特集
夏のお出かけスポットエネルギー事情

世界最高水準の発電システム! 川崎火力発電所のエネルギー施策に迫る

限られた資源から効率よく電気を作るためには

水族館、国立公園と続けてきた“お出かけスポットのエネルギー”を深掘りする本特集。ラストは、子どもから大人まで根強い人気を誇る“工場見学”を取り上げる。訪れたのは、世界最高水準の高効率発電システムを持つ株式会社JERAの「川崎火力発電所」。普段から学校など団体の見学を受け付けているという同発電所で、その設備について聞いた。また、同じ京浜地帯の横浜火力発電所構内で展開されるイチゴのテーマパーク「東京ストロベリーパーク」も合わせてレポートする。

限りある資源を有効活用するために

川崎火力発電所が誕生したのは、1961(昭和36)年。

東京ドーム6個分に相当する、およそ28万m2という広大な敷地に、東京電力(現在は株式会社JERAに移管)最大の石炭火力発電所が設置された。その後、1972(昭和47)年には環境課題に対応すべく、日本で初めて燃料をナフサ(原油を分留して得られる軽質油)に、さらに1984(昭和59)年には液化天然ガス(以下、LNG)に転換。

今も首都圏にあって重要な火力発電所として運転を続けている。

川崎火力発電所の中央操作室。4人1班体制で、24時間2交代制で対応している。所員約67名、協力会社約120名にて日々の運転を行っている

「電力会社として地球環境を守りながら、人間社会に必要なエネルギーを確保しなければなりません。つまり低炭素社会の実現を目指しながら、電力の供給と需要のバランスを取ることを一体化させた取り組みが必要です。その一つが世界最高水準の高効率発電を実現することでした」

今回、取材に応じてくれたのは川崎火力発電所広報グループの山下美紀さんと大熊和さん。普段から川崎火力発電所を見学に訪れる方への対応を担当しているという。普段通りのプログラムに沿って、設備などについて伺った。

「火力発電は電力需要の変動に柔軟に、そして安定的に供給しながら、CO2排出の原因となる化石燃料資源の消費を最小限に抑えることを目指す必要があります。そのために熱効率を高めることに努めているのです」

熱効率とは、燃料から得たエネルギーをどれだけ電気エネルギーに変えることができるかの割合。この値が高いほど省エネで、CO2排出量が低いということになる。

「川崎火力発電所が誕生した当初は、石炭を使い、汽力発電という蒸気の力だけでタービンを回す方式で発電をしていました。そのころの熱効率は38%程度。そのあとに汽力発電とガスタービンを合わせて発電する“コンバインドサイクル(複合)式”となり、50%に近づきました。さらに“アドバンスド・コンバインドサイクル”という改良型で53%を超え、続いて“モア・アドバンスド・コンバインドサイクル(MACC)”で59%、2016年に導入したMACCの進化系であるMACCIIで61%を達成。これにより現在“世界最高水準”となっています」

発電所の見学は映像を見ることからスタートし、その後中央操作室を窓越しに見学。さらにコンバインドサイクル発電の模型で、発電する仕組みを解説

MACCIIは高い熱効率にて運転し、燃料使用量とCO2排出量も30%ほど削減。環境保全という意味でも大きな進化を遂げている。

最先端技術が世界最高水準の高効率発電を生み出す

では、川崎火力発電所の発電システムを見ていこう。

まず燃料となるLNGは海外から船便で届けられる。産出国はオーストラリアやカタールなど世界各国となる。

発電所内を見学するときはヘルメットとイヤホンが不可欠。タービンから大音量が発せられるため、説明はイヤホンを通さなければ聞こえない環境だ

「3日に1回の頻度で世界中から届くLNGは、近隣の東扇島火力発電所にあるタンクで保管します。そこから直径50cmのパイプライン2本で川崎火力発電所まで運んでいます」

LNGはクリーンな燃料としても知られる。液化される段階で硫黄分が取り除かれるからだ。燃焼時にどうしても窒素酸化物が発生するが、それを取り除く装置をボイラー側に取り付けることで対応できるという。

「パイプラインを通ってきたLNGは、圧縮した空気の中で燃やされることで燃焼ガスを発生します。そして、その膨張力を使って発電機を回すガスタービン発電と、さらにその排ガスの熱を再利用して蒸気タービンを回す汽力発電を組み合わせ、効率的に電気を生み出しているのです」

と、ここまではコンバインドサイクル式に共通する仕組み。“世界最高水準”の秘密は、さらに細部まで作り込まれた内部構造にあった。

「ポイントはいくつかあります。大まかに説明すると、ガスタービンには回転する羽根が取り付けられています。その1段目の羽根には1600℃の燃焼ガスが当たってガスタービンを回します。ここに最初のポイントがあって、通常、鉄は約800℃で変形します。では、この羽根はなぜ平気なのか? 一つは材質。ニッケルベースの耐熱超合金でとても熱に強いのです。もう一つが冷却する仕組み。約200℃の内部を冷やしながら回転させているのです。MACCIIは1段通過するごとに約300℃ほど温度が下がります。最終的に約620℃まで下げたところで燃焼ガスを排熱回収ボイラーに取り込み、その中にある水を蒸気に変えて、今度は蒸気タービンを回すのです。その蒸気タービンには、MACCより大きい長さ54インチの羽根が付いています」

