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常人の跳躍力100倍、握力1万倍! 音柱・宇髄天元の基本スペック/鬼滅の刃

『鬼滅の刃・遊郭編』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「身体能力」。今年の冬からアニメの新シリーズ「遊郭編」がスタートする『鬼滅の刃』より、ここで活躍を見せる人気キャラクター、宇髄天元(うずいてんげん)の跳躍力や握力など身体能力にまつわるエネルギーについて考察してみました。

ド派手な男、鬼滅の刃・宇髄天元のエネルギー

マンガの連載が終わってなお、勢いに陰りを見せない『鬼滅の刃』(マンガ2016~2020年)。いよいよアニメが始まる「遊郭編」では、音柱・宇髄天元が目覚ましい活躍を見せる。

忍の家に生まれ、父親に厳しい訓練を強いられた。「命は賭けて当然」「全てのことはできて当然」「矛盾や葛藤を抱える者は愚かな弱者」。結果、9人兄弟のうち7人が、15歳になる前に死んだ。

天元と共に生き残った2つ下の弟は、父親と全く同じ考えの持ち主で、そんな人間になりたくないと思った天元は、家を飛び出して鬼殺隊の門をたたく。

当主の産屋敷輝哉(うぶやしきかがや)は、天元が矛盾や葛藤を抱えながら生きていることに理解を示し、それでも人の命を守るために戦ってくれることに感謝を述べる。こうして天元は、居場所を得た。

現在は、3人の妻をめとり、忍ならではの体力と技術を駆使して派手に戦う。妻たちに「俺は派手にハッキリと命の順序を決めている まずお前ら三人 次に堅気の人間たち そして俺だ」と言い切る23歳である。

う~む…。唸るほどカッコいい。そんな天元が、実力を十二分に発揮するのが「遊郭編」。マンガを題材に、その体から放たれるド派手なエネルギーに注目しよう。

人間2人を抱えて3mジャンプする天元の脚力

宇髄天元の初登場は、コミックス6巻。鬼殺隊本部(輝哉の屋敷)で開かれた柱合会議(ちゅうごうかいぎ)に出席した。

第1の議題は、鬼殺隊士でありながら鬼(竈門禰󠄀豆子)を連れた主人公・竈門炭治郎の裁判。天元は「ならば俺が派手に頸(くび)を斬ってやろう 誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ もう派手派手だ」。とにかくこの人、派手こそ命なのである。

次の登場は8巻。仕事を終えた炭治郎が、寄宿する蝶屋敷に帰ってくると、天元が鬼の巣食う遊郭に潜入させるため、2人の少女(神崎アオイ、なほちゃん)を無理に連れて行こうとしていた。

怒った炭治郎は「女の子に何してるんだ!! 手を放せ!!」と叫んで、渾身の頭突きを見舞う。ところが天元は、それを軽くかわし、アオイとなほちゃんを抱えたまま高さ3mほどの屋根に跳び乗ったのである!

この驚くべきジャンプ力の実態は、天元の体格によっても違ってくる。

後の遊郭での戦いで、上弦の陸・妓夫太郎(ぎゆうたろう)は「六尺は優に超えてるなぁあ」とねたんでいた。1尺=30.3cmだから、6尺=181.8cm。大正時代(男子平均身長160cm)にしては大きいが…と思いながら調べると、設定では198cm。六尺を優に超えすぎ!

平均身長171cmの現代の感覚では、2m12cmという雲突く大男である。体重も設定されていて、95kgだという。抱えられたアオイもなほちゃんも小柄だが、計算を複雑化させないために2人合わせて95kgとしよう。

力学的に計算すると、自分の体重と同じ荷物を抱えていたらジャンプ高度は半分になる。しかし、実際にはそこまで単純ではない。荷物を持つとバランスも変わり、上半身の動きも制限されるからだ。

そこで、天元ジャンプの実験をした。

筆者が体重の6分の1の荷物を抱えて垂直跳びをしたところ、高度は持たない場合の52%に落ちた。一つの作業仮説として、ジャンプ高度が「体重+荷物」のα乗に反比例すると仮定して実験結果を代入したところ、α=4.2になった。

すると「体重+荷物」が2倍になれば、24.2=18より、ジャンプ高度は18分の1になる。それで3m跳べるなら、単独だと54m!?

