空想未来研究所2.0

中学生の必須ゲーム!理数系に強くなるスーパーマリオのジャンプの法則

マリオの身体能力について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「身体能力」。ゲームキャラクターとして世界一有名な“ヒゲの人”が、どれだけスーパーなのか、エネルギーの観点から考えてみました。

ゲームを国民に浸透させたスーパーマリオ

時代も変われば変わるもの……と驚かざるを得ないのが、「eスポーツ」である。

正式名称「エレクトロニック・スポーツ(電子競技)」。コンピューターゲームを競技として行うというもので、欧米では1990年代から世界大会が何度も開かれ、年収1億円を超えるプロもいるという。21世紀に入って、日本でも盛り上がっているようだ。

驚いたのが、ことしの“茨城国体”で文化プログラムとして行われること。国民の健康を保ち、スポーツへの関心を高める国家的イベントで、コンピューターゲーム! そして、もっとビックリしたけど、部活動に取り入れている高校もあるそうで、なんと教育の一環として行われる時代になった! ため息が出ますな~。

諸外国はいざ知らず、日本でコンピューターゲームをここまで国民生活に浸透させたのは、あの人だろう。ヒゲと帽子がトレードマークの「マリオ」だ!

1981年にアーケードゲーム「ドンキーコング」で名もないキャラクターとしてデビューし、1982年「ドンキーコングJR.」で悪役として名前がついて、1983年にファミコン用ソフト「マリオブラザーズ」で主役として名前がタイトルに冠され、1985年に「スーパーマリオブラザーズ」へと進化して、人気爆発!

以来、毎回のようにピーチ姫がさらわれ、マリオは数々の苦難を乗り越えて、彼女を救い出してきた。もう30年以上も続いているので、当たり前のこととして受け入れられているが、よく考えると、マリオとはすごい男である。

自分の身長より高くジャンプし、垂直な土管を上り下りし、水中で何分も戦い、キノコを食べると大きくなる!

これはいったい、どれほどすごいことなのか。ジャンプと巨大化に注目し、エネルギーの視点から考えてみよう。

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マリオが巨大化してもジャンプ高度は同じ

Aボタンを押すと、「パウーン」という軽やかな音とともに、マリオはジャンプする。もう当たり前中の当たり前。これがないと、ゲームがまったく進行しない基本動作である。

だが、科学的には途轍(とてつ)もない行為だ。ファミコン版「スーパーマリオブラザーズ」の画面で測ると、Aボタンを長めに押したときは、身長のきっちり4倍の高さまで跳んでいる。マリオの身長は一般に1m55cmとされているから、ジャンプ高度は6m20cm!

走り高跳びの世界記録2m45cm(1993年、ハビエル・ソトマヨル)を軽く超えているが、それだけではない。高跳びで主流の背面跳びは、仰向けになって体を反らせるため、体の重心はバーの下を通過すると言われる。これに対して、マリオは直立したまま跳んで、足の高さが6m20cmに達するのだ。重心の高さは7mに迫るだろう。

また、町中にある歩道橋は、「道路の路面から上空に設置する構造物の下面まで4.5m以上確保しなければならない」という法令にのっとって設置されているから、マリオはたいていの歩道橋に跳び乗れるということになる!

普通サイズのときでさえ、このジャンプ力。巨大化して“スーパーマリオ”になると、どうなるのか?

ゲームをお持ちの方は、ぜひ測定していただきたい。スーパーマリオの身長は、(ちび)マリオのジャスト2倍。ジャンプの高さは、スーパーマリオの身長の2倍=マリオの身長の4倍。

つまり、サイズが大きくなっても、ジャンプの高さは変わらないのである! これはもう、感涙を抑えきれないほど科学的だ。

身長が2倍になると、同時に次のようなことが起きる。

(1)体重が8倍/縦、横、高さが全て2倍になるので、2の3乗=8倍
(2)筋力が4倍/筋肉の断面積に比例するので、2の2乗=4倍
(3)ジャンプの動作で重心が動く距離が2倍/身長の比率と同じ=2倍

そして【エネルギー=力×距離】なので、ジャンプの動作で、スーパーマリオの脚が自分の体に与えるエネルギーは【4(筋力)×2(重心が動く距離)=8倍】になる。

8倍のエネルギーを、8倍の体重に与えるのだから、ジャンプ高度は同じで当然なのだ!

