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決戦間近に科学で分析!「百獣のカイドウ」の身長・体重・身体能力を大解剖

『最強の生物』のエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「最強の生物」。過去にもさまざまな“最強”を取り上げてきた中で、近年まれに見る強さをみせているのがマンガ『ONE PIECE』(1997年~)に登場する四皇の一人、「百獣のカイドウ」。まだまだ能力の一端しか見せていないものの、その断片からこの世界における最強生物のエネルギーについて考えてみました。

信じられないほど強そうな「百獣のカイドウ」

百獣のカイドウ。『ONE PIECE』において、圧倒的な存在感を放つ男だ。

それはとりもなおさず、海賊王を目指すルフィが絶対に倒さねばならない相手であることを意味する。しかし、それが容易であろうとは到底思えない。

まず、体が大きい。常人の数倍もある!

力も人間離れしている。武器は巨大なトゲ付きの金棒で、それを片手で軽々と振り回す!

その肉体は、信じられないほど強靭(きょうじん)。高度1万mの空島から飛び降りても死なない!

初登場のとき、マンガではカイドウについてこのように説明している。

<<海賊として7度の敗北を喫し、海軍・敵船に捕まること18回。千度を超える拷問と40回の死刑宣告を受けたが、誰も彼を殺すことはできなかった――男の名は「百獣のカイドウ」。陸海空…生きとし生ける全てのもの達の中で…「最強の生物」と呼ばれる海賊…!!!>>
(※原文要約)

そのうえ悪魔の実の能力者で、巨大な龍に変身できるのだから、もう手がつけられない!

こんな怪物に、ルフィは果たして勝てるのか? ルフィの勝利を信じつつも、百獣のカイドウの実力に科学で迫ってみよう!

新聞から測るカイドウの身長、体重、腕力

まず驚くのは、その巨躯(きょく)だ。

まだカイドウの身長は公表されていないが、立ち姿が描かれたシーンでは手下たちの3倍ほどの身長がある! いや、カイドウの方が遠くに描かれているから、遠近法を考えれば、もっと大きいかもしれない!

だが、いきなり冷静になるなら、カイドウの存在感を強調するために、ここでは大きく描かれている可能性もある。もっとさりげないシーンで、大きさが如実に分かる姿はないか……と思って探したら、ありました。

カイドウが新聞を読むシーンがあるのだが、その新聞の一面が、文庫本ぐらいの大きさに見える!

他のシーンで確認すると、『ONE PIECE』の世界の新聞も、間違いなくわれわれが読む新聞と同じぐらいの大きさだ。そして、現代日本では、新聞の一面は縦も横も文庫本のほぼ4倍。ということは、カイドウは常人の4倍ほどの大きさなのだろう。つまり、身長7m!

そして、筋肉隆々のガッシリした体つきだ。現実のプロレスラーたちの体格と比べると、もし身長が190cmなら、体重は150kgほどありそうな体形に見える。これで身長7mなら、体重は7.5t! オスのアフリカゾウぐらい!

この巨体で、トゲ付きの金棒を振り回すのだから、手がつけられない。

カイドウの身長を7mとすると、金棒の長さは4m67cm、先端の太い部分の直径は48cm! 電信柱(最大で45.3cm)より太い!

しかも、その先端付近には、円すい形のトゲが何本も付いている。底面の直径も高さも18cmほどで、確認できるだけで26本! 鉄でできているなら、推定総重量は1.5t!

カイドウはこれを片手で軽々と振り回す! 自分の体重の5分の1だが、それは体重70kgの人が14kgの金棒を振り回すようなもの。巨体に比しても、なんたる怪力!

やたら「!」が多いけれど、カイドウについて語っているとこうなってしまう。

この金棒を振り回すとは、どんな力なのか。

プロ野球選手のバットは、長さ85cm、重さ850gぐらいが標準だ。カイドウの金棒は、その5.5倍も長く、1800倍も重い!

