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CO2排出量削減にも貢献!乗用車エンジンの熱効率50%超えが現実味を帯びる

複数の企業と大学が連携した国家プロジェクトでエンジン技術革新に大きな成果

長年の研究によりさまざまな基礎技術の開発が達成されつつある現在、新技術の誕生には複数機関の連携が不可欠となっている。そうした中、内閣府に設置された国家プロジェクト、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「革新的燃焼技術」研究グループが、乗用車のエンジン熱効率を10%引き上げることに成功した。複数の企業と大学が連携する「産産学学連携」によって誕生した、新たなイノベーションの詳細をご紹介する。
TOP画像:(C)icetray / PIXTA(ピクスタ)

40年かけて改善した熱効率と同数値を5年で上乗せ達成!

世界の自動車メーカーがEV(電気自動車)など電動化へ向けた技術革新を進めている。狙いはもちろん、排気ガスに含まれるCO2やNOX(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)といった温室効果ガスや大気汚染物質の排出量を削減し、環境に優しいクリーンな社会の実現を目指すことだ。

このように自動車業界が総力を挙げて電動化を推し進めているが、HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグイン・ハイブリッド車)を含め、2040年時点での世界全自動車保有台数の約9割には内燃機関(エンジン)が引き続き搭載されると予測されている。

そのため、CO2排出量削減に欠かすことのできない取り組みが内燃機関の熱効率向上だ。自動車メーカーはこれまでも開発に取り組んできたものの、その技術は成熟化。1970年代に30%程度だった熱効率は、40年以上が経過した現在も40%に到達する程度となっている。

熱効率のさらなる向上が難しくなっている背景には、内燃機関の燃焼現象が極めて複雑かつ高速で、空気量、燃料量、燃焼のタイミングなど、コントロールすべきパラメーターが膨大になっていることが理由として挙げられる。

エンジンは、ピストンの動きに合わせて急激な化学反応と発熱が発生し、それによって生じる圧力がピストンに作用して大きな動力を生み出すという仕組みだ。エンジン内部ではこのような燃焼が1秒間に何十回も間欠的に起こっており、これらを安定して起こし続ける必要がある。

熱効率をさらに向上させるためには、燃焼過程で動力に変換されず捨てられているエネルギー損失を極限まで低減させ、さらにその燃焼過程をこれまで以上に高度に制御することが不可欠なのだ。

本プロジェクトでは、過去40年かけて自動車企業が約10%向上させた熱効率を、5年という短期間でさらに約10%引き上げることに成功した

本プロジェクトは、内燃機関の環境性能研究加速を目的に日本の自動車メーカー9社と2団体が参画、2014年に発足した自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)によって実験装置の提供や安全確保・実機検証の支援をする形で複数大学が研究・開発に着手した。

今回、飯田訓正 慶應義塾大学 大学院理工学研究科 特任教授、石山拓二 京都大学 大学院エネルギー科学研究科 教授、大聖泰弘 早稲田大学 研究院次世代自動車研究機構 特任研究教授らの研究グループは、自動車メーカーが過去40年間かけて10%ほど向上させた熱効率を、5年間という短期間でさらに10%引き上げるという新たなコンセプトのもと熱効率向上にチャレンジ。まさに産産学学連携の体制構築が実を結んだ形だ。

ガソリンエンジンの熱効率向上では、超希薄燃焼(スーパーリーンバーン/内燃機関において混合気中の酸素と燃料が過不足なく反応するときの理論空燃比よりも薄い<リーン>混合気=燃料が少ない状態で燃焼すること)で安定着火を可能とする着火・燃焼技術を開発。エネルギー損失の低い低温燃焼となる超希薄燃焼を実現した。
※マツダのガソリンとディーゼルそれぞれの特徴を併せ持つ次世代エンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」に関する記事はこちら

また、ディーゼルエンジンにおいては、燃料噴霧が空気を巻き込みながら最適に分散する燃料噴射技術を開発。燃焼時の火炎がエンジンシリンダー壁から離れたところに発生し、未燃燃料が燃え続く現象を減らすことに成功。熱効率の向上につながることを実証した。

両研究チームが実現した正味最高熱効率50%超を達成した技術の概要図

さらに両エンジンに共通する損失低減実現のため、機械摩擦損失の低減技術やターボ過給システムの効率向上技術、熱電変換システムの高効率化も進行。

これら複数技術の統合により、ガソリンエンジンで51.5%、ディーゼルエンジンで50.1%という正味最高熱効率が達成されたという。

そして、もう一つ注目すべきなのが、今回構築したモデルやソフトウェアがこの先の産学双方における研究開発に貢献する可能性だ。

研究によって得られた知見は、実験式や物理式で表現するモデルやソフトウェアの形式にまとめるなど、これまであまり重要視されてこなかった保管形式を重視した。各成果が明確になることで、大学などで次の研究開発に反映・継承されやすくなるはずだという。

今後はエンジン工学の垣根を越えて、基礎から応用にわたる幅広い学問分野での応用、展開が期待されている。

研究グループは、「今回の研究成果は、今後数十年先まで主流と予測されている内燃機関を搭載した自動車による環境負荷を低減し、世界のCO2排出量の削減に貢献するものです。さらに、燃焼分野の基礎科学を発展させると同時に、日本の産業競争力の強化をもたらす可能性を秘めています」とその意義を説いている。

まさに“産産学学連携”によるオールジャパンともいえるスクラムが生み出した新たな技術革新。

乗用車エンジンの熱効率UPはもちろん、この成果を基に今後もさまざまな分野をまたいだ新たなイノベーションの誕生が起こることに期待したい。

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