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空調の未来が変わる! 省エネ&高効率なダクトレス型コアンダ空調システムとは

特許取得済み! ITを使わないアナログな方法でブレイクスルーした期待の新技術

“省エネと創エネを組み合わせ、トータル(ネット)でのエネルギー消費量をゼロにする”というZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現に向け、新しい技術が実用化され始めた昨今。オフィスビルや商業施設には欠かせない空調システムにおいても、飛躍的に消費エネルギーを削減できる技術が今夏初めて導入されたという。新型コロナウイルスの影響により、これまで以上に注目を集める空調システムの最前線を紹介する。

改めて気付く換気の大切さ

「ニューノーマル」「ウィズコロナ」など、新型コロナウイルスの感染拡大によって求められるようになった新しい生活様式──。

施設入場時のアルコール消毒やマスクの着用、人との間隔を空けるソーシャルディスタンスなど、感染予防対策例を挙げれば枚挙にいとまがない。

そんな数ある感染予防対策の中で、改めて有用性に気付かされたものの一つに「換気」があるのではないだろうか。

東京や大阪などで緊急事態宣言が発令される少し前、厚生労働省は「換気の悪い密閉空間を改善するための換気の方法」というリーフレットを公開。クラスターが発生しやすい商業施設などの管理権原者に向けて、換気の重要性を説いている。

その内容は、空調設備の適切な運転・点検を実施し、外気を取り入れる換気を定期的に実施するように求めるもの。具体的には、機械設備や窓の開放による正しい換気に努め、ビル管理法に基づく必要換気量(一人あたり毎時30m3)を確保するように指導している。

身の回りのオフィスや商業施設など、われわれの目に見えないところで快適性や安全性を確保している空調システム。これまで以上に注目を集める中、省エネかつ快適に過ごせる新しいシステムが東京都内で導入されたという。

ZEBを目指してことし7月に竣工した東京・神田の新菱神城ビルに導入されたのは「変風量コアンダ空調システム」。株式会社三菱地所設計や新菱冷熱工業株式会社、芝浦工業大学、協立エアテック株式会社の産学連携によって共同開発された、特許取得済みの新技術だ。

変風量コアンダ空調システムが導入された新菱神城ビルの内部。地上9階建てのうち、3フロアで採用されている

変風量とは、その名の通り風量の増減が行われること。

一方、コアンダとは、気体や液体の噴流の軌道が近くの壁面に吸い寄せられるコアンダ効果という現象に由来するもの。

空調システムでの活用方法としては、部屋の高い位置から水平方向に吹き出された空気を天井面にはわせることで気流の落下を抑制し、部屋の奥まで空気を到達させる際に用いられてきた。

コアンダ効果の概略図。空気が天井面をはうことで遠くまで到達する

しかし、この「変風量」と「コアンダ効果」はこれまで相いれないものだったという。

変風量を可能にした意外な方法

コアンダ効果を採用した空調システムを導入する場合、天井をはうように新しい空気を広範囲に伝えられるため、従来の空調に用いられるような天井裏のダクトを必要としない。

そのため、部屋の天井を高くできるといったメリットのほか、各階の高さを抑える階高縮小や資材削減による低コスト化が見込める施工方法の一つとして注目されていた。

従来のダクトを用いた空調システム(上)とダクトレスのコアンダ空調システム(下)。天井裏が不要になるためメリットが大きい

しかし、空気を水平方向に遠くまで届けるためには一定以上の風量が必要。従来のコアンダ空調システムでは、部屋の大きさや環境に即して決められた一定の風量(定風量)で運用されてきた。

つまり、変風量とコアンダ空調システムは水と油の関係だったのだ。

コアンダ空調システムで風の量を変えた場合のイメージ図。風量が少ないと、部屋の奥まで到達しない

その課題を解消すべく開発されたのが、変風量でのコアンダ空調システムを可能とするAir-Soarer(エア・ソアラー)だ。

Air-Soarerは、風量を減らしても吹き出し時の風速を一定に維持する装置を用いることで、少ない空気の量でも天井面に沿って広範囲へ届けることに成功。そのカギは、自律式の可動羽根にある。

空気の吹き出し口近くに設置された可動羽根は、受ける風圧によって開閉する角度が変化する仕組み。風量が少ない場合は羽根があまり開かず、吹き出し口に送る風を集約することでコアンダ効果に必要な一定の風速を維持している。

Air-Soarerの概略図。可動式の羽根を用い、風速を維持することで変風量を可能にした

なお、この可動羽根は回転軸を対として風圧と重りの関係から成り立っており、電力の供給は不要。制御装置もない非常にシンプルな仕組みのため、故障リスクの軽減とメンテナンスの容易さを実現した。

また、実証実験の結果、周辺の空気を巻き込まずに風速を維持するためには、吹き出し口の形状は正方形に近い方が高い効果を発揮することが判明。そのため、吹き出し口の幅は500mmに抑え、横並びに数を増やすように設置しているという。

こうして実現した変風量コアンダ空調システム。その省エネ効果は非常に高い。

風量を1/2にすると消費電力は1/8になるとされ、とあるオフィスの空調運用データから推定された年間の搬送動力は、通常のダクトを用いたものと比べ65%も軽減できるとされている。

空調システムの搬送動力を示したグラフ。定風量のコアンダ空調システムでも低減されるが、変風量の比ではない

従来に比べて省エネで、少ない風量での高効率な換気を可能とする変風量コアンダ空調システム。

これから設計されるオフィスビルや商業施設において、ニューノーマルな選択肢になっていく日も近いのかもしれない。

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