バットや金棒のような棒状の物体を振り回すためのエネルギーは、振るのにかかる時間が同じなら、「重さ×長さの2乗」に比例する。計算すると5万3200倍! 振り回すための力は「エネルギー÷身長」に比例して1万3300倍!

つまりカイドウは、片手だけでプロ野球選手の両腕の1万3300倍の腕力があることになる。体重は100倍ほどなのに、オソロシイことである。

そして、初めての戦いで、ルフィはこの金棒で殴られ、ぶっ飛ばされて失神した。ダメージはエネルギーに比例するから、このときルフィは5万3200人のプロ野球選手に、トゲ付きのバットで一斉に殴られたのと同じダメージを受けたはずなのだ。敗れはしたが、それでも死ななかったのだから、さすがである!

カイドウの飛び降りは高度5000mでもよかった?

このカイドウが、高度1万mから落下して、地面に人型の穴を開けた。高いところから落ちて人型の穴が開くのは、かつてのギャグマンガでよく見られたシーンだが、もちろんカイドウの場合はギャグなどではない。彼の体の頑健さを示す重要なシーンだ。

カイドウは、「……くそ…!! 頭いてェ… 死ねねえもんだな……!!!」と言いながら、穴から這い出てきた。高度1万mから落ちて、「頭いてェ」で済むとは、どれほど頑丈なのか。

高度1万mから落下すると、もし空気抵抗がなければ、時速1600km=マッハ1.3で地面にたたきつけられる。もちろん実際には、空気抵抗があるので、それよりは遅くなる。

空気抵抗は「断面積×空気の密度×速度の2乗」に比例するが、空気の密度は高度によって変わり、このようなケースは、数式では計算できない。そこで、1秒ごとの落下速度や落下高度をコンピューターで計算してみた。10秒ごとの結果を示すと、次の通り。

【10秒後】時速308kmで高度9519mを落下
【20秒後】時速575kmで高度8192mを落下
【30秒後】時速710kmで高度6340mを落下
【40秒後】時速725kmで高度4323mを落下
【50秒後】時速680kmで高度2377mを落下
【60秒後】時速622kmで高度584mを落下
【63.5秒後】時速603.1kmで地面にドバーン!

なんと、途中まではだんだん速くなっていく(最速は36秒後の時速730km)のに、それを過ぎるとスピードが落ちる! これは、高度が下がるほど空気の密度が大きくなり、ブレーキがかかるからだ。落下の衝撃はスピードで決まるから、高いところから落ちても、それほど意味はないってこと?

ためしに高度5000mから落ちた場合をやってみると、40.2秒後、時速585.8kmで地面にドゴーン! なんと2倍も高いところから落ちたのに、その差はたったの時速17.3km! せっかく空島まで行ったのに……。

「カイドウの穴」から真の体重を逆算する

だが、不思議である。

カイドウが地面に開けた穴は、かなり深そうだ。体重7.5tとはいえ、時速603kmというスピードで、これほどの穴が開くものだろうか。

そこで、実験を行った。木の棒に自転車のスポーク(直径2.5mm)を固定して、スポークを下にして高さ1mから地面に落とすと、深さ2cmまで潜り込んだ。穴の体積は、98.2mm3である。この穴の体積は、落下のエネルギーに比例するはずだ。

そして「木の棒+スポーク」の質量は160g。これを1mの高さから落とすエネルギーとは、

質量[kg]×重力加速度[m/秒2]×高さ[m]=0.16×9.8×1=1.57J

である。

一方、カイドウが地面に激突した速度は、時速603.1km=秒速167.5mで、その運動エネルギーは、

1/2×質量[kg]×(速度[m/秒])2=1/2×7500×167.52=1億500万J

エネルギーは筆者の実験の6710万倍だ。

すると、筆者の実験の6710万倍の体積を持つ穴が開いたはずであり、その体積は6.59m3。筆者の計算では、カイドウの体を正面から見た断面積は10.5m2になる。すると、

6.59÷10.5=0.627m=62.7cm

しか潜り込まないはず! カイドウの巨体なら、体の一部がはみ出してしまうだろう。これは、どういうことだろう?

