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日本初の実用化! 撮影と解析で列車の安全を守るシステムがJR九州で活躍中

目視に頼らない巡視作業で効率アップ! これからの普及が期待される解析エンジンとは

100年に一度という大雨が全国各地で相次ぐ近年の異常気象。電気などのエネルギー関連施設はもちろんだが、鉄道やバスといった公共交通機関も安全確保に向けた対策を欠かすことはできない。そうした中、JR九州管内において、日々の点検・巡視業務を省力化するシステムがことし新たに導入されたという。列車に取り付けられたカメラで撮影した映像を解析し、障害物を自動で検知する列車巡視支援システムをご紹介する。

日本鉄道界においての革命

252億6900万人──。

これは、国土交通省が毎年発表している「鉄道輸送統計調査」において、JR・私鉄を問わず日本国内の鉄道を利用した延べ旅客数(2018年度)だ。

2008年の1億2808万人をピークに、緩やかな人口減少社会に突入したとされる日本。その中にあっても鉄道の利用者数は伸びており、2019年度以降は新型コロナウイルスの影響による利用者減が見込まれるものの、2008年度の229億7600万人から10年間で約23億人も利用者数が増加している。

鉄道を利用したレジャーの多様化、都市部への人口一極集中化による利用者増など考えられる理由はさまざまだが、鉄道事業者が長年にわたって築き上げてきた高い信頼度も一つの要因ではないだろうか?

諸外国と比べ、定時運行への意識が飛び抜けて高い日本。15分以内であれば定時運行とする国もある中、日本では1分以上で遅延とし、日々の業務改善を通して顧客の獲得につなげている。

それらを実現するために欠かせないのが、事故を未然に防ぐための保守・点検業務だ。中でも、線路周辺の巡視作業は保守係員が車両の運転室に添乗して行うものと徒歩によって行うものがあり、直接人の目によって確認することで安全を確保してきた。

線路上の保守作業を行う様子(イメージ)。列車の安全対策には膨大な時間と人手がかかる

(C)りんたろう / PIXTA(ピクスタ)

そうした中、ことし4月から国内初の事例となる映像を使った巡視支援業務がJR九州管内の一部で行われているという。

鹿児島本線を走る811系車両の2編成を対象に先行して始められたこの取り組みは、鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)が開発した線路周辺画像解析エンジンを活用したもの。

811系車両にシステムが搭載された様子。2台のカメラで撮影された映像を記録・転送する

その解析エンジンを採用し、列車巡視支援システムを実用化したのがNECだ。

同社では画像解析を含む先進のデジタル技術の活用を推進しており、今回のシステムについても今後広く普及させていきたいと考えているという。

アナログからの脱却へ

列車巡視支援システムを導入する背景には、巡視作業の省力化・効率化がある。

これまでは、保守係員の目視や手作業でのレポート作成というアナログ作業が必要で、係員への負担が大きかった。

しかし、システムを導入することで映像の蓄積とレポートの自動生成が可能に。人の手をかけずに巡視作業が行われるようになるため、効率化を見込んでいるという。

映像の解析結果(イメージ)。走行に関して支障の有無を確認する

また、過去にさかのぼって映像の確認ができるようになるため、何らかのトラブルが起こった際にもその原因究明に役立てることが可能だ。

NECが実用化したのは、車両先頭に設置したステレオカメラで撮影した映像を無線ルーターで各事務所やデータセンターなどに送信する部分。

また、導入に必要なシステム設計や構築までを一貫して行うことで、今後の普及に向けた筋道を立てた。

システム構成例。鉄道総研が開発した技術と組み合わせ実用化に成功した

映像の解析には3次元計測技術を使用し、設定した空間内に存在する物体の有無を判別。線路近くの支障物はもちろんだが、近い将来、列車の運行に支障をきたす可能性がある草木なども検出することが可能だという。

なお、このシステムは他の車両にも拡張を予定しており、実現すれば巡視作業の効率化は確実視されている。

労働人口の減少が深刻化する中、限られた人員によって高い精度の安全運転が求められる鉄道業界。

国内初の列車巡視支援システムが実用化されたことで、新たなフェーズに突入したのかもしれない。

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