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上下水道設備も電気も不要!“完全自己処理型”水洗トイレが誕生

太陽光を利用する独立電源システム&排せつ物は微生物で分解処理する高機能

搭載する太陽光発電&蓄電池で自律運転し、排せつ物は微生物によって分解処理。汚泥がほぼ発生しないため水道設備も不要という、まさに置くだけ簡単・手間いらずの画期的な未来型トイレをご紹介する。

太陽光×蓄電システムを備えて自律運転が可能

福岡市博多区に本社を置き、電気機器の開発・製造を手掛けるニシム電子工業株式会社は、2月1日に完全自己処理型水洗トイレ「TOWAILET(トワイレ)」を発表した。

「TOWAILET」の外形寸法は2140×2920×2510(mm)、本体重量は1.5トン。出力1.5kWの太陽光パネルと8kWhの蓄電池を組み合わせた独立電源システムによって自律運転できるという特徴を持っている。そのため、災害時の避難場所のように電源がないところであっても設置することができる。

実際に2017年9~11月まで、九州北部豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市杷木町の災害ボランティアセンターに同型の試作機を設置。集まった多くのボランティアが利用したという。

1人用の1室タイプ(上)と男女別の2室タイプ(下)の「TOWAILET」

そもそも独立発電システムを備えるトイレの開発は、2011年の東日本大震災を受けて日本赤十字社熊本赤十字病院と九州電力がスタートさせた。

両社は自然エネルギーを活用した電気供給など、災害に強い避難所「スマートデザインシェルター」構想の実現に向けて開発を進めていたが、その後、同じく九州に本社を構えるニシム電子工業が研究を引き継いだ形で「TOWAILET」が誕生した。

これまでの仮設トイレは設置が簡易というメリットがある反面、その多くは排せつ物をためる便槽(べんそう)を備えたくみ取り式であったため、排せつ物のくみ取りの手間や臭いなど衛生面が課題とされていた。

しかし「TOWAILET」はこれら従来の仮設トイレが持つ“臭い・汚い”といった負のイメージを払拭・克服した画期的なアイテムだ。

排せつ物をバイオ処理してきれいな水を循環

「TOWAILET」はタンク(洗浄水槽)にためた約3トンの水を使ってトイレを洗浄する。

当然、最初期にタンクにためる水の用意は必要となるが、以後、洗浄に用いる水は排せつ物を処理した水が循環利用される。

循環処理の概要図

その仕組みは以下の通り。

原水槽に集められた排せつ物は細かく粉砕され、生物処理槽で微生物によってバイオ処理されるのだが、ここで残った汚泥は再度原水槽へと戻される(汚泥返送機能)。そして同様のサイクルを最終的にほぼ水と二酸化炭素に分解されるまで繰り返し、かつ、水は最先端のフィルター技術によって大腸菌や不純物が除去された上でタンクにためられる。

ここで重要なのが、処理した水を循環して利用するための新たな水補給が不要なことと、一連のサイクルによって10年などの長期使用でも汚泥がほとんど発生しないことの2つ。これにより、上下水道設備と排せつ物のくみ取りの必要がなくなり、きれいな水で快適なトイレ環境が保たれるのだ。

ちなみに利用制限はなく、1日300回以上きれいな水で利用できる設計となっている。加えて、水質検査などのシステムメンテナンスは年1回で良く、生物処理に利用する木質チップの交換は不要とのこと。これらの要素は全て維持コストの低減にもつながっているのもポイントの一つだ。

また他にも、タブレット端末やパソコンからトイレの稼働状況を確認したり、緊急呼び出しなどを確認できるI-TOLE(アイトレ)機能も備える。

今年度中の販売開始を見据える「TOWAILET」。災害時の避難所はもちろんのこと、イベント会場や観光地などでの需要を見込み、販売価格は標準タイプで700~800万円程度を予定しているとのこと。

予期せぬ災害時の避難場所など、いざというときに必要となる仮設トイレ。上下水道や電源の有無にかかわらず設置・稼働できる「TOWAILET」のような自律運転型トイレは今後の用途に可能性が感じられる。災害時でも清潔なトイレが使用できるということは、被災者の心を少しでも落ち着かせることにつながるのではないだろうか。

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