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酷暑の夏に救世主登場? 太陽光×蓄電池エネルギーでエコなミストを創出

古くからある2つの技術でひんやりを演出! キーワードは「気化熱」と「ペルチェ効果」

気象庁の発表によると、全国的に平年より高い気温が続くとされる今年の夏。梅雨明けが待ち遠しい反面、酷暑を心配する声も多い。そうした中、東京・飯田橋に木材をふんだんに使った涼感スポットが誕生したという。太陽光エネルギーで、微細なミストや冷たく感じるベンチを稼働させる「COOL TREE LITE(クール ツリー ライト)」だ。ヒートアイランド現象に悩む都心に数多く設置してほしくなる、外出時の強い味方を紹介する。

微細ミストも太陽光で動く時代に

間もなく訪れる本格的な夏──。風鈴やすだれ、うちわなど、古くから涼をとる方法は数あれど、打ち水ほど再注目されているものも珍しい。

NPO法人などが中心となって行っている「打ち水大作戦」には、全国各地の自治体が賛同。特に都市部ではヒートアイランド対策に有効として、各家庭単位で広めていこうという機運が高まっている。

また、2020年の五輪・パラ五輪東京大会決定の際、マラソン競技開催時の高温対策が懸念されていたが、その解決策の一つとして打ち水が提案されていたことも記憶に新しい。

お風呂の残り湯や雨水を再利用することが推奨されている打ち水。道路が舗装される前は、土ぼこりを防ぐ役割も併せ持っていた

(C)Osaya / PIXTA(ピクスタ)

打ち水が涼をもたらすポイントは、気化熱にある。

気化熱とは、液体が気化(蒸発)するときに奪う熱(エネルギー)のことを指す。地面や空気中にたまった熱が水分の蒸発とともに奪われることで、地表面や周囲の温度を下げる働きを持つ。

この原理を応用し、街中や観光スポットで導入される機会が増えているのが微細ミストだ。服や肌に触れてもぬれないほどの細かい霧状の水を空気中に散布することで気化熱を発生させ、周辺の温度を低下させている。

特に多くの人が訪れる屋外施設では重宝されており、公園やテーマパークのほか、お城や神社仏閣などへの導入例も少なくない。

そうした中、一歩進んだゼロ・エネルギーの微細ミストが、東京・飯田橋の再開発地区「i-Garden Air(アイガーデンエア)」に設置され、街を歩く人たちに涼を与えているという。

6月から試験運転が始まったCOOL TREE LITE。9月まで設置予定で、ミストの噴出は10~16時が目安

手掛けたのは、飯田橋を拠点にする老舗設計企業の株式会社日建設計。

「COOL TREE LITE」と名付けられたシステムは、太陽光発電パネルから得たエネルギーのみで稼働する優れものだ。

オリジナル版からのいいとこどり

四角く組まれた木材が印象的なCOOL TREE LITEは、同様の機能を持ち2018年に発表されたCOOL TREEシリーズの第2弾。

直径7.7mから約4m四方のコンパクト版にし、都会の街並みに適合するサイズとして開発された。また、工程を見直すことで設置日数が4日から2.5日に短縮されたほか、オリジナル版と比べて約50%の低価格化にも成功している。

2018年に柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)に設置されたCOOL TREE(上)と、今回設置されたCOOL TREE LITE(下)。比べると大きさの違いが見て取れる

(C)小野強志(COOL TREE)

サイズは変われどもコンセプトは変わらない。

ヒノキ材を格子状に組み合わせた日よけの上に設置されたソーラーパネルは2枚。それぞれ最大325Wを出力し、村田製作所製の2.3kWの蓄電池へとエネルギーを供給する。

作られた電力は微細ミストの電源としてはもちろん、夜間のライトアップやスマートフォンの充電などに利用できるコンセント用にも供給。いずれも、蓄電池の残量がなくなると一時停止する仕組みだ。

COOL TREE LITEの概略図。木材をふんだんに使ったデザインは、都会に設置されると注目度が一段と増す

また、木材には間伐材を利用することで、建築材料の生産エネルギーを削減。各部材をボルトのみで接合していることから、組み立てや解体を繰り返すことも容易だ。

微細ミストのほか、ペルチェ効果を利用した「クールベンチ」で涼をとれる点もCOOL TREEから継承されている。

ペルチェ効果とは、異なる金属を接合したものに電圧をかけ、電流を流した際に、接合点で熱の吸収・放熱が起こる現象のこと。

熱の吸収が起こる金属面をベンチとして座れるように加工しているため、座るとひんやりする感覚が楽しめるという仕掛けだ。

この原理自体は1834年、フランス人科学者のペルチェ氏によって発表されたもので、決して新しいものではない。しかし、フロンなどの冷媒を使った冷却システムとは異なり、環境に優しいことから近年は注目度が上昇。パソコンのCPUや自動車の車載制御機器を冷やすために用いられる機会が増えているという。

このように古くからの技術を応用し、環境に負荷をかけることなく涼を提供するCOOL TREE LITE。

ヒートアイランド現象に悩む都市部に設置台数が増えていくことで、真夏の外出時の大きな癒やしとなることは間違いないだろう。

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