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東芝が低コスト高効率タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高発電効率8.4%を達成!

無充電EVの誕生が現実味を帯びてきた

経済産業省は2020年12月発表の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、2050年の国内発電量に占める再生可能エネルギーの比率を50~60%に増やす方針策定した。達成に向けて今後、太陽電池のさらなる需要増加が見込まれるが、そのためには高発電効率と製造コストの大幅削減が鍵になる。今回は課題解決に向けて東芝が2019年に開発に成功した透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池の続報をお届けする。

低コストで量産可能な次世代太陽電池

再生可能エネルギーの導入拡大が望まれる中で、大きな期待が寄せられている太陽電池──。

現在、高効率な太陽電池としてタンデム型太陽電池が挙げられる。これは、2つの太陽電池(セル)をボトムセルとトップセルとして重ね合わせて両方のセルで発電することで全体の発電効率を向上させる仕組みだ。

その代表的なガリウムヒ素半導体を用いたタンデム型太陽電池は30%台の発電効率が報告される一方、シリコン(Si)太陽電池単体と比べて数百倍から数千倍に上る製造コストの課題が残る。今後、幅広いジャンルに太陽電池を導入していくためには、低コスト化を実現する新たなロジックが不可欠といえる。

そこで注目されているのが、透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池だ。

この太陽電池は地球上に豊富に存在する銅と酸素の化合物であるCu2Oが主な材料。さらに基板(ガラス)と製造装置(半導体や液晶で用いられるスパッタ装置)ともに安価なため、大幅な低コスト化が期待できる。

透過型Cu2O太陽電池は、トップセルに短波長光のみを吸収・発電するCu2Oセル、ボトムセルに透過した長波長光で発電するシリコンセルを用いることで、幅広い波長の光を高効率にエネルギーへと変換

そうした中、2019年に世界で初めて透過型Cu2O太陽電池開発に成功していた株式会社東芝が、2021年12月に発電層の不純物を抑制することで世界最高発電効率8.4%を達成したと発表した。
過去の記事:人工衛星の高性能ソーラーパネルを家庭用に!東芝が世界初の新型太陽電池開発に成功

不純物の生成を高確度で数値化し、最小化条件を導き出す

2019年の発表以降も東芝は透過型Cu2Oトップセルの発電効率10%以上、Cu2O/Siタンデム型太陽電池の発電効率30%以上を目標に開発を進めてきた。

しかし、従来の透過型Cu2O太陽電池開発ではCu2Oの半導体結晶としての性質により結晶中に酸化銅(CuO)や銅(Cu)などの不純物が生成されやすく、それらはごく微量だが、発電効率と光透過性の低下を引き起こしていた。

その解決策として、今回用いられたのがX線回折法。

これはX線が結晶格子で回折する現象を利用した分析法で、物質の特定や結晶構造などを調べることができる。

具体的には、X線回折法によりCu2O発電層に含まれるごく微量のCuOやCuを検出し、不純物の量を精密に数値化。これにより不純物が最小化する成膜プロセス条件を特定し、優れた光透過性と高い発電特性(発電効率8.4%)を両立する透過型Cu2O太陽電池の開発に至ったという。

開発された透過型Cu2O太陽電池の発電効率と透過率

今回開発された透過型Cu2O太陽電池を発電効率25%の高効率Si太陽電池と組み合わせた場合、試算される発電効率は27.4%。これはSi太陽電池の世界最高効率26.7%を上回る発電効率だ。

さらに、東芝は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開している試算方法を参考に、このCu2O/Siタンデム型太陽電池が電気自動車(EV)に搭載された場合の無充電航続距離を簡易的に試算した。

EVへのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

Cu2O/Siタンデム型太陽電池の車載設置面積を3.33m2、EV電費を12.5km/kWh(NEDO試算の2030年想定値)と仮定した場合、今回の試算効率27.4%では1回の航続距離は約35km。仮に、東芝が目標とする発電効率30%が達成された場合の航続距離は約40kmとなった。

さらにEVは走行で消費した電力を太陽光発電で搭載蓄電池に補充し続けられるため、実際の無充電航続距離はさらに伸びるだろう。

この結果は、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた課題の一つである「運輸の電動化」において大きな貢献が期待できる。

東芝は引き続きNEDOの委託事業として透過型Cu2O太陽電池の更なる高効率化に取り組み、Cu2O/Siタンデム型太陽電池の発電効率30%を目指して開発を進める方針。

また、東芝エネルギーシステムズ株式会社と共同で量産タイプの大型Cu2O太陽電池(Si太陽電池と同サイズ)の開発をスタート。2023年度に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度に実用サイズのCu2O/Siタンデム型太陽電池の製造技術の完成を目標に開発を進めている。

太陽電池のさらなる導入拡大に向けて、今後の研究開発の加速に注目したい。

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