燃焼効率59%を達成したMACC(左)と、世界最高水準の熱効率61%を達成したMACCII(右)。外観からはその違いが分かりにくいが、燃焼温度の違いから熱効率に差が出る

高効率で電気エネルギーを作る川崎火力発電所は、省エネルギー、CO2削減に取り組んでいる。蒸気を近隣の工場に供給するのも、そんな取り組みの一つ。これは日本初の試みだという。

敷地内をグレーのパイプが通り、近隣の工場へと蒸気を供給している。写真左はその模型

「2010年から始まった事業ですが、それぞれの事業者が蒸気を作るよりも環境負荷を小さくすることができるんです。原油換算で試算すると、年間で約2万8000klの省エネを実現し、約6万3000tのCO2削減に役立っています」

MACCの排熱回収ボイラー。ガスタービンで発電した後の燃焼ガスの排熱を利用し、ボイラー内のパイプを流れる水を蒸気に変換する役割を担っている

電気というエネルギーを生み出す現場にあって、それをいかに効率よく、そして地球環境に配慮したシステムから作り出していくか──。その最前線である現場を、より多くの人に見てほしいという山下さんと大熊さん。

発電所内の解説を担当している大熊和さん

「MACCだと1時間に約60t、MACCIIだと約84tのLNGを使います。それが24時間稼働していて、しかも合計6台あります。東扇島火力発電所のLNG基地には約3日に1回、海を渡ってLNGが届けられています。そのような状況をご理解いただくことで、エネルギーを大切に使ってほしいということを、特にこれからの社会を担っていく世代に伝えたいですね」

電力会社が年間を通してイチゴを作るワケ

川崎火力発電所から車で15分ほど南西に位置する横浜火力発電所。

その構内に昨年4月にオープンしたのが「東京ストロベリーパーク」、電力会社が管理・運営する“イチゴ狩り園”だ。その設立の背景から特徴までを、同パークの海口彩夏さんに聞いた。

フラットな床などバリアフリーにも対応しているハウス、ストロベリーファーム

「なぜ電力会社が?と思われるかもしれませんが、背景としては地域の皆さまやその他のお客さまとの交流拠点を持ちたいという思いがありました。その際にエネルギーを活用したものは何かないかということで検討した結果、農業を掛け合わせた施設というコンセプトが生まれ、観光農園をスタートさせることになったんです」

ストロベリーファーム内の温度・湿度は全自動制御が施される。それによって一年を通して安定した生育環境を維持することが可能だ

そうして誕生したのが“ストロベリーファーム”だ。ここはオール電化による徹底した温度・湿度管理が行われるハウス。約3000m2の広さの中に約2万株が植わり、一年を通してイチゴ狩りを楽しむことができる。

「エネルギー源として使用しているのは、もちろん横浜火力発電所で作られた電気です。ハウスの中には、その電気を効率よく活用するための工夫を施しています。例えば、温度と湿度を管理するために、天井に設けたカーテンと空調システムを活用。そのコントロールは全て自動制御装置が行っています」

作られるイチゴの品種はさまざま。時季に合わせて最もおいしい旬のイチゴを楽しむことができるという。

イチゴ狩りが楽しめるのは、とちおとめ、あきひめ、よつぼし、UCアルビオンといった品種となる

またストロベリーファームの他にも、イチゴと親しむ施設がそろう。「ICHIGO LAB.」ではイチゴをより楽しむための研究過程を見学可能。料理作り体験ができる「STUIDiO SWiTCH」やお土産がそろう「Berry good shop」、さらにイタリアンを堪能できるビュッフェレストラン「PARK SIDE KITCHEN」などが並ぶ。

「オープンして1年が経過しました。やはり年間を通してイチゴが楽しめるということでご好評をいただいています。これからも皆さまに愛される施設づくりと、より多くのイチゴがとれるような技術革新を推進していきたいと思っています」

大井品川火力発電所、本社での火力発電所総括業務を経て、ストロベリーパークの担当となった海口さん

川崎火力発電所は熱効率を最大限にまで高め、そこで生まれた蒸気を近隣の工場に供給。横浜火力発電所では電気と農業を融合させてイチゴを楽しむというユニークな取り組み。

川崎火力発電所は団体見学のみだが、ストロベリーパークは個人でも楽しめる。電気を作りながら副次的な効果まで生み出す現場に足を運び、エネルギーの大切さを感じてみてはいかがだろうか。

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