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初期からどれくらい強くなった? ルフィのゴムゴムの技のエネルギー/ONE PIECE

『ONE PIECE』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「パンチ力」。最終章に突入し、壮大な冒険がクライマックスを迎えようとしているマンガ『ONE PIECE』(1997年〜)で、主人公ルフィのゴムゴムの技が、初期からどれほど成長したのか。エネルギーの観点から考察してみました。

どんな強敵もぶっ飛ばしてきた「ゴムゴムの技」

連載25周年を迎え、2022年夏に公開された映画も大好評だったマンガ『ONE PIECE』が、原作ではついに最終章に突入。一つの時代が終わろうしており、物語の行く末と、これまでにちりばめられてきた謎の数々を味わい尽くす日々になるだろう。

この四半世紀、敵味方を問わず魅惑のキャラたちがきら星のごとく現れ、その中心にはいつもルフィがいた。強大な敵に立ち向かい、敗北を味わっては、さらに強くなる。3000万ベリー(11巻)から始まった懸賞金も、今や30億ベリー(104巻)に!

この道を突き進む原動力となったのは、海賊王になるという鋼の意志、仲間たちへの熱い思い、そして「ゴムゴムの技」だろう。

ゴムの体を生かして多種多様な技を編み出し、ギア2(セカンド)、ギア3(サード)、ギア4(フォース)と強化していった。そして、現在最強のギア5(フィフス)へ! ここでは、数あるゴムゴムの技に、「進歩」という視点から迫ってみよう。

最初の技「ゴムゴムの銃」の威力はボクサー1万人分

マンガを読む限り、ルフィが初めて放ったゴムゴムの技は“ゴムゴムの銃(ピストル)”である(1巻)。

赤髪のシャンクスから麦わら帽子を預かった10年後、海賊王になることを夢見て船出すると、海王類(海の巨大生物)が現れる。ルフィは「10年鍛えたおれの技を見ろ!」と言って、技名を叫んでパンチを見舞う。その腕は20mほども伸び、海王類は全身を水面から打ち上げられて、ザッパーンと海に落ちた。

この場面には、衝撃を受けた。腕がゴムのように伸びるから、遠くの相手を殴れる……これは分かる。だが、ゴムというものは、伸びれば伸びるほど引き戻す力が働くため、パンチのスピードは落ちるはず。すると、遠くの相手を殴るほど、威力は落ちてしまうのでは!?

この疑問は、アニメを見てさらに膨れ上がった。女海賊アルビダの土手っ腹に“ゴムゴムの銃”を打ち込むと、腕はアルビダを押し出すような感じで、ぐんぐん伸びていき、ついには数百mほどもぶっ飛ばしたのである(マンガでは数m)。これは「ゴムが伸びる」というより、「縮んだゴムが元に戻る」場合に見られる現象である。

ここから考えられるのは、ただ一つ。ゴムやバネに力がかかっていないときの長さを「自然長」という。ルフィの腕は、普段の長さが自然長なのではなく、20mほどになったときが自然長なのではないか。だとすれば、“ゴムゴムの銃”は、縮んだ状態から自然長に戻ろうとして、伸びれば伸びるほど速度は上がっていくことに!

その場合、「ルフィの体重は65kg(身長172cm)」「ルフィの腕の弾力性は、現実のゴムの平均と同じ」「腕の直径は平均8cm」という仮定で計算すると、20m縮んだルフィの腕が自然長に戻った瞬間の速度、すなわち“ゴムゴムの銃゛が当たる速度は時速3900km=マッハ3.2!

通常のボクサーのストレートは、時速40kmだから、およそ100倍。エネルギーは速度の2乗に比例して1万倍。すなわち“ゴムゴムの銃”を食らおうものなら、そのダメージはボクサー1万人に一斉に殴られたのと同じ!

「ギア」発動で速さがワンランク上へ!

このルフィが、さらに強くなる。

初めてギア2を見せたのは40巻、エニエス・ロビーでCP9(サイファー・ポール・ナンバー・ナイン)のブルーノと再戦したときだ。ブルーノは、映画『ONE PIECE FILM RED』でも活躍したドアドアの実の能力者である。

ルフィは言う。「“青キジ”に敗けた時、おれは思ったんだ……(中略)もっと強くならなくちゃ仲間を守れねェ……!!」。そして左足をポンプのように押すと、体がドクン、ドクン、ドルルンとエンジンのような音を上げ、全身から蒸気が上がり始める。

「お前はもう…おれについて来れねェぞ…おれの技はみんな…一段階進化する 『ギア2』」。やや間をおいて「“ジェット銃”!!!!」。ブルーノは超高速移動術“剃(ソル)”の使い手だったが、ルフィの動きを全く見ることができず、はじき飛ばされて、後方の壁にドゴォォ…ン!!!とたたきつけられた。

これは一体、何が起きたのか。ギア2の原理については、44巻でCP9のロブ・ルッチが見抜いている。

「足をポンプにして血の流れを加速している……常人の体ならば心臓がはり裂けるほどの血圧にも内臓も血管もすべてが“ゴム”ならば耐えられる ゴム人間ならではの技だ」

なるほど、血流を激増させれば、体内でとてつもないエネルギーが消費され、莫大な熱が発生するだろう。ルフィの体から蒸気が上がったのは、その結果に違いない。

では、ギア2を発動すると、どれほど強くなるのか。

それは、発生した熱から推測できる。体から上がる蒸気はかなり熱そうだったので、ルフィの体温は60℃に上昇したと考えよう。常人ならいろいろオソロシイことになるが、このときルフィの体内では1268kcalの熱が発生したと推測される。

人間が体内でエネルギーを消費すると55%が熱に変わり、21%が外部に力学的エネルギーとして放たれる。すると体内では2305kcalのエネルギーが消費され、外部には494kcalが放たれたことになる。

1kcal=4184Jなので、これは207万Jに相当し、この“ゴムゴムのジェット銃”の速度は、時速7300km=マッハ5.7。おお、通常の“ゴムゴムの銃”はマッハ3.2だったから、確かに一段階進化している!