ここで使ったのは、中学3年生の数学「相似と計量」、同じく理科「力とエネルギー」で習う内容である。全国の中学校は、ぜひマリオを教材に、この2大単元を教えていただきたい。

レンガを打ち砕くスーパーマリオのエネルギー

ジャンプ力では差のないマリオとスーパーマリオだが、起こす現象には違いがある。

ステージに配置されたレンガに、ジャンプして下からパンチを見舞うと、マリオの場合はちょっと持ち上がるだけですぐ元の位置に戻るが、スーパーマリオはレンガを打ち砕く。

大きくなったかいがあったなあ、と思われるシーンだが、科学的に考えると、果たしてそうか? これを明らかにするには、両者の体格と、レンガの重さを確認しておく必要がある。

マリオの身長は、前述の通り1m55cm。その2倍のスーパーマリオは3m10cmとなる。デカいなあ、やっぱり。

マリオの体重は公表されていないが、小太りなので80kgと考えよう。スーパーマリオの体重は、その8倍の640kgというモノスゴイものになる。

画面で測ると、レンガは縦横ともに、マリオの身長と同じ。奥行きも同じとすれば、一辺1m55cmの立方体で、体積は3.72m3になる。レンガを買ってきて密度を測定すると、1Lあたり1.92kg。すると重さは7.27tである。小型の路線バスぐらいあった!

さてこれを、持ち上げたり、打ち砕いたりするわけである。

砕けるかどうかはエネルギーの問題だ。レンガなど岩石質の物体を砕くには、1kgあたり100J(ジュール)のエネルギーが必要と言われる。7.27tなら72万7000Jだ。

スーパーマリオは拳を頭上に固定してレンガにぶつけている。この殴り方なら、体の運動エネルギーでレンガを砕いていることになる。

【運動エネルギー=1/2×質量×速度2

であり、これが72万7000Jに等しいということだ。この式の「質量」に体重の640kgを入れると、速度は秒速47.7m=時速172km。これは、上にレンガがなければ、高度116mに達するスピードだあ!

レンガが語る意外な真実

レンガが持ち上がるかどうかは、運動量の問題になる。

【運動量=質量×速度】

であり、「衝突の前後で運動量の合計は変化しない」という「運動量保存の法則」で考えよう。

レンガはマリオの身長のジャスト半分だけ持ち上がっている。地球上で物体を77.5cm上昇させるには秒速3.90m=時速14kmで打ち上げる必要がある。

また、衝突後にマリオはレンガと一緒に動いているので、衝突後の質量の合計は【レンガ7270kg+マリオ80kg=7350kg】になる。以上から運動量保存の法則の式はこうなる。

【マリオの質量×マリオの衝突速度=(マリオ+レンガの質量)×77.5cm上昇させるのに必要な速度】
つまり【80[㎏]×マリオの衝突速度[m/秒]=7350[㎏]×3.90[m/秒]】

ここから、マリオの衝突速度は秒速358m=時速1290km。マッハ1.05! 上にレンガがなければ、高度6540mまで上昇! なんと。マリオは富士山に跳び乗れるのだ!

マリオのエネルギーを計算すると、513万J。スーパーマリオの7.5倍である。なんとマリオは巨大化すると、発揮できるエネルギーが7.5分の1に激減してしまうのだ。何のために巨大化するのか……。

いや、スーパーマリオになると、確かに良いことがある。敵に当たってもすぐ死ぬのではなく、小さなマリオに戻るだけ。つまり、スーパーマリオは命を2つ持っている状態なのだ。

そのために運動能力が減退するとしたら、命というものは、いかに重いことか。マリオは道徳の勉強にも役立ちますなあ。

マリオの命を増やす無限1UPの不思議

命というと、マリオには不思議な点がある。緑のキノコを取ったり、コインを取って得点を増やしたりすると命が増えるのだ! 命って、そういうモノ!?

この現象群における最大の謎は、そうです、無限1UP!

階段でジャンプしてノコノコの甲羅をうまく踏むと、ノコノコが階段にぶつかって跳ね返り、踏まれた地点に戻ってくる。それをまたマリオが踏んでノコノコは階段へ。後は何もしなくても、ジャンプしては踏み、ジャンプしては踏みが繰り返されて、ピロリンピロリンと命が無限に増えていくのだ!

ジャンプと命の関係は科学の守備範囲を超えるが、科学的にも不思議である。

無限1UPで一番有名な階段は右上がり。そこでマリオはノコノコの甲羅の左側を踏んで、蹴る。その結果、ノコノコは右へ滑っていくのだが、「作用・反作用の法則」から考えると、マリオはノコノコに右向きの力を与えたのだから、その反作用で自分は左側に動いてほしいところである。なのに、何事もなかったかのように、真上に跳ぶマリオ。なぜだ!?

ノコノコも、右へ滑って階段にぶつかると、全く同じ速度で左に跳ね返ってくる。ここでは、ぶつかったときにエネルギーが全く失われない「完全弾性衝突」が行われているようだ。しかも、ノコノコはかなりのスピードで、そのまま階段から左へ飛び出しそうなのに、よく見るとマリオの着地点まで来たところで、なぜかピタッと止まって踏まれるのを待っているかのよう。どーしてだ!

科学的に深々と納得できる現象が起きているかと思えば、不可解極まりない怪現象も見せる。なのに……というより、だからこそ、3分の1世紀にわたって愛され続けてきたのだろう。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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