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タイヤの回転で発電してセンサーを駆動! バッテリーレス化で見据える自動運転技術への貢献

タイヤ情報の取得でネックとなるエネルギー問題を解決!

ことし3月、自動運転技術レベル3を搭載した世界初の車・Honda「レジェンド」がついに販売を開始した。渋滞中の高速道路上のみという制限はあるが、運転を完全にシステム任せにできる点は革命的といえる。完全自動運転化の実現に向けて新たな技術が次々に誕生する中、タイヤのセンシング機能をサポートする発電技術が開発されたという。日本で普及しつつあるタイヤの空気圧測定システムへの搭載も期待される、タイヤ内発電技術を紹介する。

ガソリンスタンドでの空気圧測定は不要になる?

世界各国で人気を誇る日本製の車──。

2020年の世界新車販売台数では、トヨタ自動車グループ(ダイハツ工業、日野自動車を含む)が952万8438台を記録して業界首位に立っている。

一方、同じ日本車でも米国や欧州各国、韓国などで販売する場合と、国内で販売する場合で大きく異なるものがある。

TPMSを装着しているか否かだ。

TPMSとはTire Pressure Monitoring Systemの略で、日本語に直すと「タイヤ空気圧監視システム」のこと。その名の通り、タイヤに取り付けられたセンサーが空気圧を測定し、ドライバーに異常の有無を教えてくれるシステムだ。

TPMSの使用例。タイヤの情報がダッシュボードパネルの左側に表示されている

米国では2007年、欧州各国では2012年、韓国では2013年から新車販売の際に装着が義務化されており、タイヤトラブルを起因とする事故防止につなげている。

日本では義務化されていないものの、輸入車やレクサスなどの高級車に搭載されている他、後付けのTPMSを購入して装着する人も増加傾向にあるという。

このTPMSは、それぞれのタイヤの空気注入口に取り付けることで空気圧を測定しデータの送信を行っている。しかし、多くのモデルで電源として採用されるボタン電池は、標準装備で5年程度、後付けでは数年ごとに交換が必要となり、一部ユーザーから煩わしさを指摘する声が上がっていた。

また、将来的に自動運転技術が広く普及することが予測される中、安全のためにタイヤから得る情報はもっと多岐にわた(亘)ると考えられている。

たとえば、タイヤのグリップ力や摩耗度合い、路面温度や路面状況など。当然、測定項目が増えれば、電池の負担が増えるのは間違いない。仮に現状のシステムで賄おうとした場合、3日ほどしか持たないのではないかという専門家の声もある。

つまり、自動運転技術が当たり前になる未来の世界では、現在のようなボタン電池からの脱却が求められることになるのだ。

そうした中、関西大学の谷弘詞教授とDUNLOPやFALKENなどのタイヤ製造を手掛ける住友ゴム工業株式会社との共同研究で、半永久的に自動車タイヤのセンシングに生かせる発電技術が開発されたという。

そのエネルギー源とは、われわれの生活にもなじみ深い静電気だ。

タイヤ内部での発電・通信に成功

関西大学の谷教授が注目したのは、摩擦帯電と呼ばれるもの。服を脱ぐ際やドアノブに触れる際など、2つの物質が擦れ合うときに電荷が移動することで静電気が発生する現象のことだ。

この摩擦帯電は多くの帯電量が存在することで知られていたが、製造業の現場では作業を阻害する厄介者というのが通例だった。

しかし、谷教授はその豊富な帯電量を生かして、センサーへの給電デバイスとして活用できないかと考えた。

そして完成したのが、今回発表されたゴムと帯電フィルム、電極からなる接触型摩擦発電機だ。

タイヤに起こる変形で、正帯電フィルムと負帯電フィルムに摩擦が発生し静電気が生まれる

これをタイヤの内側に取り付けると、タイヤが地面に接地した際に起こる変形や衝撃で電力を発生させることができるという。

また、発生した電力を電源制御回路で充電できるようにし、信号待ちなどの一時停止時でもセンサーへの給電を可能としたのも大きなポイントだ。

摩擦発電機からセンサーへ給電する仕組みのイメージ図

住友ゴム工業では、開発した摩擦発電デバイスを市販するタイヤに埋め込み、タイヤ速度50km/hにおいて検証テストを実施。

その結果、発電量800μW以上が確認され、さらに極低電力で通信が可能となるBLE(Bluetooth Low Energy)の連続通信にも成功した。

これにより、将来的にTPMSなどのセンサーに応用できる可能性が証明されたことになる。

摩擦発電機を含む発電デバイスをタイヤ内に埋め込んだ様子

車が走る限り、タイヤ内で半永久的に電気が作られるこの注目の技術。

いずれ到来する完全自動運転時代において、欠かすことのできない存在になるのかもしれない。

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