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日本初!停電時でも電車を動かせるテスラの大型蓄電システムを近鉄が導入

EV(電気自動車)だけじゃない! 世界各地で採用されるテスラの「Powerpack」とは

もし停電が起きて、自分の乗っている電車が止まってしまったら──。ふとそんな不安に襲われたことはないだろうか?しかし、将来的にこの不安は日本全国で過去のものとなるかもしれない。その鍵を握るのが、この春、近畿日本鉄道が導入したシステム、アメリカの電気自動車大手・テスラが展開する話題の蓄電装置「Powerpack」だ。蓄えたエネルギーで停電時の電車を動かすことができるという。世界中で稼働する中、日本の鉄道会社に初めて導入された画期的システムの秘密を紹介する。

乗客の安全を確保し、電力のピークカットにも使える優れもの

大都市圏では欠かすことのできない公共交通機関・鉄道。朝夕の通勤・通学ラッシュ時には、2~3分おきに電車が来ることも珍しくない。

日本の鉄道は世界と比較しても時間に正確で安全だと評されるが、弱点もある。それは、電力の供給がストップしたときだ。

電車は文字通り、電力をエネルギー源として走行する。パンタグラフが架線に触れることで電気を取り入れ、列車内のモーターが回転。力を車輪に伝えることで電車が走るという仕組みだ。一部、非電化区間ではディーゼルエンジンをエネルギー源として走る「気動車」も存在するが、都市部は基本的に電化区間。つまり、都市部で停電が発生すると電車は動かなくなってしまうのだ。
※JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)のバッテリーを搭載した新世代の電車「蓄電池車」の開発、導入に関する記事はこちら

これからのシーズン、豪雨や台風の影響で鉄道が遅延することも

(C)hamazou / PIXTA(ピクスタ)

近年多発する台風やゲリラ豪雨などを起因とする停電で、電車が立ち往生してしまう場面に遭遇した人も多いのではないだろうか?

そんな中、「近鉄」の愛称で親しまれている近畿日本鉄道が4月に運用を開始した蓄電装置が話題になっている。

近鉄といえば、大阪に本社を構える関西大手の鉄道会社。私鉄最長の営業路線網を持つことでも知られ、大阪や京都、奈良といった関西圏のほか、三重や愛知にも路線網を広げている。

今回、近鉄が東大阪市にある東花園変電所に設置した蓄電システムは、アメリカの電気自動車大手・テスラが開発した「Powerpack」。縦1.3×横0.82×奥行き2.18mの筐体(きょうたい)に、16の独立したパワーポッドや温度管理システム、数多くのセンサーを内蔵する蓄電装置だ。

Powerpackの内部。長年の自動車用バッテリー開発で培った技術がコンパクトに集約されている

設置されたPowerpack42台の総容量は約7.1MWh(メガワット時)となり、一度に4.2MWを出力することが可能だという。

止まってしまったすべての電車を4.2MWで動かすことは不可能だが、近鉄の狙いは乗客の安全を確保すること。

停電時にPowerpackから電力を供給し、地下区間やトンネル内で立ち往生してしまった電車を安全な最寄り駅まで動かすことを目的としているのだ。ちなみに、Powerpackが導入された変電所から電力を得ている近鉄奈良線には、大阪と奈良をつなぐ新生駒トンネル(総延長3494m)があることでも知られている。

近鉄奈良線のほぼ中間に位置する東花園変電所に設置されたPowerpack

また、電力消費が伸びる朝夕の通勤・通学ラッシュ時や夏のエアコン使用時には、電力負荷を抑えるため(ピークカット)の稼働も想定されているという。

EV(電気自動車)のイメージが強いテスラだが、実はPowerpackのような蓄電システムを世界中で稼働させている。

52MWhの総容量をもつハワイ・カウアイ島のPowerpack。太陽光発電で得たエネルギーを蓄電して夜間に利用することで、ディーゼルによる発電量を削減している

現在、テスラのPowerpackはオーストラリアやアメリカ、ベルギーなど、世界各国で稼働し高い評価を得ている。

中でも、2017年11月にオーストラリアの南オーストラリア州ジェームズタウン近郊に作られた施設は、容量129MWhで世界最大の蓄電施設として現地の電力安定供給を担っている。

ジェームズタウン近郊のホーンズデール風力発電所に設置されたPowerpack。2016年9月の台風によって壊滅的な被害を受けたインフラの整備事業として導入された

また、驚くべきはその設置スピードだ。オーストラリアの設備を建設する際には、テスラのCEOイーロン・マスク氏が「100日以内に完成しなければ、建設費用を自ら負担する」と公言。実際には、約2カ月で設置してみせたという。

近鉄のケースもPowerpackの設置はわずか2日間の工事だったとのこと。

今回の近鉄のプロジェクトは、関西バーチャルパワープラント(以下、VPP)プロジェクトに賛同してのものだ。

VPPとは、分散して設置された電源(太陽光発電、風力発電、蓄電池など)を遠隔・統合制御することで、まるで一つの発電所のように機能させること。これにより、相互間で電力負荷の平準化や電力需給の調整をすることが可能とされている。

今回、日本で初めて鉄道会社に導入されたテスラのPowerpack。電車を利用する乗客の安全を守るのはもちろん、VPPを通して幅広く社会に活用される可能性を大いに秘めているのではないだろうか。

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