2022.3.14
「FIP」を3分解説!
再生可能エネルギーの主力電源化を推進する新制度
エネルギーの注目キーワードを3分で理解できる! 第20回のテーマは「FIP」。FIT制度(固定価格買取制度)に加えて新たに創設されるFIP制度とはどのようなものなのか。その違いは? 最低限知っておきたい「FIP」のポイントを解説します。
法律を改正して導入されるFIP制度
2022年4月からスタートする「FIP」制度(Feed-in Premium:フィードインプレミアム制度)は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の発電事業者の支援の仕組みを大きく変える新制度です。
電力の卸市場などで取引をした場合、売電価格に対して一定の補助額、つまり「プレミアム」が上乗せされるようになります。
2020年6月に成立した「エネルギー供給強靱化法」で、既存の法律の一つ「再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)」が改正されました。
再エネ特措法ではFIT制度(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)を定めていましたが、より総合的に再エネ利用を進めるため、主に次の4つの観点で改正が施されました。
1.FIP制度の創設
2.再エネのポテンシャルを生かす地域間連系線の整備(系統増強の費用の一部を賦課金方式によって全国で支える制度の創設)
3.再エネ発電設備の適切な廃棄(発電事業者に廃棄費用の外部積み立て義務を課す)
4.一定期間内に運転を開始していない案件の認定失効(認定失効期限を設定)
市場と連動した再エネ導入支援
FIP制度で得られるプレミアムは、あらかじめ設定された「基準価格(FIP価格)」と、市場価格に連動する「参照価格」(市場取引等により期待される収入)の差によって算出され、1カ月ごとに更新されます(基準価格-参照価格=プレミアム単価)。
従来のFIT制度では、再エネによる電力は固定価格(一定)で買い取られ、市場取引は免除されていました。
安定した収益を得られるため、再エネ発電事業者を増やし、再エネの導入拡大を目的とした、初期段階の制度と言えます。
しかし、FIT制度によって再エネが急速に広がると、課題も明らかになりました。
その一つが、電気料金を通じて買取費用の一部を国民が負担する「賦課金」の増加。2021年度の賦課金総額は約2.7兆円となる見通しです。
また、再エネ発電事業者は、FIT制度では市場取引を免除されていることから、電力の需給バランスに合わせて発電量を調整するインセンティブがありませんでした。
そこで、国民の負担を抑えながら、再エネを自立した電源としていくため、FIP制度によって他の電源と同じように市場への統合を促しつつ、投資インセンティブが確保されるように支援していくのです。
FIT制度からFIP制度への移行は、再エネが将来的な日本の主力電源となるための自立に向けた段階に入ったと言えます。
期待されるアグリゲーション・ビジネス
2022年4月から、一定規模以上の発電所(例えば、太陽光・地熱・水力は1000kW以上)は、新規認定でFIP制度のみが利用可能になります。
また、従来のFIT制度の対象でも、50kW以上であれば事業者の希望でFIP制度を選択することもでき、既にFIT制度の認定を受けている発電所も同様に移行可能となっています。
FIP制度へ移行していくと、再エネ発電事業者に次のような変化が起こると考えられます。
1.電力の需給バランスを見ながら、市場価格の高い時間帯に売電する
2.1のために蓄電池を活用する
3.発電量の予測精度が高まる
4.発電量の計画値と実績値の差(インバランス費用)を小さくする
また、自社では出力の調整や発電量の予測が困難な発電事業者も少なくありません。
FIP制度を機に、そうした小規模な再エネ電源、電気自動車や蓄電池などをIoTでまとめ、全体の需給管理や市場取引を担うアグリゲーション・ビジネスの普及、拡大も期待されています。
FIP制度の導入は、再エネが他の電源と共通の環境下で競争できるようになるための第一歩でありながら、新たなビジネスの創出と活性化のチャンスとしても注目されているのです。
参考:
・経済産業省 資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー 再エネ特措法改正関連情報』
・経済産業省 資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』
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画像:vectorfusionart / PIXTA(ピクスタ)