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果物でおなじみのDoleがフィリピンで「パイナップル発電」に挑戦!環境負荷低減を狙う新バイオガス発電計画とは

パイナップル加工工程で出る果物ごみを資源に変換し、ごみ&電力コスト削減を目指す!

スーパーなどで販売されている缶詰やジュースなどの果物加工食品。その製造工程の中でどうしても発生してしまうのが残渣(ざんさ)といわれるろ過後の残りかすや不溶物、いわゆる果物ごみだ。従来は捨てられる運命にあったごみだが、現在、バイオ燃料の原料として有効活用する計画がフィリピンで進行している。日本とフィリピンの企業が一体となって推し進める新たな取り組みをご紹介する。

クリーンな電力生産&コスト削減の一挙両得

地球温暖化や化石燃料の枯渇の問題もあり、世界中が持続可能な社会へ向けて歩を進める昨今。太陽光や水力、風力など化石燃料に替わる環境負荷の少ない再生可能エネルギーへの注目度が上昇している。

その一つが、家畜の糞尿や食品廃棄物、木くずといった有機ゴミから発生する可燃性のバイオガスを取り出すバイオガス発電だ。バイオガスは燃焼時にCO2をほとんど排出せず、かつごみの削減にもつながるというメリットも挙げられる。

同じく穀物や有機ごみを燃料(バイオマス燃料)に発電を行うバイオマス発電では、バイオマス燃料を燃焼する過程では化石燃料同様にCO2を排出。また、大量の穀物を発電原料にした場合、食糧問題に発展する恐れが指摘されていることから、バイオガス発電はバイオマス発電に比べて、より環境に優しい発電方法といえる。
※バイオマス発電の課題に取り組むバイオベンチャー・株式会社ユーグレナによるミドリムシ大量増殖計画の記事はこちら。同じく、バイオ燃料の製造・実用化に向けた構想に関する記事はこちら

そうした状況の中、大手総合商社・伊藤忠商事が新たな試みを発表。フィリピンにあるグループ会社のDole Philippines Inc.(以下、Dolefil)が排出するパイナップル残渣を活用し、バイオガス発電に取り組むという。

広大な敷地で大量栽培されるパイナップル。加工の際に排出する残渣を原料にしたバイオガス発電にチャレンジする

Dolefilの主力商品の一つである缶詰やジュースといったパイナップル加工食品は、製造工程で皮や芯、ヘタなどの残りかすが発生する。これらは通常、肥料などとして処理されているのが現状だ。

また、加工工場のあるフィリピン・ミンダナオ島では電力需要増加により電気料金が高騰。そのため、製造工程にかかる電力コストの増加という経営課題にも直面している。

缶詰製造ラインの様子

大量に生み出される芯や皮などの残りかすを発電に活用するのが狙い

パイナップル残渣は、食糧問題ともバッティングしない上、安定して一定量の排出が見込まれる。そこで考案されたのが、永続的かつ環境に配慮した最適な処理方法としてバイオガス発電に活用することだ。伊藤忠商事は今回の取り組みを通じて、環境負荷と経営コストの改善を目指す狙いがある。

発電燃料となる可燃性のバイオガスは、もととなる原料を一定期間発酵させることで発生する。そのため、詳細は非公開ではあるものの、今回の場合、パイナップル残渣を大型タンク内に集め、バイオガスを回収する手法が用いられるものと推測される。

Dolefilはこの取り組みに向けて、フィリピン国内で電力・水道・病院・高速道路などを運営する大手企業グループMetro Pacific傘下のスララ バイオガス ベンチャーズ(Surallah Biogas Ventures Corp./以下、SBVC)と提携。Dolefilからバイオガスの原料としてパイナップル残渣をSBVCに供給し、製造されたバイオガスを電力として買い取るという図式だ。

バイオガス発電設備の建設予定地。今後、ミンダナオ島の電力問題の一助を担うか注目される

今回の取り組みに向けて、SBVCでは新たにバイオガス発電設備を建設。予定される2020年の操業開始後は、その先16年間にわたってバイオガスと電力をDolefilに対して固定価格で供給するという長期スキームになっている。

日本企業のバックアップの下、これまでは製造を担うだけだった現地法人が中心となってエコ&エネルギー生産に取り組む今回の事例。地域への貢献にもつながる素晴らしいチャレンジの成功を応援したい。

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