2017.8.22
トヨタ、低炭素社会実現に向けた取り組みを実施中!
神奈川県横浜市で実証実験をスタート!
環境に関する全世界的なテーマの一つ、二酸化炭素(CO2)の排出を減らす低炭素社会の実現。それに向けたさまざまな取り組みがスタートしている中、去る7月12日に新たな実証事業の本格運用が開始された。トヨタ自動車をはじめ、神奈川県、横浜市、川崎市、岩谷産業、東芝、豊田自動織機、トヨタタービンアンドシステム、日本環境技研が行う、環境省委託事業「京浜臨海部での燃料電池フォークリフト導入とクリーン水素活用モデル構築実証」についての詳細をレポート。
INDEX
自然エネルギーの安定供給実現がカギ
この実証実験は、風力発電から得たエネルギーを水素として蓄え、それを社会にいかに安定的に供給していくかをテストすることが大きな目的となっている。
ポイントとなるのは、自然エネルギーをいかに安定的に供給するかということ。低炭素社会では、将来的には化石燃料などを使うのではなく、風力や水力といった自然エネルギーの活用が期待されている。しかし、これらは自然なものゆえ季節や気象条件などにより、継続的な安定供給が難しいとされる。
それを改善するためには、自然エネルギーによって生み出したエネルギーを蓄積することが求められている。それを媒介するものとして高い可能性を秘めているのが“水素”だ。
水素を活用するメリットは、コスト面、製造方法、輸送面と多岐にわたるという。
では、どのようにすれば実用化できるのか。今回発表された内容で現状が明らかになった。
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今回の実証実験の概要を説明する、トヨタ自動車の友山茂樹専務役員
風力発電で生み出したエネルギーをビール工場で使用
今回の実証実験の仕組みをまとめると、以下のようになる。
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今回のプロジェクトによるサプライチェーンのイメージ
【1】省エネ電力:横浜市風力発電所(ハマウィング)で発電
再生可能エネルギー電力を使用することで、サステイナブル(持続可能)な供給を目指す。変動幅が大きい風力発電の電力に対し、優先順位を立て最適化するシステムを構築している。
今回のハマウィングの場合、風力発電によって得られた電力が、同施設内の既設受変電および分電盤設備を介して水素製造装置へと運ばれる。
【2】蓄電・水素製造:同敷地内に、水を電気分解して水素を製造するシステムを設置
蓄電池システムを活用することで、風力による発電がないときでも電力供給ができ、安定した水素製造を可能とする。蓄電池システムには、トヨタのハイブリッド車プリウスの中古バッテリーが再利用されている。
【3】貯蔵・圧縮:同敷地内に、水素圧縮機、水素貯蔵タンクを設置
製造された水素は、水素貯蔵タンクへ。必要なタイミングで簡易型水素充填車に水素を充填する。
【4】輸送:簡易型水素充填車で水素を運搬
今回の実証実験では、燃料電池フォークリフトが使用される。そのために、専用の水素充填車を日本初導入する。トラックは環境に配慮したハイブリッド車だ。
【5】利用:京浜臨海部の事業所に導入された燃料電池フォークリフトに水素を供給
2016年11月より販売が開始された、燃料電池フォークリフトを使用。キリンビール横浜工場では24時間体制で稼働する。
今回の実証実験では、その他に横浜市中央卸売市場や低温倉庫内など、使用条件の異なる4拠点で燃料電池フォークリフトを使用することになっている。
この実証実験は、将来の他地域展開を見据え、運用コストの試算と地球温暖化対策への貢献度などを踏まえた、水素サプライチェーンの事業可能性を検証する。2018(平成30)年度まで行われ、その後の運用については環境省との協議により決定されるという。
すでに「配送トラックがハイブリッド車のため、CO2排出量がゼロではない」「水素の充填コストを現状の半分以下にしたい」といった課題が挙げられており、参加団体は実証実験が終わる2018年度内までに解決できるよう、取り組んでいくことになる。
トヨタはセブン-イレブン・ジャパンとも新たな取り組みを開始
神奈川県での実証実験に続いてトヨタが発表したのは、コンビニエンスストア大手セブン-イレブン・ジャパンとの連携だ。同社の物流と店舗の省エネルギー・CO2排出削減に向けた検討を始めるという。
現在は基本同意書を締結した段階。今後、「物流」と「店舗」において、省エネルギー・CO2排出削減を目指し、協力して取り組んでいくことになる。
■物流
配送トラックの動力と冷蔵・冷凍ユニットの電源を燃料電池化。CO2排出削減を目指す
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トヨタとセブン-イレブン・ジャパンで運用しようとしている、燃料電池トラックの完成イメージ
■店舗
1)自動車用燃料電池ユニットを活用した燃料電池発電機を導入。水素ステーション併設店舗のベース電源とする
2)自動車用蓄電池を活用した定置型蓄電池システムを店舗に導入。省エネルギー・CO2排出削減に加え、災害時などの非常用電源として活用することも検討する
セブン-イレブン・ジャパンでは、すでに太陽光発電などを導入している店舗もあり、それと組み合わせることでさらなるエネルギーマネジメントシステムの導入を図り、将来的には水素ステーションとしても利用することを目指している。
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text:長嶋浩巳 photo:野中弥真人
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