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主要部材全てに結晶化ガラス。日本電気硝子がナトリウムイオン二次電池を開発

資源枯渇の解消、汎用性の拡大へ希望の一歩となる世界初の電池とは

今年3月、東京ビッグサイトで開催された「第14回 国際二次電池展」にて、日本電気硝子株式会社が世界で初めて実現させた主要部材全てが「結晶化ガラス」製の酸化物全固体ナトリウムイオン二次電池を発表した。伝導性に優れた固体電解質(=結晶化ガラス)を用いた画期的な電池の特徴、開発を実現した技術について紹介する。

ナトリウムイオン電池が注目を集める理由

スマートフォンの世界的な普及に加えて、目覚ましいスピードで開発が進むEV(電気自動車)の車載用として、放電・充電を繰り返すことが可能な「二次電池」の需要が急増している。だが、二次電池の現在の主流である「リチウムイオン電池」は、製造にリチウムやコバルトなどレアメタルが用いられ、将来的な資源枯渇が懸念されている。

一方、電子の移動にナトリウムイオンを用いる「ナトリウムイオン電池」は、これまでリチウムイオン電池に出力面で及ばなかったものの、その課題を補う研究が進むほか、資源埋蔵量の潤沢さから持続可能な生産性を持つ電池として将来性が期待される。また、リチウムイオン電池と比べて使用温度範囲が広く、マイナス温度の環境、反対に高温の環境でも動作する汎用性も注目を集めている。

ガラスの性能を超えた結晶化ガラス

日本電気硝子は、これまで結晶化ガラスを用いたナトリウムイオン二次電池の開発・研究に取り組み、2021年には電池の主要部材(正極、負極、固体電解質)のうち正極と負極に結晶化ガラスを、固体電解質にナトリウムと酸素、アルミニウムからなる物質「βアルミナ」を用いたナトリウムイオン二次電池を実現させていた。

結晶化ガラスは、特殊な組成のガラスを再加熱し結晶状態にしたもので、高い強度と硬度、熱安定性、耐久性に秀でている。また、一般的に非結晶状態で原子や分子が無秩序に配列され、電流を通さない絶縁体であるガラスにβアルミナを加え焼成させ、結晶化ガラスに電気を通す特性を付し電池材料にしている。同社は結晶化ガラスを、残された固体電解質に用いる研究を続けてきた。

そして今回、リチウムイオン電池などに用いられる有機化合物を主成分とする有機系電解液を超えるナトリウムイオン伝導性と、-60~120℃という広い動作温度域を持つ結晶化ガラス製の固体電解質を開発。主要部材全てに結晶化ガラスを用いた全固体ナトリウムイオン二次電池を世界で初めて実現させた。

これまでのナトリウムイオン電池はβアルミナの固体電解質が用いられてきたが、結晶化ガラスを固体電解質に用いることで広い動作温度を維持したまま、ナトリウムイオン電導性が向上した

資料提供:日本電気硝子

今回の開発においては、主要部材を全て結晶化ガラスに統一することで、-60℃~120℃という広範囲での動作を可能にした。また同社の独自技術「ガラスの軟化流動」を用い強固な一体化を実現、イオンの伝導パスが非常に良好な蓄電素子(※)を形成した。

※蓄電素子…正極、負極、電解質を焼結一体化した酸化物全固体電池の基本構造

現行品と新開発されたナトリウムイオン電池の構造比較。βアルミナは薄い固体を形成することが難しかったが、主要部材が成形性の自由度が高い結晶化ガラスで一体化されたことで体積を容易に薄くでき、その分、複数の電池を層状に重ねエネルギー密度を上げることが可能に

資料提供:日本電気硝子

この結果、1つの電池内に蓄電素子を容易に集積できることで、電池の設計における自由度が向上。機器へ電池を搭載させる上でも、より融通が利くようになった。

完全なガラス製であることから発火や爆発のリスクも限りなく低く、現行品の優れた特性は維持しつつ性能を向上させている。

ただ、実用化には容量が少ないため、日本電気硝子ではより安全かつ大容量の蓄電デバイスを完成させ、持続可能な生産性を持つ製品の実用化に向けた研究・開発を引き続き進めるという。

リチウムイオン電池の性能限界や課題に対応するべくしのぎを削る次世代二次電池の研究・開発を見守りたい。

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