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2021.09.15
陸海空を自在に結ぶ! 品川・巨大な駅チカ倉庫から始まるモーダルシフト
マルチテナント型物流施設「東京レールゲート」で鴻池運輸株式会社が描く物流の未来
トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、より環境負荷の少ない鉄道や船舶の利用へと効率よく転換させるモーダルシフト──。2020年、この動きをさらに本格化させるべく、東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)直結という優れた立地の流通拠点「コウノイケ・レールゲート」を開設したのが物流業界の老舗・鴻池運輸株式会社だ。同所(東京レールゲート営業所)の大西英生所長と、営業部の城 晴彦部長に物流の現在、そして未来について聞いた。
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物流業の責務である“安定”をより強固とする拠点へ
国土交通省によると、1tの貨物を1km運ぶ際に排出されるCO2の量は、トラック(営業用貨物車含む)だと225gであるのに対し、鉄道は18g(約1/13)、船舶では41g(約1/5)と、鉄道利用では92%、船舶利用なら82%もCO2排出量を削減することができると指摘している。
「CO2削減は現在、どの企業にとっても重要なテーマの一つです。われわれもそれを常に意識しながら新たな可能性を追求してまいりました。その中で、近年有効だと叫ばれているモーダルシフトに着目することも必然でした。2017~18年から本施設設立を見据えた話し合いを重ね、昨年無事にオープンさせることができ、やっとモーダルシフトの本格的なスタートラインに立てたところです」(城 晴彦部長)。
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東京レールゲートWEST棟の6階に入る「コウノイケ・レールゲート」。東京貨物ターミナル駅に面した施設には、24時間全国よりさまざまなコンテナが到着。荷物の上げ下ろしが行われる
自動車輸送が主体であった鴻池運輸がモーダルシフトを進める上で、鉄道との密接な連携、その拠点設置は重要課題。特に自動車から鉄道への積み替えは、拠点次第ではその間の移動が効率やコストを圧迫しかねない。
それが、東京貨物ターミナル駅に直結するマルチテナント型物流施設「東京レールゲート WEST」に拠点を得たことで、荷物の集約・一時保管から鉄道、船舶、空輸、そしてトラックを組み合わせた、状況に適した輸送が可能となった。
※全国最大の貨物駅・東京貨物ターミナル駅構内の大型物流施設「東京レールゲート」について『進化する“モーダルシフトの結節点”! JR貨物が見据える長期ビジョンとは』
「われわれ物流業の責務は、お客さまからお預かりした大事な荷物を、確実に届け先に運ぶという“安定”です。より安定を確かなものとしつつ、モーダルシフトを進める意味でも東京レールゲート内に『コウノイケ・レールゲート』が開設できたことは、大きな一歩になると思っています」(城氏)
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「モーダルシフトを推進することによって、安定した物流の実現に加えて環境への取り組みが同時にできることに意義を感じる」と城氏
東京レールゲート営業所の大西英生所長は、この拠点が稼働したことのメリットをさらに補足する。
「例えば、お客さまから荷物を運ぶ依頼を受けた場合、従来はトラック輸送が主でしたが、『鉄道でより多く一度に運べますよ』『そのルートに強い船舶がまだ空いています』などのご提案が可能になりました。私たちにとってのモーダルシフトは、安定した物流ということを第一に、ここを拠点に適した輸送手段をきっちりと使い分けることだと考えています。
天候や荷物のボリューム・形態、リードタイムなどを加味し、輸送プランをご提案しています。特に近年は天候が非常に読みづらく、水害や土砂災害などの情報は常にチェックし、最悪の状態までを想定しています。実は鉄道、船舶に比べてトラックは柔軟にルートを変更できることで自然災害の影響を受けにくく、モーダルシフトを推進することはトラックの効果的な活用にもつながっているんです」
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「モーダルシフトを進めていく上で、やはりどの業者も使いたい鉄道区間は決まってきていて、非常に混み合って空きコンテナが取りづらい問題が出てきています」(大西氏)
東京貨物ターミナル駅直結の立地をフル活用
現在、モーダルシフトが最も盛んな鉄道区間は東京⇔九州間などで、この区間は非常に混み合っているそうだ。
「この区間のトラックと鉄道はほぼ同じ所要時間で到着します。しかし実際に運べる量は、トラックと比べ貨物列車の方がはるかに多いというのが利点です」(城氏)
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コウノイケ・レールゲートから望む東京貨物ターミナル駅。物流会社にとって各地から集荷された荷物をこの距離感で適時、貨物列車へ運べるのは駅チカ倉庫ならではのメリット
実際にモーダルシフトの活用例を聞かせてもらった。