そ、それは、いくらなんでも……ホントかなあ? 自分の計算を疑いながらも、研究を進めよう。

炭治郎、我妻善逸(あがつまぜんいつ)、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)を連れて遊郭へ出発するときも目を見張った。「付いて来い」と言って鬢(びん)の飾りを「シャラ…」と鳴らすと、「フッ」と消える。3人が気付くと、はるか遠くを走っていた。

善逸は叫ぶ。「はや!! もうあの距離 胡麻粒みたいになっとる!!」。

なるほど、ゴマ粒。その長径は大きなものでも3mmほど。天元の身長は198cmだから、660分の1の大きさに見えていたことになる。人間がゴマを観察する距離といえば30cmぐらいだろうから、天元は0.3m×660=198m彼方まで走り去っていたのだろう。

問題はそこまで走った時間である。アニメが始まればハッキリするのだが、今はマンガのコマから割り出すしかない。「フッ」と消えてから、善逸が「はや!!」と叫ぶまで5コマ。セリフとその他を実演してみると、3秒かかった。

すると天元の速度は、198m÷3秒=秒速66m=時速238km。100m走のタイムは1秒52!ここまで速いとなると、もしかして…。

高校生の垂直跳びの記録から離陸速度を計算してみると、それは50m走の速度の2分の1である。これと同じ比率なら、天元は秒速33mで離陸できるはずで、すると跳び上がれる高度は55.5m。さっき真偽を怪しんだジャンプ高度(54m)とほぼ同じ! 宇髄さんの実力を地味に評価していました!

まだ戦場にも着かないうちに、これほど派手な実力を見せてしまう男。それが宇髄天元なのである。

鬼も驚く天元の握力は504t

さて、いよいよ遊郭での戦いである。

天元は、日輪刀も派手だ。同型同大の2本1組の刀で、柄が鎖でつながれている。全長が天元の身長の7割=1m38cmもあり、幅も広く、中央部が楕円形にえぐれているのも目を引く。

細かく測定すると、刀身の長さは86cmで、幅は19.6cm、厚さは通常の日本刀と大差ない印象だ。長径16cm、短径8cmの楕円の穴があることを考慮して、筆者が研究目的で所蔵する日本刀の模造品と比較すると、重量は7.1kg。通常の日本刀7本分である。

われらの音柱は、これを両手に1本ずつ持って振り回す! 鎖でつないだまま、片手で2本を振り回すこともある!

オドロキの使用法を見せたのは、妓夫太郎との戦いにおいてだった。十分な間合いを取っていたにもかかわらず、天元の日輪刀が妓夫太郎の頬をかすめる。妓夫太郎は「刀身が伸びっ…」と一瞬は思うが、天元が1本(Aとする)の刃先を親指と人さし指で挟み、鎖でつながったもう1本(Bとする)を妓夫太郎の顔に向けて飛ばしていたのだ。妓夫太郎は「どういう握力してやがる」と驚くが、ホントにどんな握力なの!?

最も強い握力が必要なのは、妓夫太郎に向かって飛んだBが、鎖が伸び切ってピタッと止まった瞬間である。

「瞬間」とはいえ、どんなに力があっても高速で飛ぶ物体を距離ゼロで止めることはできない。この現象に関与する諸量には、次の関係があるからだ。

Bの運動エネルギー=天元が加えたブレーキ力×Bが静止するまでに動く距離

もし距離がゼロだとすると、ブレーキ力は無限大となってしまい、それはあり得ない。車が急に止まれないように、日輪刀も急には止まれないのである。

ここでは、鎖が伸び切ってから、Bが静止するまでに動いた距離を1cmとしよう。Bの速度がプロ野球選手のストレートと同じ時速150km=秒速41.7mだったとすれば、Bの運動エネルギーは次のようになる。

Bの運動エネルギー=1/2×質量×速度2=1/2×7.1[kg]×41.7[m/秒]2
=6163[J](ジュール)

すると、ブレーキ力は、こうなる。

ブレーキ力=運動エネルギー÷静止するまでに動く距離
=6163[J]÷0.01[m]=61万6300[N]

[N](ニュートン)とは力学で使われる力の単位で、日常生活で使われる[kg重](重量キログラム。物体にかかる重力)に直すには、重力加速度=9.8[m/秒2]で割ればよい。

ブレーキ力=61万6300[N]÷9.8[m/秒2]=6万2891[kg重]

およそ63tである!

