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道路工事の規制時間が短くなる! 橋梁建設に見るメンテナンスソリューション

鉄板から超巨大構造物が造られる日本の“ものづくりの現場”を見る【後編】

IHIインフラシステム堺工場で造られている巨大な橋梁(橋)や水門。前編では、一枚の鉄板から巨大鋼構造物が出来上がるまでの工程を追ってきた。続く後編は、2020年に続々と完成予定という「いま造っているもの」を眺めつつ、研究を進める新技術から「橋梁建設の未来」を考える。

2020年末に完成!復興する東北に架ける橋

全国の橋梁や水門の製造を手掛けるIHIインフラシステム堺工場。前編では、材料となる鉄板の搬入から出荷手前までの工程を、それぞれの現場からお伝えしてきた。

>【前編】から読む「巨大橋梁や水門が生まれる『IHIインフラシステム堺工場』に潜入」

常時、数十ものプロジェクトが同時進行する中で、堺工場の工場長・作山博康(さくやまひろやす)さんに、現在進行中の「造っているもの」を教えてもらった(2019年12月現在)。

まずは、山梨県北部・大久保沢に架けられる予定のトラス橋。

トラス橋とは、細長い部材(骨組みを造る材料)で造った連続する三角形の骨組みで支える橋の構造形式の一つ。

仮組み立てを終えたばかりのもので、ここから一度解体して塗装し、出荷されることになる。

驚くべきは、100m以上、数百tはある巨大な構造物なのに…

結構シンプルな台で支えられている。

この状態で橋の形に見えるが、現地では上下逆さまに設置される。作業の利便性から逆さまに組み立てられており、現状、下になっている部分が本来の道路面。大久保沢に設置された後、床材やアスファルトが敷かれることになる。

次に見せてもらったのは、宮城県気仙沼市に架けられる「(仮称)気仙沼湾横断橋」の橋桁。

橋桁とは、橋梁の路面を支える土台のこと。この日は海が見える場所に、出来上がった橋桁がパッケージされて出荷を待っていた。

(仮称)気仙沼湾横断橋は、東日本大震災復興プロジェクトとして工事が進む三陸沿岸道路の一部で、市東部に広がる気仙沼湾を横断する。

海上部分の長さは680mにもなり、ワイヤーを張って支える斜張橋としては、「東北最長の橋」となる。

写真提供:JFE・IHI・日ファブJV

2014年6月に着工した横断橋は、2020年4月末時点で両岸から進めている橋桁の接続が残り1ブロック(十数m)のところまで進んでいる。施工を進めるJV(ジョイントベンチャー。JFE・IHI・日ファブ特定建設工事共同企業体)の残工事は2020年内で完了し、道路は2020年度内に開通する予定だ。

その他にも、製造中のものはまだまだある。

こちらは首都高速道路に設置されるランプ。高低差のある場所を連結するための道路で、仮組み立ての状態でゆうに100mは超えていた。

前編でも登場したこちらは、岩手県東部にある閉伊川(へいがわ)河口に新設される水門の扉体(ひたい)。これ一つで約40mもあるが、この巨大な物体を全部で5つ製造する必要があるのだそう。

宮古湾に注ぐ閉伊川は、東日本大震災で川が遡上して水があふれ、周辺地域に浸水被害を出した。遡上対策の防潮水門として製造されており、2027年3月の完成を目指し、建設が進められている。

塗装エリアに置いてあった、素人目には何てことはないように見えるパイプ(写真奥)も、東京都・JR新小岩駅近くにある上平井水門に設置される重要なパーツだ。

扉体と共に、高潮や津波による遡上を防ぐための耐震補強用に製造。扉体は既に出荷されて建設工事が進んでおり、パイプはその出番を待っている。

ちなみに、上平井水門の扉体は、従来品より軽量なのに高強度、塩分腐食に強いステンレス鋼で造られた。総ステンレス製水門としては、日本最大の扉体面積になるのだそう。

日本のインフラ問題を救う新技術も開発中

ここで製造された鋼構造物は、日々全国へ出荷され、各地で設置、建設されているので、近い将来、直接目にできる日が来る。

そんな中、「ちなみに今、一つだけ皆さんが目にできないものを造っています」と作山さんが教えてくれた。

それは、堺工場で使用するクレーン。

2018年に近畿地方に甚大な被害を出した台風21号によって、堺工場でクレーンが倒壊した。その壊れたクレーンを、外部に修繕依頼せず、一から自前で造っているのだ。

確かに、技術的には造れそうだが、“手弁当”の規模の大きさには驚く。

工場内のクレーンは特例ではあるものの、IHIインフラシステムは橋梁や水門をはじめとした「鋼構造物」を数多く手掛けてきた。そこから見えてきたのは、日本に近い将来訪れるインフラに関するさまざまな問題。