唯一考えられるのは、カイドウの体重が、もっと重いのではないかということだ。体重が重ければ、衝突のエネルギーが大きくなるのはもちろん、空気抵抗によるブレーキもかかりにくくなるから、速度も上がり、衝突のエネルギーはますます大きくなる。

そもそも、7.5tという体重は、「体の密度が常人と同じ」という仮定から求められたもの。怪物カイドウには、そんな常識は通用しないのではないか。

マンガに描かれた穴の大きさから、計算してみよう。

カイドウが潜り込んだ穴はかなり深そうだ。仮に5mとすると、穴の体積は52.5m3となり、これだけの穴を開けるには、8億3900万Jのエネルギーが必要になる。落下のエネルギーがこれに等しくなるように、さまざまな体重を代入してコンピューターで計算すると……。

出ました。

カイドウの体重は、13t!
激突した速度は、時速1300km=マッハ1.06!
衝撃は、プロ野球選手228万人に一斉にバットで殴られたのと同じ!

というか、自分と同じくらい強い相手43人に、自分のものと同じ金棒で一斉に殴られたのに等しい!

これでも「頭いてェ」で済む百獣のカイドウ。ソラ恐ろしくなる強さである。ルフィはいったい、どーすりゃいいの!?

熱息で新宿が1発で…百獣のカイドウ大解剖図、公開!

そのうえ、巨大な龍に変身するのだから、もうどうしていいんだか。

その大きさたるや、半端ではない。

胴体の直径がルフィの身長(174cm)の2倍ほどはある。長さはマンガからはうかがい知れないが、胴体直径と全長の比が、世界最大のヘビであるオオアナコンダ(胴体直径30cm、全長9m)と同じなら、龍の胴体の直径は3.5m、全長は105m!

体重は、これもオオアナコンダ(250kg)を元に計算すると400tである。ルフィの体重は明らかにされていないが、身長と体型から考えれば70kgほどだろう。その5700倍も重い!

しかも、口から「熱息(ボロブレス)」を吐く。その一発で、ワノ国大名の居城であった「おでん城跡」を吹き飛ばし、同時にそれが立っていた山を目測50mほどの幅でえぐった。細かい計算過程は省くが、そのエネルギーは推定200億J。爆薬5t分である!

などと言っても、直感的には分かりづらいかもしれない。例えば、米軍の2000ポンド爆弾は、炸薬量428.6kgで、半径365.8m以内の人や建物に危害を与えるという。ここから計算すると、熱息を街中で放つと、半径830m以内の人や建物に危害が及ぶ! 新宿や渋谷が、たった1発で壊滅!

この強敵と、ルフィはコミックス92巻で闘っている。おでん城跡を破壊され、怒り心頭に発したルフィは、拳を巨大化&硬化させて殴る「ゴムゴムの象銃(エレファント・ガン)」や「ゴムゴムの象銃乱打(エレファント・ガトリング)」で滅多打ち!

「ドドドドド」「ドガガガ」「ドドドド」と無数の打撃音が鳴り響いているから、何発打ったのかはまったく分かりません! たまらずカイドウは、ついに龍から人間の姿に戻る。おお、われらのルフィは自分の5700倍も重い相手に勝った!

ところが、ここから前述の戦いにつながる。ルフィはカイドウに金棒でぶっ飛ばされて失神した! なんと、カイドウは龍に変身しない方が強い!?

身長は常人の4倍、体重は13tもあり、重量1.5tの金棒を振り回す。おまけに体長100m超えの龍に変身。こんな相手が立ちはだかったら、誰しもまず逃げる算段を立てるだろう。立ち向かっていくなど、想像することさえ難しい。

だが、われらの主人公は、仲間を守るために、人々を幸せにするために、こんな強敵と正々堂々と渡り合う。そしておそらくは、打ち破ってくれるのだろう。空想の物語は、強くなりたい、雄々しくありたいという夢をかなえてくれる。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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