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フォーミュラE開催からZEVの普及へ。「ゼロエミッション東京」実現への期待

東京都で日本初開催となる市街地レースが開催されるワケ

2024年3月30日、日本で初開催となる「ABB FIAフォーミュラE世界選手権 Tokyo E-Prix」(以下、フォーミュラE東京大会)。その開催をバックアップしているのが東京都だ。世界のCO2排出量実質ゼロに貢献するプロジェクト「ゼロエミッション東京」実現に向け、あらゆる分野で脱炭素化を進めている東京都が、その普及の起爆剤になり得ると期待を寄せている。日本初となる市街地レースが東京都で開催される理由とは。

ZEVの普及に向けて

電気で動くフォーミュラカーが、東京の街中を疾走する――。それは2022年10月、フォーミュラE世界選手権(以下、フォーミュラE)を主催するフォーミュラEオペレーションズと東京都の間で開催協定が締結されたことで実現に向け、動き出した。東京都産業労働局産業・エネルギー政策部の計画担当課長・池田千賀子氏が都の役割を説明する。

「世界選手権という国際大会のため、東京都はホストシティーとして、安心・安全な大会に向けた支援が求められます。また、東京で公道を利用するレースは初めてであり、道路をコースとして使用するには、警察をはじめとする関係各所との調整が必要です。東京都は、それらの調整などサポートを行ってきました」

そうした支援に加え、都では関連イベントを開催し、大会の機運を盛り上げている。2024年1月18日にはPRイベントを都庁第一本庁舎で開催し、小池百合子都知事とフォーミュラEオペレーションズのジェフ・ドッズCEOも出席した。

「この日から1週間、東京ビッグサイト周辺の大会コースを体感できる運転シミュレーターを設置しましたが、多くの皆さんに体験いただき、初めて東京で行われる電気自動車(EV)のレースに関心を持っていただいたようです」

シミュレーターを体験する小池百合子都知事 

画像提供:東京都

「フォーミュラEはロンドン、ニューヨークやベルリンなど世界の主要都市で開催されており、かねてからフォーミュラEオペレーションズは東京でも開催したいという意向をお持ちでした。一方東京都は、2030年カーボンハーフ、2050年『ゼロエミッション東京』の実現に向け、あらゆる分野での脱炭素化を進めており、環境に優しいクルマである『ゼロエミッションビークル(ZEV)』の普及促進にも重点的に取り組んでいます。彼らの東京開催への思いと東京都の政策が一致したことで、今回の開催に至りました」

「ゼロエミッション東京」の実現に欠かせないZEVの普及

ゼロエミッション東京は、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える目標に貢献するため、都が2019年12月に発表した環境施策で、2050年のCO2排出量を実質ゼロにすることを目指している。実現には2030年までの行動が重要であることから、都内の温室効果ガス排出量を同年までに2000年比50%削減すること、再生可能エネルギーによる電力利用割合を50%程度まで高めることを数値目標に設定している。

その戦略の一つがZEVの普及なのだ。運輸部門は都内のCO2排出量の約2割を占め、その約8割は自動車に由来しているという。都は、それをゼロエミッション化することが大都市の責務だとしている。

ZEVとは、具体的にはEVやプラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)を指す。都はこれらZEVの普及を以下の3つの柱によって促進していると、説明する。

「1つ目は購入の補助。国の制度に上乗せして補助金を出しています。2つ目は充電設備などのインフラ整備、3つ目が認知度向上のための普及啓発です。これらの施策により、東京都におけるZEVの販売台数は伸びています」

2030年までに都内の乗用車新車販売台数に占めるZEVの割合を50%に、公共用急速充電器を1000基に引き上げることを目標に掲げております。

最近では郵便や宅配業者がEV化を進めるなど、商用車でも環境対策が進められており、都では商用分野でのZEV普及もあと押ししている。

「“働くZEV”は着実に増えてきています。現在、都内各地で水素を使う『燃料電池バス』が100台以上、燃料電池トラックが30台以上走っています。また、水素ステーションの整備も支援しております。」