よく耳にする設備の老朽化だけでなく、人口減少による工事作業員不足、自然災害による復旧作業の増大など、社会基盤を支えるものだけに、立ちはだかる壁は厚く、高い。

製造面からそういった課題を解決できないかと、新技術の研究開発にも力を入れている。

その一つが、橋梁やトンネルの床版(しょうばん)の取り替えに使える「VanLoc(Variable axial-force network Loc:バンロック)」という継手(つぎて)だ。

床版とは、橋梁の路面の土台となる床材で、継手は床版をつなぎ合わせる構造のこと。空中に道をわたす橋梁を造るためには、この床版を設置する工程が重要となる。

現状では、並べた床版の隙間をコンクリートで埋めてつないでおり、配置決めやコンクリート打設などの作業に多くの時間を割いている。

老朽化などによって、日本中の橋や高速道路で床版の張り替え工事が行われている現在。作業時間がかかるほど、道路の通行止め期間も長くなる。補修する場所は多いのに、人員不足で、仕事の時間も長い。しまいにはドライバーから文句まで…とはいえ、他に効率のいい方法はなかった。

この作業に着目し、同社子会社のIHIインフラ建設とスタートアップのNejiLawが共同開発したのが、ボルト1本締めるだけで床版同士の接続が完成する技術だ。

出典:NejiLaw

床版の配置決めに時間がかからず、コンクリート打設も不要。設置後すぐに橋の上で重機が使えるなどメリットは多く、トータルで通行止め時間を約20%短縮できるという。

作業量が減り、時間が短縮されれば、自ずといくつかの問題は解決に向かっていくかもしれない。

日本では点検・補修、世界では新設!IHIインフラシステムがこれから架ける橋

「製造」以外にも、現場にソリューションを起こせる工程はある。点検だ。

橋梁やトンネルといった大型構造物は、補修すべき部分が簡単に発見できないことも多い。そのため、近年、検査システムや測定器などに新たなテクノロジーが導入され始めている。

IHIインフラシステムが精度改良を進めているのは、「コンクリートビュー」という技術。「プローブヘッド」というティッシュ箱サイズほどの機械で、コンクリートに塩害をもたらす付着塩分の濃度を検知できるという非破壊劣化診断システムで、海から飛来する塩分や、融雪剤・凍結防止剤が付着するコンクリート床版、コンクリート橋脚などの診断が容易になる。

これにより、“直す場所を探す”ことに掛かけていた時間と労力も軽減できるのだ。

写真協力:IHIインフラシステム

こういった技術開発の背景にあるのは、今後の製造現場に求められる4つの「○○化」だと作山さんは言う。

「これからは、インフラの『長寿命化』『工期短縮化』『省人化』『ライフサイクルコスト(調達、製造、使用、廃棄段階を総合的に捉えた費用)の低減化』がキーワードになってくると思います。国内でかつてのような建設ラッシュは望めませんが、補修や点検は増大します。こういった技術こそ、これからの日本にとって必要になるんです」

一方で、海外に目を向ければ、話は変わると続ける。

「IHIインフラシステムはトルコでの架設実績があります。それを生かして、トルコやルーマニアといった東欧諸国で、また、ベトナムと上海、台湾にある関連会社と協力してアジア諸国で、今も着実に新規架設の実績を伸ばしています」

さらに、その先には南米やアフリカへの進出も考えられるという。

「まだまだ未開地も少なくないですから、地球上で私たちがやれることはたくさんあると思います。また、日本と同じ状況を迎えている北米や欧州諸国でも、自国メーカーが強いですが、床版の取り替え技術やコンクリートの劣化診断技術などなら十分通用するはずです」

橋梁や水門といった大型構造物の製造現場は、今もなお古きよき“ものづくり”の技術に支えられていた。しかし、同時に新技術の開発や新天地への進出と、次のステージへの移行も模索されている。

耐久性を高めながら、時間、労働力、コストを詰める。これまで注がれていた莫大なエネルギーを、いかに技術力で削減できるか。今後、日本の現場が乗り越えなければならないハードルは確かに高いが、これまでを支えてきた技術者たちの底力に期待したい。

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