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鹿島建設が山岳部向け工法では世界最大級の断面積の道路トンネルを掘削

新技術導入による超大断面掘削方法で、切羽(きりは)の高い安全性と安定性を獲得

2023年3月、鹿島建設株式会社は「横浜環状南線 釜利谷庄戸トンネル工事」(発注者:東日本高速道路株式会社)の掘削工事において、世界最大級の断面積485m2の掘削を完了した。従来とは異なる工法で安全に行い、環境への影響に配慮した技術も導入されたこの工事について解説する。

圏央道完成に欠かせない重要なトンネル工事

横浜環状南線は約9kmの自動車専用道路で、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の一部として位置付けられる。

今回の工事は、釜利谷JCTとの接合部から環状4号線との交差部までの約1kmの区間に7本のトンネル(総延長3946m)を構築し、鹿島JV(joint venture=共同企業体。複数の異なる企業が共同事業を行う組織)が施工を担当。

特に5車線となる分合流区間上り線トンネルの一部は、最大幅29m、最大高さ20mと世界最大級の掘削断面積485m2となる。

釜利谷庄戸トンネルのイメージ図。4本のトンネルが最小離隔60cmで並ぶ「4連区間」、2本のトンネルが分岐合流し大断面トンネルとなる「分合流区間」、トンネルの土被(かぶ)りが最小1.7mの「低土被り区間」で構成される

資料提供:鹿島建設

今回の工事は、山岳部の掘削で用いられるNATM(New Austrian Tunneling Method)工法で行われた。1960年代にオーストリアで誕生したこの工法では、地質の特性や岩石のストレス状態を詳細に分析し、最適な位置に支柱やアーチを配置。地質の固有の強度を生かして、より安全で効率的なトンネル掘削が可能となる。

この際、一部が超大型断面となる分合流区間はトンネルを上下に分割し掘削する従来の方法では、施工中の切羽(トンネルを掘削する際の最先端か所)の安定性に懸念があった。切羽の安定性はトンネル掘削の安全性を確保するために非常に重要であり、今回の工事における大きな課題となった。

トンネル上部を2分割、仮の底面を施し掘削

鹿島JVは超大型断面の掘削を安全に遂行するため、トンネル上部を上下に2分割して掘削を行い、掘削の途中段階でインバート(トンネル底面を逆アーチ型に掘りコンクリートで固めた覆工部分)を一時的に施す「仮インバート閉合」を行う手法を採用。

工事中のトンネルの変形を抑制し、切羽の高い安定性を確保した。

従来の大断面掘削方法と新たな超大断面掘削方法

資料提供:鹿島建設

上半分の2分割掘削では、上半の上部掘削(上図<1>)後、上半の下部掘削(上図<2>)に先行してコンクリートを吹き付け、切羽開放時間を短縮し安定性を向上。上半の下部掘削後、仮インバート閉合(上図<3>)を行った。インバートは、半円形となっているトンネル断面を早期に円状にすることで構造的に安定させ、トンネル内の強度を高める。

上半上部掘削の様子(上画像)。下半掘削+一次インバート閉合の様子(下画像)

画像提供:鹿島建設

こうした大規模断面を効率よく掘削するために、重機のブーム(腕部分)延長など大型化改造を行い、左右2台編成で施工。これにより、大断面トンネルの早期安定化と、掘削断面積485m2の達成が可能となった。また、施工中の騒音や振動の低減も目指し、低振動型の機械を使用するなど環境対策も実施した。

今後の展開として、鹿島JVは掘削断面積370m2の下り線トンネルを施工する予定。

このトンネルは掘削断面積485m2の上り線トンネルのすぐ隣に建設されるため、難易度も非常に高いが、安全・環境・品質・工程管理を徹底して工事を進めることだろう。

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