が石炭火力を上回ったかのような印象を受ける人も多いと思いますが、その点は誤解が生じないよう注意が必要です」

一方、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のコスト分析では、再エネの発電コストが石炭火力や天然ガスなどの化石燃料発電を下回ったとする報告も示されている。杉山氏はこの点でも慎重な見方を示す。

「発電電力量当たりのコストを比較するだけでは、実態を正しく捉えられません。出力が不安定な太陽光や風力と、安定供給が可能な火力や原子力を同列に並べて比較することに無理があります。太陽光や風力で安定した電力供給を行うには、発電しない時間帯に備えた蓄電が不可欠であり、バッテリーなどの追加費用を含めた系統統合コストで比較すべきです。そうすると、再エネはどうしてもコスト高になってしまいます」

水力発電も開発可能な地点には限りがある。特に先進国では有望な水力発電地点の多くが開発済みであり、新規開発は容易ではない。

日本では太陽光発電の導入が進められてきたが、太陽光パネル1枚あたりの設備利用率は約13%にとどまり、残りの87%は火力や原子力といった安定供給可能な電源に依存せざるを得ない。

こうした課題を背景に、薄くて軽く、曲げられるペロブスカイト太陽電池が日本発の技術として期待を集めている。しかし、杉山氏は「この技術にも過度な期待は禁物」と指摘する。

「メガソーラーは高電圧の直流を扱うため、人が触れれば感電事故につながりますし、漏電すれば火災のリスクも高まります。そのため屋外に設置する太陽光パネルは、台風や地震に備えて強化ガラスで覆い、金属フレームでしっかり固定する必要があります。そうなると、薄くて軽く、曲げられるというペロブスカイトの特徴は、ほとんど生かせません」

一方、風力発電は近年、洋上風力発電への期待が高まっていたが「洋上風力の限界も明確になった」と杉山氏は話す。

「洋上風力発電は沖合まで船を出して建設、維持管理を行うため高コストになりやすいのは明らか。その見積もりの甘さがはっきりと表面化したと言えるでしょう」(杉山氏)

(C)YsPhoto / PIXTA(ピクスタ)

「2025年を振り返ると、欧州や米国で洋上風力発電事業からの撤退が相次いだことが強く印象に残ります。最大の要因は資材価格の高騰ですが、以前からコスト見通しが過度に楽観的だとの指摘も多くありました。日本でも想定以上のコストを要することが明らかになり事業撤退の動きがありました」

再エネ政策を巡る世界各国の動向

ロシアとウクライナの紛争の長期化や、再エネの高コストなどを背景とした電気料金の高騰により、再エネ政策の見直しを求める声は世界的に強まりつつある。

「再エネ推進に積極的だったEU各国の状況を見ると、再エネ導入を進めてきた国ほど電気料金が高くなる傾向がはっきりしています。太陽光や風力の普及率(火力や原子力を含む全発電設備に占める割合)が高い国の上位は、デンマーク、ドイツ、アイルランドです。そして、家庭用電気料金が高い国の上位も、この3か国が占めています。こうした状況を背景に、例えばドイツでは支持を拡大している野党『ドイツのための選択肢(AfD)』が『恥の風車』といった表現を用いて再エネ政策を批判しています。さらに、フランスやイギリスでも有力野党が再エネ政策に反対の立場を示しており、再エネを巡って国論が二分される状況が生まれています」

一方、アメリカではトランプ大統領が再エネへの優遇措置の撤廃・縮小、パリ協定からの再離脱を打ち出し、前政権とは正反対とも言えるエネルギー政策を進めている。杉山氏は「民主党支持州と共和党支持州の間で、電気料金を巡る大きな格差が生じている」と指摘する。

「アメリカの電気料金を州別に示した地図を見ると、再エネ導入に積極的な民主党支持州、いわゆるブルーステートで電気料金が高くなっていることが一目瞭然です」(杉山氏)

出典:Institute for Energy Research(IER)

「民主党への投票割合が高い州と、共和党への投票割合が高い州の電気料金を比較したグラフでも、民主党支持が強い州ほど電気料金が高い傾向が確認できます。こうした政策の違いにより州間格差の拡大し、企業が民主党支持州から共和党支持州へ移転する動きも出ており、国内での産業の空洞化が進んでいます」

