2017.7.6
ゴミ箱や照明がスマート化!街中に画期的なIoT機器が続々登場
東京・表参道のケヤキ並木や岡山の商店街で実証実験が開始
テレビやゲーム機はもちろん、洗濯機やトイレに至るまで…もはや家庭内の製品はネットに接続して制御できることが当たり前になりつつある。最近は、街中にも遠隔操作で管理できるスマート化したゴミ箱や照明が登場。そこで今回は、ますます身近な存在になりつつあるIoT(Internet of Things=モノのインターネット化)のシーンを紹介する。
太陽光パワーでゴミを自動圧縮!
捨てられたゴミを自動的に圧縮して、管理者に蓄積状況を通知する──。
そんな画期的なゴミ箱が5月18日、表参道のケヤキ並木に設置された。仕掛け人は、ITソリューションプロバイダのNSW(日本システムウエア)と、分別回収コンサルタントのアートファクトリー玄だ。
アメリカ発のスマートゴミ箱「BigBelly Solar」は、ゴミを自動的に圧縮する機能を持っているだけでなく、通信機能の作動に太陽光発電を利用するためCO2を排出しない。さらにIoT技術によって、携帯電話網を通じてゴミの蓄積状況をリアルタイムで発信。収集頻度や人員配置、ゴミ箱配置の最適化など、収集作業を効率化しコスト削減の実現を目指しているという。
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表参道のケヤキ並木に設置された「BigBelly Solar」。サイズは高さ1264mm、幅635mm、奥行き773mm
近年、ITやネットワークを都市機能に適用することで、都市の運用効率を高めるスマートシティへの注目度が上昇している。最先端のゴミ箱を設置すれば、2020年に東京開催が決まった夏季五輪に向けて“洗練された街”をアピールできるが、そんな表面的なメリット以外にも「BigBelly Solar」は大きな可能性を秘めている。
というのも、環境省の一般廃棄物実態調査によると、2015年度の廃棄物処理事業にかかる歳出は1.9兆円程度。国民一人当たり年間で約1万5000円を負担していることになるという。NSWとアートファクトリー玄の両社が「BigBelly Solar」の実証実験を行うことで、約6000億円もの収集運搬費を効率化する道筋が見えるかもしれないのだから、今回の取り組みは他人事ではないのだ。
表参道のケヤキ並木には、2基の「BigBelly Solar」が設置・実施された。 半年間の実証実験を行った上で、実導入の検討に入る予定。今のところ、木陰が多い並木道や梅雨の時季でも大きな問題が起こることなく動作しているという。
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管理者はPC画面上でゴミの蓄積状況や太陽光発電の状況を確認できる
ちなみに、国内ではこれまでに東海大学の高輪キャンパスと長崎・ハウステンボスに設置しており、今回が国内で3つ目の事例。米国ではニューヨーク市のタイムズスクエアやボストン市などの自治体をはじめ、各大学などに設置した実績があるほか、英国やアイルランドなどの大学にも導入されているという。
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「BigBelly Solar」は、アメリカやイギリスを中心に欧米諸国の大学や自治体で導入している
世界の事例では、米国フィラデルフィア市が街中の700個のゴミ箱を、既に500個の「BigBelly Solar」に切り替えたという実績がある。その結果、ゴミ回収頻度を週17回から週3回に削減。結果、年間コストが230万ドル(約2億5800万円)から72万ドル(約8100万円)に…実に約7割ほどの削減が実現しているという。
日本でもスマートゴミ箱が普及していくことを、期待せずにはいられない。
季節や天候に合わせて光量を自動調整!
街中にIoT機器が導入されているのは、何もゴミ箱だけに限った話ではない。先日、岡山県の商店街にも“遠隔操作できる照明”が登場したばかり。
設置された場所は、岡山県津山市の商店街。IoTデバイス制御システムを開発するNetLEDが「フルカラーIoTスマート照明」の実証実験を開始した。6月25日から1年間の実施予定。
商店街の既設街灯20カ所をIoTスマート照明に置き換えて、主に商店街の利用状況の可視化を検証。最終的には住宅街や将来のスマートシティを実現する方法を検証していくという。
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人の通行に合わせて、白色の光が周りを取り囲むように点灯する
IoTスマート照明は、季節や天気情報を基に、自動的に商店街内の雰囲気や光量をコントロールできる優れもの。商店街利用者に居心地の良い空間を提供するほか、緊急時には色を制御することで、照明による分かりやすい誘導機能や、インフォメーション機能としても使用することができる。
また、人がいない状態では照度(電力)を落として待機状態になり、人が通行するとその前後の照度が高くなり、白い光が人を追従する。これによって待機時の電力削減と、人が暗がりに潜んでいても遠目で分かるため、防犯効果が期待できるという。
さらに、音声やLEDパネルの連動など、サイネージ機能を取り込むことによって、商店街でのセール情報やイベント情報などにも活用し、商店街の活性化につなげることも目指している。
今後はさまざまなセンサーを連携することで、車や二輪車の通行情報などを事前に察知し、通行する人々に色や音声を使った注意喚起にも利用することを想定。また、故障時を含む照明の遠隔監視はもちろん、センサー稼働情報や、照明稼働情報はビッグデータ化して、天候や時間帯による人の流れの解析や車両通行解析に利用していくという。
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プラットホーム上で収集されたビッグデータは、さまざまな可視化が可能
このように街中にIoT機器が増えることで、あらゆる分野でコストを削減できるのは間違いない。それ以上に、スマートに進化したゴミ箱や照明を目の当たりにすれば、誰もがポイ捨てや電気の無駄遣いといった行為を控える意識が芽生えるのではないだろうか。
環境やエネルギーに関する市民の意識が高まることが、最も大きな恩恵なのかもしれない。
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text:浅原 聡
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