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日本初! 環境エネルギー(株)らが国産特許技術で国際規格準拠のバイオジェット燃料製造

廃食用油再利用と航空業界の温室効果ガス排出量削減に貢献

環境エネルギー株式会社と一般社団法人HiBD研究所、北九州市立大学は、持続可能な航空燃料(SAF=Sustainable Aviation Fuel)の国際規格に適合したバイオジェット燃料の製造に日本で初めて成功。化石燃料製のジェット燃料と同様の化合物で構成され、廃食用油など動植物性油脂から製造する国産特許技術「HiJET技術」を用い、バイオジェット燃料を既存技術より低圧力・低温度で製造可能にした。その詳細を解説する。
(<C>カルーセル画像:kazukiatuko / PIXTA<ピクスタ>)

厳格なハードルが立ちはだかるクリーンな燃料での安全航行

従来の化石燃料由来ではないバイオジェット燃料のSAFは、CO2など温室効果ガスの排出削減が求められる航空業界の要求に応えるべく、ジェット燃料分野で研究・開発が活発になっている。

しかし、国内外を結ぶ航空機に用いられるSAFの実用には、国際的な標準化・規格設定機関ASTM Internationalが定める、代替ジェット燃料等合成燃料を含む航空用ジェット燃料に関する国際規格「ASTM D7566」への適合が必須条件である。

この規格では、航空用ジェット燃料の析出点※1を-40℃以下とし燃料凍結を防ぐほか、燃焼後に発生する煤(すす)の元で燃料に含まれる芳香族成分※2の量を抑えるため芳香族炭化水素の濃度を0.5%以下とするなど、安全な運航のための厳格な品質基準を満たさなければならない。

このような条件を国産SAFで満たすべく、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2018年度から開始した「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」において、環境エネルギー株式会社、一般社団法人HiBD研究所、北九州市立大学は共同でバイオジェット燃料製造プロセスを研究・開発してきた。

※1…航空機が飛ぶ氷点下の環境でも燃料が凍らないよう凍結のしにくさを表す尺度で、燃料が結晶化する温度
※2…炭素と水素から成る化学物質の中で、物質の構造に六角状の核を持つ化合物

国産バイオジェット燃料の製造技術の確立・拡大へ

今回の研究の成功を呼び込んだ「HiJET技術」は、原料となる廃食用油を元に水素化を含む複数のプロセスを経てバイオジェット燃料を製造する国産特許技術である。

バイオジェット燃料製造工程の概要。化合物に水素を付加させる還元反応(水素化)などを含むプロセスに、HiJET技術を用いた装置が使用された

資料提供:北九州市立大学

研究において課題となったのは、水素化処理に際し油脂の中の酸素原子を除去しながら、炭化水素の芳香族化を防ぎ、かつ氷点下の環境でも凍らないよう異性化(分子が原子の組成を変化させず配列のみ変化、別の分子に変換)させて、流動性を上げることだった。

「ASTM D7566」は、廃食用油や植物油などの脂肪酸エステルの水素化により燃料を製造する技術に関して、付帯規格「Annex2」が設けられている。これにより適合がより厳しいものとなっていた。

今回の事業で開発された、「HiJET技術」によるラボレベルの水素化装置

画像提供:北九州市立大学

今回の研究では触媒を新たに開発し、プロセスを改良。芳香族成分の生成を従来に比べ80%以上抑え、析出点は-65℃以下、かつ芳香族炭化水素濃度は0.05%未満というバイオジェット燃料の製造に成功した。

厳格な「Annex2」に適合した、大学・企業による国内初の事例となった。

また、新たに開発した触媒を用いることで、既存技術よりも低圧力、かつ低温度でバイオジェット燃料の製造が可能になった。

実際に開発されたバイオジェット燃料

画像提供:北九州市立大学

研究チームとNEDOは、今回開発したバイオジェット燃料製造プロセスの商用化に向けて、今後はパイロットプラントの整備を開始、プラントの連続運転を目指している。

また、生産をスケールアップすることで得られるデータを活用し、バイオディーゼル、バイオナフサも商用化の生産を目指すことで温室効果ガスの排出抑制を進めていく。

廃食用油由来のバイオジェット燃料で、青空をクリーンに維持する航空機の運航が加速していく未来が、もうすぐそこまで来ている。

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