ZEVは環境に優しいだけでない。大地震や台風の大型化など、近年は災害による被害が各地で増えているが、ZEVに備えられた電源用コンセントや外部給電器を利用することで、停電時にも活用できる。

「ZEVは“走る蓄電池”であり、バッテリーが大容量なので、一般的な家庭であれば数日分の電気を賄うことが可能です。太陽光発電設備のあるご家庭であれば、それをバッテリーにつなげることもできますし、災害時にも有用です。ご家庭でも事業所でも、電気を自分たちで発電して貯め、それを消費することが理想。そうすれば災害時の活用だけでなく、電力コストの効率化にもつながります」

見て、触れる機会を増やすことでZEV普及をあと押し

そして、普及のために欠かせないのは、3つ目の柱である普及啓発を継続的に行っていくことだ。都は2023年度に通年キャンペーン「TOKYO ZEV ACTION」を展開してきた。2023年7月には丸の内・行幸通りでイベントを開催。トークショーを行ったり、子どもが楽しくZEVや脱炭素の知識に触れることができる体験型コンテンツを用意したりした。

『TOKYO ZEV ACTION』イベントを楽しむ子どもたち

画像提供:東京都

また、学校での出張授業も行い、東京都立立川国際中等教育学校附属小学校で「電気自動車に関する実験講座」を開催したほか、東京都立総合工科高等学校で「EV特別出張講義」を実施した。

「子どもたちは、ZEV車両の蓄電・発電・走行の実験にとても興味津々で、熱心に話を聞いてくれました。それが保護者にも波及すると関心につながる。その延長に、次にクルマを買い換えるときはEVにしようとか、セットで太陽光発電も導入しようといった行動変容が起きることを期待しているのです。都では『HTT(電力をH:へらす、T:つくる、T:ためる)』をキーワードにエネルギー政策を推進しており、EVと太陽光発電設備を同時に購入すると補助金が上乗せされる支援策も用意しています」

フォーミュラE東京大会の開催は、TOKYO ZEV ACTIONにとっても大きなチャンスであると都は捉えている。2023年10月には、東京ビッグサイトで開かれた「Japan Mobility Show」内でフォーミュラE車両と共にZEVの試乗を行った。

「フォーミュラE をアピールすることによって、ZEVが環境に優しいだけでなく、かっこよくて近未来的だというイメージの醸成にもつながります。それがゼロエミッションやZEVに触れるきっかけになってくれればいいと思っています」

国内メーカーとして参加する日産の電動レーシングカー

画像提供:東京都

そしてレース当日には、TOKYO ZEV ACTIONの集大成となるイベントを行う予定だ。

「3月30日と31日に東京ビッグサイトで『E-Tokyo Festival2024』を開催し、30日には多くの方々にパブリックビューイングでフォーミュラEのレースを観戦していただく予定です。ZEVの展示も行いますし、モビリティ体験や音楽ライブなど、ご家族連れや若者も楽しめるさまざまなコンテンツを用意しております。フォーミュラE東京大会をTOKYO ZEV ACTION最大のイベントと位置付け、ZEV普及の起爆剤となることを願っています」

フォーミュラE東京大会への期待は大きいが、一過性ではなく、継続することが大事だと強調する。

「ZEV の普及やゼロエミッションに向けた活動は、続けていくことが重要です。もし来年もフォーミュラE東京大会が開催されれば、引き続き支援していきたいです」

東京都では「ZEVの普及」「ゼロエミッション東京」という目標に向けて、さまざまな施策を展開している。その認知度向上に向けた起爆剤の一つが、今回のフォーミュラE東京大会の開催だ。

チケットは発売当日にソールドアウトとなるなど、大会が近づくにつれて注目度も高まっている。関連イベントも含めて、今大会をきっかけにZEVへの興味・関心が高まり、さらなる普及につながるか。期待が高まる。

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