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未利用の太陽エネルギーを活用!“赤外線”から水素生成を可能にする技術を実現

京都大学らの研究グループが、新たな光触媒で赤外域の太陽光から世界最高効率での水素生成に成功!

近年、飛躍的に進歩し、普及が進んでいる太陽光発電。文字通り、太陽光として地球に降り注ぐ太陽のエネルギーを活用した発電方法だが、これまでのところ目に見えない赤外域については活用が難しく、その全てをクリーンエネルギーとして利用できていなかった。そうした中、日本の研究グループがこの赤外域の太陽光から水素を生成する新たな光触媒を開発。世界最高効率での水素生成に成功した。太陽光の中でも未使用部分のエネルギーを掘り起こす、最新の研究をご紹介する。
TOP画像:(C)まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

地球に届く全ての太陽光はエネルギー利用が可能

太陽光発電に代表されるように、太陽の光はクリーンで持続可能な社会を実現する上で大きな役割を担うと期待されるエネルギー源の一つだ。

しかし、現在利用できているのは、実はそのうちの半分程度でしかない。全太陽エネルギーの約46%を占める赤外域の太陽光(赤外光/赤外線)は、有効利用できていない未使用資源となっている。もし仮に赤外光を有効利用することができれば、その割合からすると新たな巨大エネルギー資源を手に入れたにも等しいといえる。

また、現在の太陽光利用に関する研究は、人間の目で確認できる可視光を対象としているが、これは自然のエネルギーシステムである光合成と競合関係にある。一方で赤外光は、人間の目で見ることはできないが自然のサイクルとも競合しないため、自然と共存した真のエネルギー変換が実現できるという。

これまでは可視光や紫外線など波長の短い光を主にエネルギーとして利用していた。現在は未利用の目に見えない長い波長の波(赤外線)を使うことができれば巨大なエネルギー源となる

こうした中、京都大学化学研究所、豊田工業大学、関西学院大学、立命館大学、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)からなる研究グループは、赤外光から水素を生成できる新たな赤外応答光触媒を開発。2月4日に発表した。

これまでも赤外光を使って、水から水素を生成する手法(赤外光のエネルギーを使って水の電気分解を行う光触媒の一種)は報告されていた。しかし、赤外光の効率的な吸収が可能な材料が限られていること、また赤外光のエネルギーが低いため電気や化学エネルギーへの変換が困難であることから、可視光のエネルギー変換と比べて効率が極端に低く、赤外光のエネルギー利用は難しかった。

そこで、赤外光を吸収し効率的に化学エネルギーに変換する新たな光触媒の開発が不可欠であった。

そうした課題がある中で、現在、高効率な太陽光エネルギー変換実現のカギとして期待されているのが局在表面プラズモン共鳴(LSPR)という現象だ。これは表面プラズモン共鳴(金属ナノ粒子の自由電子が光の影響によって起こす集団振動)という原理が、nm(ナノメートル/1mの10億分の1)という極小のサイズ構造において起きること。

中でも、硫化銅ナノ粒子などのヘビードープ半導体ナノ粒子は、貴金属ナノ粒子と比べてキャリア密度が低いため、赤外域に強いLSPRを示すという特徴がある。また、ヘビードープ半導体ナノ粒子は貴金属ナノ粒子とは異なる性質を有するため、貴金属ナノ粒子では困難であった赤外光の高効率エネルギー変換を実現することが期待できる。

今回、同研究グループは、京都大学 化学研究所 精密無機合成研究室が開発した方法に基づき、赤外域にこのLSPRを示す硫化銅ナノ粒子と硫化カドミウムナノ粒子を連結させたヘテロ構造ナノ粒子(硫化銅/カドミウムヘテロ構造ナノ粒子)を合成。新たに誕生した赤外応答光触媒を使って水素生成における光触媒の活性を測定した。
※太陽光・光触媒を研究する東京工業大学理学院・前田和彦准教授のインタビュー記事はこちら

透過型電子顕微鏡による硫化銅/硫化カドミウムヘテロ構造ナノ粒子の断面(画像の下部)。左上部の図は、硫化銅と硫化カドミウムの接合構造を表した赤外応答光触媒のイメージ。また、右上部は赤外応答光触媒を一つだけ取り出したもの

すると、硫化銅/硫化カドミウムヘテロ構造ナノ粒子が波長1100nm(=0.0011mm)の光から、外部量子効率3.8%で水素を生成。

さらには地表に到達する太陽光の最大波長である2500nmの光にも反応し、水素生成に成功するという結果が得られた。

研究グループが開発した赤外応答光触媒の水素生成反応時における外部量子効率を示す図

紫線は太陽光スペクトル、黒線が硫化銅/硫化カドミウムヘテロ構造ナノ粒子の拡散反射スペクトル。スペクトルとは、太陽の光を分光器を通して見たときにできる色の帯

これらの事実が示していることは大きく2つ。

一つは、金ロッドなどを用いた赤外光の水素生成では0.3~1.4%だった外部量子効率が、硫化銅/硫化カドミウムヘテロ構造ナノ粒子では3.8%という世界最高効率で水素を生成できる光触媒であること。

もう一つが、赤外域の太陽光のほぼ全てを高効率でエネルギーに変換できることだ。これまでの赤外応答光触媒は最長でも920nmまでの太陽光しか変換することはできなかった。しかし、今回開発された触媒であれば、地上に降り注ぐ太陽光の最大波長である2500nmの光からも水素生成が可能となる。

つまり、太陽光という膨大なエネルギーを無駄なく活用することが、現実味を帯びたことを意味している。

この成果について同研究グループは、「今後、赤外応答光触媒や赤外光電変換材料など赤外域の光を用いた光エネルギー変換材料の開発に革新的なイノベーションが期待できる」との見解を示し、引き続き触媒のさらなる性能向上と触媒反応の多様化、赤外光によるエネルギー変換機構の詳細な解明を進める予定とのこと。

地球に暮らす私たちは太陽エネルギーの恩恵を受けて生活しているといえる。その膨大なエネルギーを余すことなく有効活用できれば、持続可能な社会におけるエネルギー問題が大きく前進することは間違いないはずだ。

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