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人を自動追従するゴミ収集車を三菱ふそうが開発! ワンオペでも高効率な作業を実現

ダイムラー、そして三菱ふそうトラック・バスの高い技術力を証明したコンセプトカー

世界最大級の商用車グループであるドイツ・ダイムラー社傘下の三菱ふそうトラック・バス。2017年に世界初の量産小型EVトラック「eキャンター」を製造・販売するなどその技術力は高く、170カ国以上で同社のトラックやバスが活躍している。そうした中、7月末に行われた同社の製品開発プラットフォームを紹介するイベント「Fuso Future Solutions Lab」(神奈川県川崎市の本社製作所)で披露された1台のゴミ収集車が話題だ。収集方法を進化させる可能性を示した、新たな取り組みを紹介する。

毎日の生活に欠かせないゴミ収集車の存在

新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでの日常に対して改めて感謝する機会が増加した今。未知のウイルスとの戦いに追われる医療従事者や研究者が脚光を浴びる一方、にわかにゴミ清掃員にも称賛の声が集まっているという。

きっかけは、外出自粛中に起きた家庭ゴミの急増だ。

ステイホーム期間中に捨てられた家庭ゴミは通常時の倍量にも及んだとされ、集積所はゴミであふれかえる事態に。そうした中にあっても粛々とゴミを片付ける清掃員の姿に心を打たれる人が多く、ゴミ袋に感謝のメモが添えられるという現象が自然発生。新型コロナウイルス感染の危機にさらされながらも働く職業として、メディアで取り上げられる機会が急激に増加した。

ゴミ清掃員は暮らしに必要不可欠な存在。エッセンシャル・ワーカーとして見直されている

ところで、日本と欧米のゴミ収集には大きな違いがあることをご存じだろうか。

日本では、2~3人の清掃員がひと組となってゴミ収集を行うのが基本。収集所が数多く点在する街中では一人が低速運転をし、残りの清掃員がゴミを回収している。

一方、欧米の一部の国や地域では、収集車に取り付けたロボットアームでのゴミ回収を実施。運転席から降りる必要がなくなるため、一人での作業が可能となりエネルギーの効率化に成功している。

海外においてゴミ収集車がゴミを豪快に回収するようす

(C)JackF / PIXTA(ピクスタ)

しかしこれは、集積所に置くゴミ箱の規格を統一することで実現したもの。日本のように道端や敷地内の集積場にゴミ袋を無造作に積み重ねる方法では導入できない。

そうした中、ことし7月末に三菱ふそうトラック・バスが行ったコンセプトカーの発表会で、注目の一台がお披露目された。同社が2017年に発売した小型EVトラック「eキャンター」をベースとし、車体後部にゴミ収集機能を装備した「eキャンター・センサーコレクト」だ。

世界初の量産小型EVトラックをベースにしたゴミ収集車。ベースとしたeキャンターは、1度の充電で約100kmの走行が可能

コンセプトカーのため現状では市販される予定はないものの、日本で使用されているゴミ収集車に革命を起こすかもしれないさまざまな機能が搭載されているという。

常識を覆す新たなゴミ収集車

eキャンター・センサーコレクト最大の特徴は、車外のオペレーター(清掃員)を認識し安全に自動追従する点にある。

清掃員がゴミを回収しながら次の場所まで歩くという日本でよく見かける光景を頭に思い浮かべてほしい。その人の動きに合わせ、周囲の状況も判断しながら自動でゆっくりと付いてきてくれるというのが同車両の仕組み。

つまり、低速運転をするためのドライバーが不要となり、清掃員1人でも省エネかつ効率のよいゴミ収集が可能になるということだ。

この技術を実現するため、車体全体には各種センサーや制御モジュールがちりばめられている。

まず、車体四隅に取り付けられているのが光による検知と測距技術「LiDAR(ライダー/light detection and ranging)」だ。照射したレーザー光が物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定。追従対象の清掃員はもちろん、障害物や歩行者を検知する。

また、16個の超音波センサーを配し、車体前後左右の安全エリアを確保。車体が清掃員や障害物から一定の距離を保つように設定されており、もし安全エリア内に何かが入った場合には緊急停止する仕組みだ。

車体右端にLiDAR、その上や右前輪の近くに超音波センサーが見える。安全確保に欠かせない

次に車体上部に目を向けると、位置の測定や向かう方向を認識するための準天頂衛星対応GNSS(全世界測位システム)「みちびき」(QZSS)のアンテナが2本、清掃員と通信を行うための4G/Wi-Fi対応アンテナが2本取り付けられている。

車体上部のアンテナ。QZSSは愛称「みちびき」とも呼ばれ、GPSと互換性を持つ

車両を自動追従させる際にはスマートフォンでの設定が必要となり、停止や解除も清掃員の遠隔操作で行われる。また、清掃員はスマートフォン以外の緊急停止デバイスも携行する。

さらに、安全対策として電源を遮断してエンジンを停止するための「キルスイッチ」が車両自体にも2カ所搭載されているほか、追従モードでの走行速度は5km/hが上限。オペレーターを検知できなくなった場合には、自動で停止する。

車体前方の「キルスイッチ」。遠隔操作のほか、物理的に止めることも可能

電動トラックがベースのため静音やゼロ・エミッションを可能にし、清掃員一人の作業となりエネルギーも削減するeキャンター・センサーコレクト。「荒天時や夜間、駐車場での自動追従機能にはまだまだ改善点があるものの、この知見を先進機能搭載のトラックに活用したいですね」と三菱ふそうトラック・バスの担当者は語る。

応用範囲が広く、さまざまな車両への導入も期待されている自動追従機能。

今後、同車を参考にした新たなゴミ収集車や作業車が登場し、世界をあっと驚かせる日が訪れるのかもしれない。

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