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狩猟用の罠もテクノロジー化!IoTの活用でジビエがもっと身近な食材になる?

センサーで捕獲を検知して管理者に通知する新技術

近年、野生鳥獣による農作物への被害が深刻化しているのをご存じだろうか?捕獲を担う狩猟者が高齢化の影響で徐々に減少していることもあり、地方の自治体にとっては頭痛のタネとなっている。そんな中、IoTセンサーを搭載した狩猟用の画期的なトラップが注目を浴びている。最新のテクノロジーを駆使すれば、イノシシもシカも生態系を壊さない程度に一網打尽にできる日が来るかもしれない。

野生鳥獣を捕獲したら、すぐさまスマホに通知!

農林水産省によると、2017年度に鳥獣が農作物を荒らしたことで発生した被害金額は……なんとおよそ164億円。2015年度の176億円、2016年度の172億円から比較すると徐々に減少しているとはいえ、途方もない規模の農作物が失われ続けているということになる。

国産の良質な野菜や穀物が、われわれの手元に届くことなくシカやイノシシのエネルギーになっているのである。

農家に限らず、全ての日本人の生活に関わる大問題と言っても過言ではないのではないだろうか?

2017年度で最も被害額が大きい野生鳥獣はシカの約55億円。次いでイノシシが約48億円、サルが約9億円となっている

(C)NOBU / PIXTA(ピクスタ)

しかし、野生鳥獣の捕獲を行っている狩猟者は年々減少し、日本の人口構造と同様に高齢化も進んでいる。

また、捕獲には猟銃を維持するコストなどを軽減できる罠(わな)猟が採用されることが多いものの、ベテラン猟師にとっては体力的な負担が大きい。見回りを怠って獲物を放置すると、食肉として利用することもできなくなり、処分費用がかさんでしまうからだ。

そんな危機的状況を打開できる可能性を秘めているのが、東京・目黒区で狩猟関連機器・サービスを扱う株式会社huntech(ハンテック)が開発したIoTセンサータグ「スマートトラップ」だ。

11月12日に発売された「スマートトラップ」の新モデル。サイズは幅10cm、高さ17cm奥行き7cm。動力は市販の単3乾電池4本のみ

使い方は極めてシンプル。ワイヤを使って鳥獣の足を縛り付ける仕組みの「くくりわな」や、獲物が入るとおりが閉じる「箱わな」に、このスマートトラップを接続するだけ。

すると、内蔵されたセンサーがわなにかかった際に暴れる鳥獣の動きに反応。獲物を捕獲したことを、管理者にメールで知らせてくれるのだ。

スマートトラップの設置イメージ。既存のモデルと比較して、バッテリー持続時間が最長9日間から2カ月間に延長して、通信の安定性も向上

わなが作動するとセンサーが捕獲を検知して通知メールが送信される。通知メールの送信先は自由に設定できるため、複数人でわなの管理をすることも可能

huntechによると、これによりわなの設置者に義務付けられている見回りの頻度を“毎日”から“週1回~月1回程度”にまで削減することができるという。IoTテクノロジーによって、猟師の労力・エネルギーを1/30ほどにまで軽減できるのだ。

しかも、これまでは捕獲された野生鳥獣の約9割が廃棄されていたものの、スマートトラップを使えば捕獲後すぐに回収できるため、良好な状態で食用肉として流通させることが可能になるとのこと。

ちなみに、政府は昨年からシカやイノシシなど野生鳥獣の肉を食材にする「ジビエ」の利用を拡大する方針を明らかにしている。ことし3月には、捕獲から搬送・処理加工、販売がしっかりとつながったジビエ利用モデル地区として全国17地区を選定。2019年度にはジビエの消費量を倍増させる方針だ。

これまでは一部のレストランでしか味わえなかったジビエが、近場のスーパーでも入手できる時代になるかもしれない。

捕獲データを蓄積して「猟師のカン」を見える化

スマートトラップの機能は“捕獲を通知する”だけではない。GPSセンサーを搭載しているため、捕獲日時や気象情報、捕獲場所の位置情報も含めたデータベースを自動で作成することもできるのだ。

つまり、従来はベテラン猟師の経験則に頼ることが多かった野生鳥獣の行動特性などが“見える化”されるため、捕獲効率が格段にアップする。また、設置情報をシェアすることで、複数人でのわなの位置の共有や、見回り・とどめ刺し・運搬の分業化も可能になる。

捕獲情報の位置データをマッピング可能になる

huntechでは2019年末までにこの「スマートトラップ」の販売を既存モデルと合わせ1000セット程度見込んでいるという。野生鳥獣被害が深刻な地方の自治体などが主な対象だ。

気になる販売価格は1台3万3800円。別途システム利用料として月額980円(いずれも税抜)かかるとのこと。

また、同社はジビエの流通体制に関わる事業も拡大していく方針で、まずは捕獲後の食肉加工・流通プロセスのログを保存・管理するプラットフォームを開発するそうだ。

大切な農作物を守る過程とはいえ、失われた野生鳥獣の命を無駄にすることはできない。そのためのシステムを構築することも人間の責任であり、IoTやAIなどのテクノロジーを活用すれば、今後もさまざまなジャンルで不可能を可能にしていくことができるのかもしれない。

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