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トヨタが静電気を利用したエアレス塗装機を開発! 自動車製造工程のCO2排出量削減へ

世界初の技術で塗料のロスを低減、塗着効率が95%以上に向上

私たちの暮らしに身近な乗り物である自動車だが、昨今の地球温暖化の問題もあり、取り巻く環境は年々厳しさを増している。そんな中、トヨタが塗装時のCO2排出を抑制する新型塗装機を開発した。走行時ではなく、製造工程におけるCO2排出低減に着目した新たな挑戦をご紹介する。

美容機器の技術を車体塗装に応用してCO2を削減!

現在、各自動車メーカーがこぞって市場投入を進めているEV(電気自動車)。地球温暖化の原因となるCO2を走行時に排出しない自動車のEV化が進めば、環境問題の解決に向けて大きな一助となることは間違いないだろう。

その自動車のCO2排出には2つの考え方がある。

一つは、「Tank to Wheel(タンクトゥホイール)」と呼ばれる、“走行時にどれだけCO2を排出しているか”という考え方。この考えでいえば、ガソリンを燃料としないEVは究極のエコカーといえるかもしれない。

一方で、EVであっても走行に必要な電気が化石燃料に由来する場合、発電時にはCO2が発生しているのでCO2排出ゼロとはいえない。そのため、自動車のCO2排出量は、“走行時のみではなく燃料の採掘や生成に至る過程も踏まえるべき”であるとするのが、もう一つの考え方の「Well to Wheel(ウェルトゥホイール)」だ。

どちらがより環境に配慮しているかといえば、当然Well to Wheelであり、自動車メーカー各社の指針もこちらが主流である。

さらに、もう一歩踏み込むならば、Life Cycle Assessment(LCA)も重要になってくる。これはある製品の製造から使用、廃棄まで全ての段階を通して環境に与えた影響を評価する手法のことで、自動車でいえば、燃料以外にもパーツ製造や組み立て、流通過程などさまざまなシチュエーションで評価が下されることになる。

例えば、一般的に自動車製造において最もエネルギーを使っているといわれるのがボディーの塗装工程だ。

従来のエアスプレー式塗装機は、主に空気の力で微粒化した塗料の粒子を噴き付けて車体に塗着させる。そのため、車体から跳ね返った空気が一緒に粒子の一部も噴き飛ばしてしまい、塗着効率は60~70%程度にとどまってしまう。従って、塗装の完成までには何工程か繰り返さなければならないなど塗装工程には何かとエネルギーロスが多かった。

ボディーの塗装工程イメージ

(C)olinchuk / PIXTA(ピクスタ)

エアで塗料の粒子を噴霧する従来のエアスプレー式塗装機では、跳ね返って飛散してしまう粒子が多い

LCAではこうした製造段階においても環境への影響が判断されるため、塗装工程の効率化が望まれていた。

そうした中でトヨタは3月12日、空気を使わないエアレス塗装機の開発を発表した。

この新型塗装機は、塗料を電気で微粒化する“静電微粒化”と、静電気によって塗着を行う“静電塗装”という世界初の新技術を採用。これにより、微粒化された粒子の飛散量の大幅減少に成功し、塗着効率は世界最高となる95%以上になるという。

静電気の力で塗着することで、エアスプレー式塗装機と比べてロスが少ないことが分かる

“静電微粒化”はごく少量の液体を噴き出す美容器具などで用いられている技術だが、今回はそれを車体塗装に応用した。

エアレス塗装機は、円筒の塗料噴き出し口の先端に約600本の特殊な溝を構築。円筒型ヘッドが回転して生じる遠心力によって塗料を溝に流し込むとともに、粒子を静電微粒化。帯電した粒子が静電気の力によってアース物(車体)に向かって飛散する性質を利用して、ボディーに塗着させるという仕組みだ。

エアレス塗装機が搭載する革新技術イメージ

また、車体の凹凸によって円筒型ヘッドと車体の距離が変動し、電流が不安定になることを防ぐため、エアレス塗装機は電流を監視して自動で電圧を制御する。この高精度な電流制御によって、円筒型ヘッドと車体の距離は常に約10cmに保たれ、一定電流による塗料粒子のばらつきのない高品質な塗装を実現しているという。

トヨタではエアレス塗装機をトヨタグループに導入した場合、グループ全体の塗装工程におけるCO2排出量の約7%削減を見込んでいる。加えて、塗装ブース下部にある未塗着塗料の回収装置を小型化できるため、塗装ラインのコンパクト化も進めていきたい考えだ。

新型コロナウイルスの感染拡大により国内の一部工場の操業停止を発表したトヨタだが、生産ラインが復旧し、新型塗装機が導入される日もそう遠くないのかもしれない。

新たなステージへと進んだ観のある自動車のエコ化。

今後、さらなる環境対策を施したエコカーの登場に期待したい。

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