「ある荷主のメーカーさまは40フィートコンテナ(長さ12.192m、幅2.438m、高さ2.591m)をトラックで都内から東北北部まで運んでいたのですが、人員不足から輸送が難しくなりました。そこでコンテナの荷物をコウノイケ・レールゲートに一度運び、鉄道コンテナに詰め替えて東北の貨物ターミナルまで運ぶようになりました。東京貨物ターミナル駅と直結しているこの立地のおかげと言えますね。
また、別の荷主は自社製品の輸送にモーダルシフトを既に採用していて、静岡から北海道まで鉄道で運んでいたのですが、ある時期に東北周辺での豪雨の影響で荷物が予定通りに届けられない事例が起きました。そこで現在はコウノイケ・レールゲートでいったんお預かりして、天候が良ければ鉄道で、荷物が多ければ船舶で、天候が悪くなりそうならトラックで…と臨機応変な輸送のお手伝いをさせていただいています」(大西氏)
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鴻池運輸はロゴの描かれた12および31フィートコンテナを所有。貨物列車に積んで走る際の宣伝効果も見込める
「JR貨物さまとの密な連携も可能となり、ここに拠点があることで私たちのできることが広がっている実感は日々高まっています」(大西氏)
押し寄せるもう一つの課題「2024年問題」
物流業界がモーダルシフトを推進する理由として、環境負荷の低減はもちろん大きな意義ではあるが、もう一つの問題がトラックドライバー不足。それに拍車をかける、いわゆる物流業界の「2024年問題」だ。
同年より、物流業界に向けて政府主導で実施される働き方改革によって、長時間労働などの働き方の見直しがなされる。現状でも、増えつつある物流量に反比例し人手不足が叫ばれる業界は今、体質改善を求められている。
※モーダルシフトの意義、いかに推進していくかについて『物流のドライバー不足解消を目指して! 国交省が取り組むモーダルシフトの意義と課題』
「コウノイケ・レールゲートの前に勤務していた営業所では、1日100台単位でトラックが不足するケースもありました。そういった事例を経験しモーダルシフトの必要性を痛感したのも事実です。物流の未来を率先して切り開かねばという思いでした」(大西氏)
「モーダルシフトでドライバー不足を解消し労働環境を改善していけば、長距離ドライバーの働き方改革にもつながると考えています。それによってドライバーが魅力的な職業として捉えられ、参入してくる若い世代も増えると信じています」(城氏)
全てが想定外となったコロナ禍でのオープン
コウノイケ・レールゲート開設からわずか6日後、新型コロナウイルスまん延防止の措置として1回目の緊急事態宣言が発令されている。「正直、想定とは大きく変わってしまいました」と大西氏は話す。
「コロナ以前は鉄道輸送が増えていたのですが、コロナ禍で全体的な貨物量が落ち込み、当初想定していたトラック不足の傾向から一時的に回復しつつある状況です。もちろん、今後も全く同じ状況かというとそうではないとは思いますが…今はコロナの動向と政府の方針をにらみつつ、といった感じです。
とはいえ、環境負荷の低減推進は高まる一方ですので、コロナは関係なく、そこはブレずに加速させていきたいと考えています」(大西氏)
また、コウノイケ・レールゲートに併設してオープンイノベーション拠点「鴻池技術研究所イノベーションセンター」も開所。ここでは、無人フォークリフト、ピッキングロボットをはじめとした、複数のロボットの実証実験やデモンストレーションを行っている。
「荷主であるメーカーさまの中には、工場や倉庫のオートメーション化を検討している企業も多いのです。私たちが現場で培ったノウハウを基に実証検証したロボットを見ていただきながら、お客さまと一緒に効率的な物流倉庫を創造するきっかけにしたいと考えて『鴻池技術研究所イノベーションセンター』を併設しました。モーダルシフトのご提案と併せて、お客さまの困り事に何を提供できるのかを常に考えています」(城氏)
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コウノイケ・レールゲートに隣接する鴻池技術研究所イノベーションセンター。オートメーション・ロボットが実際にデモを行う施設は、さまざまな企業も備えてはいるが、都心から離れた場所にある場合が多く、都内、かつ流通拠点に設置されているのは珍しい
創業140年。目まぐるしく変わっていく時代の中で、物流もどんどん近代化が進んでいったが、それをリードしてきた老舗・鴻池運輸が見据える物流の未来像とはどういったものか。
「コウノイケ・レールゲートに関して申しますと、コロナ禍の影響もあり実感としては、まだ2~3割しか活用しきれていません。もちろん私どもの努力不足も大いにあることは承知ですが、ここが本格稼働した際に、どれだけのお客さまのニーズに応えられ、喜んでいただけるようになるのかを考えると、楽しみで仕方ありません。鉄道輸送に取り組む時点で、わが社にとっても転換期であると思っていますので、今後もJR貨物さまと連携しながら、より良い方向を模索し、まい進していきたいですね」(大西氏)
「安定した物流というのはわれわれの責務です。近年の天候などの状況を鑑みても、トラックをはじめとして、鉄道、船舶、さまざまなモードを使い、ますます視野と規模を広げていかないと安定はしないと考えます」(城氏)
環境負荷の低減、2024年問題、そしてコロナ…多くの課題を抱えながらも「コウノイケ・レールゲート」を中心に広がりを見せる鴻池運輸のモーダルシフト。
「期待を超えなければ、仕事ではない」という力強いブランドプロミスを掲げた同グループならではのアプローチで、物流新時代の先端を走るトップランナーとなることに期待が高まる。
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