杉山氏は、カナダでも再エネ政策への姿勢が揺らいでいると指摘する。

「カナダでは2025年にマーク・カーニー氏が首相に就任しました。同氏は選挙期間中、再エネ推進の姿勢を示していましたが、トランプ関税への対抗策として米国依存を低減する必要に迫られ、石油やガスへの規制を緩和して投資を呼び込む方向へと政策を転換しました。この動きに反発して環境相が辞任するなど、エネルギー政策を巡る国内の混乱が表面化しています」

一方、再エネの供給面に目を向けると、中国の存在も見逃せない。

「世界の太陽光パネルは9割以上が中国で製造されており、風力発電設備でも中国は世界最大のシェアを占めています。そのため、中国は他国と比べて桁違いの規模で再エネを導入していますが、現在でも発電量の約7割は石炭火力に依存し、原子力発電も着実に増やしています。中国共産党はコストに対して非常にシビアですから、これまでは補助金によって再エネ導入を支えてきましたが、今後は太陽光パネルやバッテリーの補助を削減する方針を示しています。この動きは世界の再エネ市場に大きな影響を与えるでしょう」

2026年、再エネ利用の焦点と問われる日本の選択

再エネを巡る2026年の動向を探る上で、杉山氏は次の2つを注視する。

「一つは『脱中国』の動きです。国際的な緊張が続く中で、太陽光や風力についても、中国への依存から脱却しようとする動きが世界的に強まると見ています。もう一つは、AIの進化に伴う電力需要の急増です。世界各地でデータセンターの建設が進んでいますが、当初、ビッグテックは必要な電力を再エネで賄う方針を示していました。しかし、再エネだけでは安定供給が難しく、実際には火力や原子力の導入を急速に進めています。アメリカは現在でも日本の約4倍の電力を消費していますが、今後10年で、日本一国分に相当する電力需要が新たに増えるとも言われています」

2025年、中国では世界最大規模のタワー型太陽熱発電所が着工した。写真は同国が開発した溶融塩タワー型太陽熱発電所

(C)240pikaru / PIXTA(ピクスタ)

こうした世界の動きを踏まえると、日本の動向も大きな転換点を迎えていると言える。政府は2027年度からメガソーラーおよび出力10kW以上の地上設置型太陽光発電に対する全ての補助金を打ち切る方針を示した。この判断は、今後の日本の再エネの行方を大きく左右することになるだろう。

杉山氏は、その背景について「再エネ導入に伴う地域環境への影響が、最も大きな要因だった」と指摘。日本の再エネ導入を支えてきた再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)の見直しについて、次のように提言する。

「再エネ賦課金による国民負担は年間で約3兆円に上ります。これは消費税に換算すると約1.5%分に相当し、国民1人当たりでは2万円以上の負担になります。3人家族なら6万円超です。このコストと日本経済の現状を考えれば、私は撤廃すべきだと考えています」

さらに杉山氏は、再エネ賦課金の撤廃を訴えるもう一つの理由として「日本の立地条件では、再エネ導入による効果が限定的である点」を挙げる。

「再エネを大量に余らせて捨てるような発電にならなければ、一定の効果は期待できると思います。蓄電を前提としない、合理的な範囲で発電し、その分だけ化石燃料を節約できるのであれば、再エネ導入を進める意味はあるでしょう。そのためには、太陽光であれば年間日照量が多く、晴天率が高いことが条件になります。そうした条件を満たす国は、サウジアラビアやUAEなどに限られます。

日本は太陽光パネルの設備利用率が約13%にとどまり、決して好条件とは言えません。これは洋上風力も同様で、日本では条件の良い地点でも稼働率は最大で35%程度です。一方、北海やフランスのノルマンディーなど、条件に恵まれた地域では最大55%に達します」

「各国での事情の違いを踏まえれば、日本で再エネ賦課金を継続してまで再エネを推進する意義があるのか、改めて議論を深める必要があると思います」(杉山氏)

近年、再エネ推進に否定的な意見が各国で勢いを増し、国論が二分されるケースも少なくない。

日本でも近年はメガソーラーの問題、政党が再エネ賦課金廃止を訴えるなどこれまでにない議論が出始めている。

このままで日本の産業競争力を維持できるのか。

エネルギーの安定供給を確保できるのか。

再エネを「推進するか否か」という二元論ではなく、日本の条件に即した現実的なエネルギー政策について、より踏み込んだ議論が求められる時期に来ていると言えるだろう。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitterでフォローしよう

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • はてぶ!
  • LINE
  1. TOP
  2. 特集
  3. 世界のエネルギー事情2026
  4. 再エネはどこへ向かうのか──。世界の潮流と日本の現実