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福祉用具が進化! 歩行アシスト機器「seeker」が転落事故を防ぐ

九州の駅ホームで行われた視覚障がい者用歩行補助機器の実証実験

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)をはじめとしたさまざまなテクノロジーが発展する中、障がい者のための福祉用具にも進化が見られる。このほど、福祉機器を開発する株式会社マリス creative designは、視覚障がい者のための歩行アシスト機器「seeker(シーカー)」の試作機を開発し、実証実験を実施した。眼鏡型センサーと振動装置付きの白杖(はくじょう)で危険を知らせるという一見シンプルなものだが、その技術と機能の先にある可能性とは?

眼鏡型センサーで危険を察知する「seeker」

福祉用具業界にもICT(情報通信技術)の波がやってきている。株式会社マリス creative design(以下、マリスクリエイティブデザイン)は、カメラセンサーによる画像処理技術によって危険を認識し、視覚障がい者の歩行をアシストする機器「seeker」の試作機を開発。その実証実験を2021年3月に福岡県北九州市内の駅ホームで行った。

「seeker」は、カメラセンサーを搭載した眼鏡型ウエアラブルデバイスと白杖に取り付けた振動装置からなり、カメラセンサーが映している画像から危険を認識すると、その情報がBluetoothで白杖の装置へ伝達され、振動して装着者に知らせるというもの。

今回の実験に用いた試作機では、駅ホームからの転落事故防止を想定して、点字ブロックの位置などを基にホームの端を危険と認識するように設定。装着者がホームの端に対し1.5m以内に近づくと作動する。

たとえ装着者がホームの端から1.5m以内に入ったとしても、並行移動もしくは端から遠ざかる動きをした場合は振動しないよう精密に設定された。これらの認識技術は九州工業大学と共同で開発されたものだ。

今回の実験で使用した試作機。眼鏡型のウエアラブルデバイスから振動装置への伝達速度は約0.5秒という速さ

白杖のグリップ付近に取り付けられた振動装置の大きさは約85mm×30mm×15mm。重さは30gで、装着しても歩行を阻害しない軽さに設計されている

実施場所は、筑豊電気鉄道と北九州高速鉄道の協力を得て、穴生(あのお)駅や小倉駅など5つの駅のホームが選ばれた。実際に列車がホームへ入ってくる状況で一般の乗降客と干渉しない場を設け、歩行支援者を伴った被検者18人に対し検証が行われた。

被験者が歩行し実際にホームの端に差し掛かると、カメラセンサーによって映されている動画がリアルタイムで解析され、危険な位置と認識して白杖が振動。被験者はそれに気づいてその場で停止し、立ち入ることはなかった。駅によってホームの構造、床の色や形状、点字ブロックの配置などが異なっていたが、いずれも問題なく作動し、実証実験を無事に終えている。

2022年に商品化! 高齢者の歩行補助も視野に

カメラセンサーによって画像をリアルタイムで解析し、「どこにいるのか?」「安全な場所なのか?」を検知できた今回の実証実験。被験者からのフィードバックでも、「貨物列車の大きな振動と危険を知らせる振動を区別できる」など、装置の伝達方法にも高評価を受けている。

また、被験者の感覚には、もう一つ大きな変化があった。白杖が届く範囲は半径1m程度だが、今回のカメラセンサーはその約4倍となる半径4m程度までが認識範囲となっている。これにより危険認知のスピードが高まるため、これまでにないメリットとなることが期待できる。

ただ、機器の動作に関する問題は見られなかったものの、実験後の解析で、駅によって点字ブロックの摩耗に大きな差があり、カメラセンサーの認識率に影響を及ぼすことが判明した。

この結果を踏まえて、マリスクリエイティブデザインは安全に万全を期すため、あらゆる状況にも対応できるカメラセンサー技術の開発を目指す構えだ。

2020年12月に実施された、現在使われていないホームでの実証実験の様子。ここでの課題をクリアして今回の実証実験に臨んだ

視覚障がい者の日常生活における歩行を広く補助するため、今後は駅だけでなく、信号や障害物の検知技術の開発にも取り組んでいく。2021年8月ごろには街頭での実証実験を実施し、同月末から開催予定の東京2020パラリンピック競技大会のボランティアへの貸し出しも検討している。

なお、2022年までには商品化を進め、将来的にはカメラセンサーによる行動記録や行動分析、行動予測などの機能を追加することで、視覚障がい者だけでなく高齢者の利用も見据えているという。

危険を察知し、対応するのは、誰にとってもストレスになる。視覚をカメラセンサーがアシストしてくれる時代が来るなら、外の世界は今よりも心安らぐ空間になるかもしれない。

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