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国産コバルトの安定供給源として期待大! 南鳥島周辺マンガンノジュールの形成原因を特定

南極からの海洋深層水が国産コバルト資源を生み出したことを千葉工業大学などの研究グループが発見

深海底に分布する海底鉱物資源の一つであり、銅やニッケル、コバルトなどを豊富に含むため、ハイテクノロジーやグリーンテクノロジーに欠かすことのできない金属資源である「マンガンノジュール」。コバルトを高品位で含み、新たな供給源となる可能性があることから、国産レアメタル資源として大きな注目を集めている。小笠原諸島の島で、日本最東端として知られる南鳥島周辺に広がる広大な密集域が形成された要因は、海洋深層水と海底地形が関係しているという。その詳細をひもとく。

南鳥島周辺に広大なマンガンノジュール密集域が形成された要因とは

マンガンノジュールは、鉄やマンガンの酸化物または水酸化物が沈殿してできた球状の岩石で、全世界の深海平原に分布している。

とりわけ高い密集度で分布する海域は、ハワイ南東方沖および赤道太平洋・南大洋・南西インド洋などだ。

研究の調査海域とマンガンノジュール密集域の様子。直径数~十数cmの球状の団塊がマンガンノジュール

千葉工業大学 次世代海洋資源研究センターでは、東京大学大学院 工学系研究科および京都大学と共同で、海底鉱物資源の成り立ちに関する研究を進めている。

その研究の中で、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)内の広範囲に分布するマンガンノジュールが海洋深層の海流の流入をきっかけに断続的に形成を開始し、広大な密集域へと成長していったことを明らかにした。

X線CT装置を用いたマンガンノジュールの解析試験

研究グループは、X線CT装置(CT)と微小領域蛍光X線分析装置(μXRF)を用いた分析により、ノジュール内部の微細な三次元層構造を詳細に解析。

その成長履歴を解読した結果、南極の周囲を流れる下部周極深層水(以下、LCDW: Lower Circumpolar Deep Water)から発生し、北上した海洋深層の海流が、南鳥島周辺海域に南部から長期間にわたって何度も流入。その度に新しいノジュールの形成開始と既存のノジュールのさらなる成長を促したことを突き止めた。

さらに、深層水の流路を強くかつ長期間支配しているのは、EEZ内に分布する大きな海山やプチスポット火山(太平洋プレート北西部で発見された新種の火山)などの小さな海丘の集まり(クラスター)という地形的な枠組みであることも明らかにした。

次世代の蓄電池にも必須の資源!新たな安定供給源として期待

南鳥島EEZのマンガンノジュールは、エコカーやスマートフォンに使われるリチウムイオン電池や、次世代蓄電池として開発が進むフルオライドイオン電池(電荷移動体としてフルオライド<フッ化物>イオンを使った電池)に必須の資源エネルギーであるコバルトを多く含んでいる。

しかしコバルトは、価格変動が激しく供給リスクを常に抱えているのが実情だ。

南鳥島EEZの広大なノジュール密集域が注目されるわけは、新たな安定供給源であること、そして国産コバルト資源という安心感からきている。密集域として注目を集めながらも、どのようにして形成されたのかは不明だったため、安定供給源として期待を寄せるには安心材料が足りなかった。

マンガンノジュール密集域の分布から示唆される南鳥島EEZ内に流れ込む海洋深層水

しかし、マンガンノジュール密集域の形成と深層海流および海底地形との関連が明らかになったことにより、LCDWの流路に沿った深海底に、いまだ発見されていない有望なノジュール密集域、すなわち新たなコバルト資源が眠っている可能性が高いことが示唆されたのだ。

特に、今回新たに明らかになった、プチスポット火山のような小さな山も複数集まってクラスターになると、深層水の流路を制約し、ノジュール密集域を形成させる原因となり得るという事実は、資源探査の指針を構築する上で非常に重要な知見と言える。

今後、この成果をもとに未調査海域での調査を進め、新たな有望海域の発見につなげていくとしている。

リチウムイオン電池や次世代の蓄電池に必須の国産コバルトという資源エネルギー。新たな密集域の発見に期待したい。

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