ギア3で速さだけでなく、エネルギーも桁違いに進化

ギア3の実態は、44巻のロブ・ルッチとの戦いで描かれた。

右手の親指をくわえ、「骨風船!」と叫んで息を吹き込むと、右手がぼんっ!!と膨らむ。「骨から骨へ移動する空気(パワー)!!」と叫ぶと左腕が巨大化。「みろ!! この左腕は!! 巨人族の腕!!! “ゴムゴムの巨人の銃(ギガント・ピストル)!!!!」。直後、巨大な腕の肘から先が、2人のいた建物の壁を突き破り、ルッチを海上にたたき出した。

これは、どれほどの破壊力なのか。

拳の上下の幅(中指の1番目と2番目の関節の間)は、ルッチの身長の2倍ほどになっていた。ネコ人間に変身したルッチの身長は2mほどだったから、ルフィの拳は上下4m。筆者の同じ部位の長さは7cmなので、ルフィも同じだとすれば、およそ57倍に拡大したことになる。体積はその3乗で18万6600倍だ。
体重65kgの男性の肘から先は1.56Lの体積がある。これが18万6600倍になると、体積は29万1000L。密度も巨人族の腕と同じ(おそらく1kg/L)なら、質量は291tだ。

一方、破壊された建物の壁は、厚さが2mほどもあった。上下4mの拳が、これに上下5m、左右10mの楕円形の穴を開けたとすれば、“ゴムゴムの巨人の銃”は、時速43kmでぶつかったことになる。速度は遅いが、重いだけにエネルギーはものすごく、2120万J。ギア2の“ゴムゴムのジェット銃”は207万Jだったから、さらに一段階の進化!

覇気をまとったギア4の拳は“億超え”の威力に!

その後、ルフィはマリンフォードでエースを失い、冥王レイリーのもとで2年間の修業を積んで“覇気”を身に付ける。その後、ギア2とギア3で放たれる技では、拳や足が“武装色の覇気”をまとって黒光りし、硬度を備えるようになった。

それが結晶したのが“ギア4”と思われる。初めての発動はドレスローザでのドンキホーテ・ドフラミンゴ戦。「ギア4 “筋肉風船”」と唱えて左手首から息を吹き込むと、まず腕が、そして全身が黒光りして巨大化し、「弾む男(バウンドマン)」となった! 戦いを見守っていた人々によると、身長は4mだという!

ルフィは言う。「おれは2年間!! 怪物みたいにデカイ猛獣たちと戦い続けてきたんだ あいつらをねじ伏せるために この“巨体”と“弾力”が必要だった!!!」。ゴイン、ゴインと弾み続ける姿は、まさに硬さと弾力を感じさせる。

まず放たれたのが、“ゴムゴムの猿王銃(コングガン)”。肘から先を上腕の内部にめり込ませ、弾力を蓄えて、一気に放つ! 食らったドフラミンゴは、一直線に飛ばされ、後方の建物を破壊した。

まず注目は、その巨体。たくましい筋肉に覆われた上半身は風船のように膨らんでおり、仮にルフィの体が元の身長174cm(2年間で2cm伸びた)のままでも、体重150kgはありそうな体格に見える。これが身長4mになり、「ゴイン、ゴイン」いう質感から、体の密度がゴム(天然ゴムで0.91kg/L)と鉄(7.874kg/L)の中間になったとすれば、体重は8tである!

肘から先の重量は推定192kg。腕の弾力性がゴムと鋼鉄の中間だったとすると、これを上腕に1mめり込ませたときに蓄えられる弾性エネルギーは220億J。肘から先が飛び出す速度はマッハ44.4! おお、さすがギア“4”!

数字の偶然に喜んでいる場合ではない。こんなのを食らったドフラミンゴは、どうなってしまうのか。

他のワンピースキャラ同様、ドフラミンゴは身長が高く、なんと305cm。体形はスリムだが、ルフィがこの身長に相似拡大した場合と同じだとしても、体重は350kgもある。それでも、マッハ44.4で迫りくる192kgの“ゴムゴムの猿王銃”を食らうと、マッハ15.7でぶっ飛ぶ。そのエネルギーは50億Jで、TNT爆薬1.3t分。建物が吹っ飛んだのも当然ですな~。

そして、この上に“ギア5”があるのだから、言葉もない。103巻と最新104巻で百獣のカイドウを相手に見せたこの姿は、強さがこれまでとは全く異質。単行本が発売されて間もないので、その実態はマンガでお楽しみください。

海賊を目指して故郷を船出した少年が、さまざまな強敵と戦うたびに、異次元の成長を遂げていく。しかし、その原動力は、仲間への思いと将来への夢。心の中は、いたって「等身大」と言えるだろう。だからこそ、その想像を超え続ける強さが、人々の心を熱くするのではないだろうか。人間の想像力は、誠に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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