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南国の海に浮かぶ巨大ソーラーパネル! SolarSeaはモルディブの自然を守れるか

インド洋の真珠と称されるモルディブが抱える社会問題解決に向けた切り札となるか?

南国リゾート・モルディブ。誰もが一度は訪れてみたいと思う憧れの国には、その土地特有の問題がある。国土の狭さから大規模な発電所や太陽光発電などの設置が難しく、電力供給のほとんどをディーゼル発電に依存。自然を保護したい国にとって、ディーゼル発電による二酸化炭素排出と燃料費が重い問題になっているのだ。そんな現実を打破すべく開発されたのが、海に浮かべて使う太陽光発電・SolarSea。モルディブのみならず、離島を抱える多くの国でも有効な新しい技術を紹介する。

太陽光発電の常識を覆す新たな視点

今や日常的な光景となった太陽光発電──。その歴史は意外と古く、日本で初めて実用化されたのは今から60年以上も前のことだという。

当時はソーラーパネルの性能が低く、作られたエネルギーはその場で使うか蓄電池にためるかの二者択一。さらに蓄電池の容量も少なく、メンテナンスに莫大な費用がかかることもあり、なかなか普及するまでには至らなかった。

現在のような爆発的な普及を見せた要因は、3つ目の選択肢「売電」が加わったことにあるといえる。

2009年に余剰電力買取制度が開始され、2012年にはFIT法と呼ばれる固定価格買取制度がスタート。これにより、「ある程度の初期投資が発生しても〇〇年で回収できる」といった触れ込みが広がり、企業のみならず一般家庭にまで設置される機運が高まった。

家庭の屋根に設置された一般的な太陽光パネル。家を新築・改築する際に取り付けるか悩んだ人も多いのではないだろうか

屋根や駐車場、ゴルフ場の斜面など、さまざまな場所で稼働している太陽光発電。

来春には道路に埋め込むタイプの太陽光発電がドイツで実用化される見込みだが、いずれにしても陸上に設置するというのが常識であり、業界のスタンダードとされている。
※道路に埋め込むタイプの太陽光発電の記事はこちら

そうした中、ヨーロッパで20年以上にわたって太陽光発電の開発・運営を行ってきたSwimsol社が、世界で初めての太陽光発電を開発した。それが、浮体式洋上太陽光発電「SolarSea」だ。

同社の所在地はオーストリア・ウィーン。イタリアやドイツに隣接する内陸国で洋上太陽光発電と聞くと少し不思議だが、開発のきっかけはインド洋の真珠と称される楽園・モルディブにあった。

陸地がないなら洋上へ! 思わぬメリットも

約1200の島々からなるモルディブは、国土面積298km2で東京23区の約半分。人口約40万人ながら、年間120万人を超える観光客が訪れる一大リゾート地だ。

国土の8割が海抜1.5m以下にあることから、地球温暖化によって引き起こされる海面上昇に脅かされている同国。一方、その国土の狭さから従来の太陽光発電や他の発電施設導入には限界があるとされ、使用される電気のほとんどは環境負荷の大きいディーゼル発電で賄われている。GDPの約25%が燃料購入費に使われていることからも、化石燃料からの脱却は大きなテーマとして長年にわたって扱われてきた。

そこに目をつけたのが、Swimsol社。ウィーン工科大学やドイツのフラウンホーファー研究機構との4年以上の共同研究を経て、世界で初めての浮体式洋上太陽光発電システム・SolarSeaを2014年にモルディブに導入した。

コンピューター上や模型を使っての実験などを繰り返し行い、高い安全性を確保。ボートと比べるとのその大きさが分かる

縦横14mの浮体式プラットフォームからなるSolarSeaには25kWのソーラーパネルが敷き詰められており、一つで一般家庭およそ25軒分の電気を賄える計算になっている。海水による冷却効果と海面からの光の反射により、同条件の一般的な太陽光発電より5~10%高出力になるのが特徴だという。

特許出願済みの同製品は、高さ1.5mの波や時速100kmの風に耐えることが可能。また、南国特有の強い紫外線や湿気にも対応し、耐用年数は30年とされている。同社が作った現地法人が設置やメンテナンスまで対応しているので、故障などの場合に素早く対応できる強みもある。

ことし7月には、首都・マーレからスピードボートで約10分のディッドゥフィノール島に世界最大級の浮体式洋上太陽光発電ユニットを敷設。同島のリゾートホテル「LUX* South Ari Atoll」の屋根にはSwimsol社の一般的な太陽光発電(487kWp/キロワットピーク)も備えており、12個のSolarSea(191kWp)を加えた合計は678kWpに。

これにより、晴れている場合は193室ある客室全ての電気を太陽光発電のみで賄えるようになったと同ホテルは発表している。

設置途中の様子(上)とホテルの屋根や海上にソーラーパネルが設置されているのが分かる様子(下)

年間26万リットル以上のディーゼル燃料を削減できるのが最大のメリットだが、ユニットの下が魚のすみ家になるという思わぬ利点もあるのだとか。滞在者の多くがシュノーケリングを楽しむため、ホテル近くに魚がすみつくことは大歓迎だと関係者は話している。

現在、4つの浮体式洋上太陽光発電を運営する同社。モルディブでは新たに10の施設で導入に向けた交渉が進められているほか、今後はマレーシアやセーシェルでの設置も予定しているという。

環境への負荷が少なく、従来の太陽光発電よりも高効率なSolarSea。耐用年数も30年と長いことから、モルディブのような国土の狭い島国や地域から集まる期待は大きい。

化石燃料からの脱却にひと役買いそうな浮体式洋上太陽光発電に今後も注目したい。

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