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人工衛星の高性能ソーラーパネルを家庭用に!東芝が世界初の新型太陽電池開発に成功

高効率・低コストなタンデム型太陽電池技術で発電効率増

近年、着実に普及が進む太陽光発電。国土の狭い日本において、今後は限られた設置面積の中でいかに効率よく発電するかが重要になってくる。その鍵を握ると考えられているのが、高い発電効率を誇るタンデム型太陽電池の存在だ。現状では宇宙衛星など用途が限られる技術だが、近い将来、家庭用の太陽光発電にも導入されるかもしれない。そもそもタンデム型太陽電池とは?そして、実現に向けたキーワード“透明化”のメカニズムに迫る。

低コスト&高効率な太陽電池誕生のポイントは“透明化”

クリーンエネルギーの旗手として、再生可能エネルギーの広がりに貢献してきた太陽光発電。

これは太陽の光エネルギーを直接電力に変換する発電システムだが、そのシステムで中心的な役割を果たすのが、太陽電池と呼ばれる部品だ。シリコンなどの半導体を素材に用いた太陽電池に光が当たると、日射強度に比例して発電する仕組みとなっている。

2018年7月に政府が閣議決定した第5次エネルギー基本計画においても、太陽光発電が2030年の主力電源の一つに定められるなど、太陽光にかかる期待は大きい。

太陽電池は、最小単位であり太陽電池素子とも呼ばれるセル、セルを必要枚数配列し樹脂や強化ガラスなどで保護したモジュール(太陽電池パネル)、モジュールを複数並べて接続したアレイによって構成される

一方で、日差しを遮るものがなく高効率な発電が期待される土地の多くはすでに太陽光発電に利用されており、これから新たに太陽光パネルが設置でき、かつ大量の発電が期待できる場所は少ないという現実がある。

今後、太陽光発電を社会全体に広く普及させるためには、限られた設置面積でより高効率な発電を行う技術が求められることになる。

そうしたニーズの高まりに対して注目を集めているのが、異なる性質を持ったセルを重ね合わせるタンデム型と呼ばれる太陽電池。これは、太陽光のうち目に見える短波長光と目に見えない長波長光を吸収するそれぞれのセルの働きによって、より多くの太陽光を電気エネルギーに変換できるのがメリット。

つまりは、太陽光の吸収波長域を拡大することで、高いエネルギー変換効率の実現に期待できるのだ。

現在、タンデム型としてガリウムヒ素半導体などを素材に用いた太陽電池が既に存在している。これは、シリコン単体の太陽電池と比べて1.5~2倍高い30%台の発電効率を発生する半面、製造コストが数百~数千倍と跳ね上がり、現実的に考えて普及への道のりは遠い。そのため、用途は宇宙衛星などの太陽光発電システムに限定されており、一般利用への展開に向けては低コスト実現がマストの課題になっている。

開発された透過型Cu2O太陽電池。透明なオレンジ色部分が太陽光を吸収するCu2O薄膜となる

そうした背景の中、大手電機メーカーである東芝は1月21日、世界で初めて亜酸化銅(Cu2O)を用いたセルの透明化に成功したと発表した。また、積層するセルの上部(トップセル)に透過型Cu2O太陽電池、下部にシリコン系の太陽電池を配したタンデム型太陽電池のプロトタイプで発電効率を実験。その結果、シリコン太陽電池単体で発電させた場合と比べて、8割以上となる高効率な発電を確認したという。

Cu2O太陽電池をトップセルに採用するためには、光を透過するために両面とも透明電極化することが必須条件になるという。しかし、これまでのCu2O太陽電池は、裏面電極に金電極が用いられていたため、光透過性がなかった。

そこで東芝は、Cu2Oの薄膜を形成するプロセスにおいて、酸素の量を精密制御する独自の成膜法を開発。薄膜内部で透明化を阻害するCuO(酸化銅<II>)やCu(銅)の生成を抑制し、加えて金属集電極以外はすべて酸化物層構造としたことで、Cu2Oの透明化を実現した。

タンデム型太陽電池の概略図。紫外から黄色までの短い波長の太陽光をCu2O太陽電池が吸収し、透過した赤から赤外光はシリコン系太陽電池が吸収(上図)。Cu2O太陽電池とシリコン系太陽電池の組み合わせは吸収する波長の重なりが少ない(下図)ため、高効率な発電が可能となる

今回、Cu2Oが素材に選ばれた理由は、地球上に豊富に存在していることと、太陽光電池としての層構成を単純にできる材質の特徴にある。さらにCu2Oを薄膜する際の装置は、大型液晶などの生産に使用されている既存装置の転用が可能で、新規開発する必要がない。

これらのことから、製造コストの指標である太陽電池の製造コストを発電量で割ったワット単価では、シリコン系太陽電池よりも低い数値を示すポテンシャルを秘めているという。

太陽光は目に見える可視光線と目に見えない紫外線・赤外線で構成。反応する光域が異なる材料を用いるタンデム型太陽電池は、いわば自動車のHV(ハイブリッド)のようなもの

また、結晶シリコンセル太陽電池とは吸収する波長域の光の重なりが少なく、互いの発電を阻害することがない相性のいい組み合わせであることも大きい。
※京都大学らの研究グループが開発し、未利用だった赤外域の太陽光 から世界最高率で水素製造に成功した、新たな光触媒に関する記事はこちら

今回でいえば、600nm(ナノメートル/1mの10億分の1)付近を境に、トップセルはそれよりも短い波長である紫外から黄色までの光を吸収。それより長い波長側の橙〜赤外光については約80%が透過し、ボトムセルで吸収するという仕組み。透過光強度の高さこそ、高効率な発電を可能にするポイントとなる。

東芝では、透過型Cu2O太陽電池をトップセルに用いるタンデム型太陽電池の3年後の完成を目指して研究開発を進めていく方針。発電効率も30%台へと向上する予定で、完成すれば太陽光発電のさらなる普及に貢献することになりそうだ。

現状、普及率や収益の面では、主役になるのは見込み薄ともいわれている太陽光発電だが、新たな太陽電池の誕生により未来のエネルギー事情も大きく変貌を遂げるかもしれない。

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