だが、これは天元の握力ではなく、Bにかかったブレーキ力。それは、指でAを挟みつけることによる摩擦力から生まれる。人間の指と鉄の間に働く摩擦力は、挟みつける力のおよそ半分なので、挟みつける力は126t。このように両側から挟む場合は、親指の力も人さし指の力も126tになる。

そして握力計で測る握力とは、親指を除く4本の指と、手のひらの間に働く力。4本の指の力の平均が人さし指と同じだとすれば、天元の握力は126t×4=504t

ジャンプ力は常人の100倍に迫り、握力は1万倍! 忍のすごみがヒシヒシと伝わってくる。

日輪刀で爆発を起こす剣速は時速4万km

戦いの序盤でも、天元は驚異の強さを見せた。

炭治郎たち3人がそれぞれの場所で戦っているとき、天元は気配を探りながら屋根の上を走っていた。やがて「ピクッ」と反応し、屋根から飛び降り、地面に耳を着けて「誰か戦っている音がする 反響してよく聞こえる」と言う。

天元は「音の呼吸 壱ノ型 轟!!!」と唱えて、2本の日輪刀を斜め上から交差させるように振る。その刹那、ドオンと爆発が起こり、地面に直径2mほどの穴が開いた!

ここでナレーション。「二刀流の宇髄天元 その太刀は爆発する 桁違いの威力である 喰らって生き延びた者がいないので 今のところ仕組みは不明」。

後の戦いで天元は爆薬も使っているが、ナレーションの緊迫感から考えて、まさか「日輪刀の楕円形のくぼみに爆薬を挟んで」などというチープな仕組みではないだろう。刀の一振り、いや二振りで爆発を起こすとしたら…?

考えに考え抜いて、筆者の脳裏に浮かんだ想像は次の通り。

(1)空気中で刀を振ると、空気抵抗によって運動エネルギーが失われ熱に変わる。
(2)通常はわずかなものだが、天元の二振りの速度が常軌を逸しているため、瞬間的に莫大な熱が発生する。
(3)周囲の空気を急膨張させて、爆薬の爆発と同じ現象を起こしている。

のでは!? 試算してみよう。

(やや長くなるので、面倒な方は適当に読み飛ばしてください)穴の深さを1mとすれば、破壊した地面の体積は3.14m3。ビルの解体ではコンクリート1m3あたり200gの爆薬が使用される。土の地面の対爆発強度をコンクリートの3分の1と仮定すれば、1m3あたり67gの爆薬が必要。天元は67[g/m3]×3.14[m3]=210gの爆薬と同じエネルギーを地面に与えた。空気中に逃げた分も合わせると420g分。爆薬1gは4000Jの熱を出すから、発生させた熱は168万J。日輪刀1本あたり84万J。左右の日輪刀を2mずつ動かしたとすれば、その熱を発生させる空気抵抗は42t。前述の刀に42tの空気抵抗が発生する速度とは、秒速1万1200m=時速4万km…。

マッハ33である! ライフル弾(マッハ3)の11倍!

プロ野球選手のバットスイングは、時速150km前後(ストレートと同じ)だから、その267倍。振るための力は、速度の2乗(7万1289倍)と、刀とバットの質量比(7.1kg÷0.85kg=8.35倍)に比例して、片手で振る(2倍)ことも考えれば、120万倍!

この超絶偉業を、鬼ならぬ人の身で生み出す男、宇髄天元!

過酷な少年時代を耐え抜き、雲突く大男に成長し、跳躍力は常人の100倍、握力は1万倍、武器を振るう力は120万倍にまで鍛え上げた23歳。良き理解者を得て、人々の命を守るために戦うが、それより大切なのは3人の妻! この壮烈な強者でさえ物語の中では最強ではないのだから、人間の想像力は本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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