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鉄道を、より安全なインフラに! JR東日本がデジタルツイン技術を導入

一元的なデータ管理で鉄道運行の劇的改善と迅速な災害対応を可能に

東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、現実世界の豊富なデータをデジタル空間で再現する「デジタルツイン」技術を駆使したプラットフォーム「JEMAPS」(JR East Mashup Probe System/通称:ジェイイーマップス)を業務へ導入した。リアルタイム情報の統合とビジュアル化により鉄道の混雑緩和から災害時の迅速な避難計画の策定まで、さまざまな状況のシミュレーションを可能にする、画期的な技術について解説する。

迅速な意思決定を遅らせる、社内外データ集約の負担

鉄道会社にとって、安定した輸送と災害や事故発生時の安全確保は重要な課題である。

災害や事故が発生した際に鉄道会社は、従来運行情報や気象・防災情報を社内外のあらゆる情報源から集約し、対応を講じていた。しかし情報の集約に多大な労力を要する問題を同時に抱えていた。

分散された情報の集約・管理は、情報共有や意思決定へのタイムロスを招き、列車や旅客を適切に移動させる上で妨げとなる。また、災害対応の遅れにより安全リスクが高まる懸念も付きまとう。

JR東日本がこれまで集約していた社内データと社外データの詳細。これらを「JEMAPS」で一括収集し、デジタルツイン技術でリアルタイム再現する

資料提供:東日本旅客鉄道株式会社

こうした問題を解消するため、JR東日本は列車の運行データ、乗客の流れなどの情報をリアルタイムで収集・分析し、さまざまなデータソースを統合。

一つの地図上に表示するデジタルツインプラットフォーム「JEMAPS」を構築したと2023年10月に発表した。

列車や乗客の流れをデジタルツイン技術でリアルタイム再現

JR東日本では、2022年6月から「JEMAPS」を使用開始。自然災害が発生した際、鉄道運行状況、警報・注意報、土砂災害や浸水害の危険度分布を地図上で複合的かつリアルタイムで確認できるようになった。

「JEMAPS」での“鉄道運行×局地的大雨”の表示例

画像提供:東日本旅客鉄道株式会社

“大雨警報(浸水害)危険度分布×洪水警報危険度分布”の表示例(2023年9月8日、房総半島で発生した大雨時)

画像提供:東日本旅客鉄道株式会社

さまざまなデータを統合して確認することができ、対応の即時策定や広範囲の影響分析、関連機関との情報共有がスムーズになり、災害時の効果的な対応を実現している。

列車が駅と駅との中間で長時間停車すると予測される輸送障害が発生した際は、列車の位置と混雑状況をリアルタイムで把握、乗客に対して代替交通手段の案内や追加の車両投入、駅員の効率的な配置など、旅客救済計画の立案を可能にした。

“走る列車グラフ”(山手線)表示例。列車の乗客数が列車位置に高さで表示される。鉄道運行の透明性と効率性を高め、輸送障害時の旅客の不便を最小限に抑えることが可能に

画像提供:東日本旅客鉄道株式会社

また、デジタルツイン技術を活用し、さまざまな状況を想定したシミュレーション、対応予測を行い、事故や災害に備える環境がアップデートされた。

社内訓練で用いられた首都直下地震を想定した“鉄道運行×推定震度分布”表示。訓練の臨場感・緊張感が増し、多様な災害への社員の対応能力強化にも役立っている

画像提供:東日本旅客鉄道株式会社

「JEMAPS」は現在、首都圏と新幹線、地方の一部線区の在線状況が表示可能。2024年度初にはJR東日本全線区表示を完了させ、雷に関する気象情報を新たに追加予定だ。

今後は他の鉄道会社、企業、自治体などとの連携、アプリやデジタルサイネージでのユーザーへの情報提供など社会活動に貢献するツールとしての活用を検討していく。

デジタルツイン技術によって、日本全国の鉄道がより快適かつ安全に運行される未来を切り開くことを期待したい。

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