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エネルギーの革新者

再エネ普及が加速?アフターコロナで電力システムは変わるのか

早稲田大学 スマート社会技術融合研究機構 石井英雄研究院教授【前編】

新型コロナウイルスの感染症拡大が収まらない中、職場や社会での電力需要はどのように変わり、それが電力全体のシステムにどう影響していくのか。再生可能エネルギーに適した電力システムの研究を続ける早稲田大学 スマート社会技術融合研究機構の石井英雄研究院教授に“アフターコロナ”での変化について聞いた。

新型コロナによる電力システムへの影響は?

2020年、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響でライフスタイルが激変した。

4月上旬に政府が発令した緊急事態宣言は、感染者が多い東京都や北海道などでは5月下旬まで続き、今なお自宅でテレワークを続けているビジネスパーソンも少なくない。

そうなると、社会における「電気の使われ方」も大きく変わってくる。平日の日中、オフィスや工場での電力需要が減る反面、家庭での電力需要は増える。

電気が作られ、オフィスや家庭で使われるまでには、発電、送電、変電、配電の4つのプロセスが必要になる。電力の安定した供給にはそれらが相互に連携し合う電力システムが求められるのだ。

このアフターコロナの電力需要は、従来型の電力システムにどんな影響を及ぼすのだろうか。

「日本の社会全体としては、電力需要がやや減っている傾向にあります。ただ、実際どうだったのかはこれから分析してみないと、という段階です」

慎重に言葉を選びながら、早稲田大学 スマート社会技術融合研究機構・研究院の石井英雄教授はこう話す。

2020年の4月と5月の全国の電力需要は前年比でそれぞれ3.5%、9.2%減少した

出典)資源エネルギー庁『エネルギー情勢の現状と課題』(2020年7月1日発表,p21)より

テレワーク導入がさらに進めば、都市部に毎日通勤する必要がなくなるため、郊外に自宅を構える人も増えるかもしれない。その自宅に太陽光パネルを設置し、いわば「電力の自給自足者」も増加する可能性がある。そうなれば、電力システムもまた、変化せざるを得ないのではないだろうか。

「それは違います。太陽光発電のような再生可能エネルギーを従来の電力システムにどう組み込んでいくか。この課題に新型コロナが影響することは、現状は考えられません」

再生可能エネルギーを取り入れた電力システムを最適化する研究を10年以上続けている石井教授

もちろん、新型コロナが予見されていたわけではない。では、なぜ電力システムには影響がないと言い切れるのか。それを知るためには、再生可能エネルギーが注目されることになった経緯を振り返る必要がある。

なぜ電力システムは新型コロナに影響されないのか

再生可能エネルギー導入は、ここ数年よく耳にする二酸化炭素(CO2)の排出量削減などの観点から世界的に増加してきた。日本の場合、それをさらに加速させたのは2011年3月に発生した東日本大震災だと石井教授は語る。

地震や津波の影響によって、多くの発電所が運転を止めざるを得なくなった。以降、エネルギーを分散する方法の一つとして、再生可能エネルギーの導入が推進されたという。

ただ、再生可能エネルギーは導入費用が高く、初期投資を回収するのが難しいという課題があった。そのため、国は2012年から再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)を開始。太陽光発電や風力発電などで作られた電気を一定期間固定された価格で買い取るよう、特定の電力事業者に義務付けたのだ。

これにより、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、特に太陽光発電を導入するケースが増えたのだが、それは新たな課題を生み出したのである。

国内の太陽光発電導入量の推移。2011年以降、飛躍的に増加していることが分かる

画像出典:資源エネルギー庁HP『再生可能エネルギーとは』より

電気は作る、送る、使うという順序で消費される。これまでの電力システムでは、火力発電所のような大規模施設で効率よく大量に電気が作られ、それが変電所で電圧を下げながら送配電線を通してオフィスや家庭といった需要家(消費者)に送られ、使われていた。

従来はこれを前提に、効率よく発電所から需要家まで届くように電力ネットワーク(発電所、変電所、送電線、配電線など発電・送電網の総称)が設計されていた。しかし、再生可能エネルギーの設備が間に入ると、途中に発電所ができるため、電圧を上げる原因になる。つまり、想定していない事態が起こってしまうのだ。

「これを防ぎながら電力システムを最適化するためには、従来とは違った考え方が必要になります。これも既にある程度の形が見えていて、今どのやり方にすべきか検討されている最中です」

「FITの影響は大きかった。開始してから2年程度の間で、爆発的に太陽光発電の導入が増えました」

また、天候に左右される再生可能エネルギーは、発電量が変動するのがネックとされていた。そして、その発電量は原則コントロールしないことを前提に運用されてきている。

「この問題ですが、法改正により大規模な太陽光発電施設などの発電量をコントロールしていいようになり、また電気自動車(EV)などの普及で蓄電池のコストが下がって、電気をつくり過ぎてもためられるようになりつつあります。ネックであった部分も、10年前に比べれば状況は大きく改善されているでしょう」

つまり、今後の電力システムにおいては、リスク回避の観点からそもそも再生可能エネルギーの発電所を大量に組み込むことを想定しており、課題であった不安定さも、コントロールするための制度や技術がアップデートされてきている。

こうした背景から、新型コロナによる影響程度の需要変化であれば、現状の電力システムの方向性が大きく変更されるようなことはないのだという。

再生可能エネルギーは新型コロナで再加速するか

ただ、電力システムへの直接的な影響はないにせよ、新型コロナによる影響が全くないわけではない。

「特に緊急事態宣言が発令されていた4、5月に、飛行機の便数が激減し、車で移動するという機会も減りました。化石燃料を使う機会が減り、それにより二酸化炭素の排出量も期せずして削減できたのです」

国際エネルギー機関(IEA)も4月末、2020年の世界における二酸化炭素の排出量が前年比で8%も減少するという推計を発表している。新型コロナが思わぬところに影響を及ぼした。

「欧州ではこの状況を受けて、再生可能エネルギーの普及目標値を上方修正し、新たな事業の創出もにらみながら景気を刺激していこうという議論が始まっています」

日本でも同様の議論があれば、再生可能エネルギーの普及が再加速する可能性がある。もしそうなれば、新型コロナを契機とする国内のエネルギー戦略の変化として、再生可能エネルギー導入のための技術開発や環境整備が大きく進展するかもしれない。

太陽光発電など発電設備で作られる電気は直流。電気器具を使用するにはパワーコンディショナーを通して交流に変換する必要がある。石井教授も研究所にあるパワーコンディショナー(写真左上)を使い、日々研究を進めている

「もっと視点を広げながら、再生可能エネルギーを活用できる範囲を拡大したいと思っています」

石井教授がそう考えるようになったのは、新型コロナよりも前。近年、日本各地を襲っている集中豪雨や台風による被害を目の当たりにしたからだという。

後編では、石井教授が考える、災害に対するレジリエンス(柔軟性、回復力)の強化と再生可能エネルギーの主電源化を組み合わせた、次世代の電力システムに迫る。

<2020年9月10日(木)配信の【後編】に続く>
豪雨や台風への対策を強化!日本が進める災害に強い電力システムの可能性

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