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街中をレーシングカーが駆け抜ける! 日本初開催となる「フォーミュラE」の魅力とは?

モータージャーナリストが語るEVならではの可能性

「EVのフォーミュラ1」とも称され、2014年9月にスタートした「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」。モータースポーツ界に新風を巻き起こすその魅力とは何か? 日本での初開催を前に、モータージャーナリストの小川フミオ氏にその期待値を聞いた。

日本初開催となるフォーミュラE

2024年3月30日、日本初となる公道レース世界選手権「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」(以下、フォーミュラE)が東京・有明で開催される。フォーミュラEとは、国際自動車連盟(以下、FIA)が主催する電気自動車のフォーミュラマシン(一定規格のレーシングカー)で行われる公道自動車レースシリーズだ。

いわゆるF1(フォーミュラ1)のマシンが内燃機関としてガソリンエンジンを採用しているのに対して、フォーミュラEではバッテリーでモーターを動かすBEV(バッテリー式電気自動車)が最高速度約320km/hという世界でしのぎを削っている。

フォーミュラEは、2012年にFIAがシリーズ設立を発表(レース初開催は2014年)。1シーズンにつき十数ラウンドが開催されており、2020-2021年の第7シーズンからは世界選手権となった。それぞれのレースは「E-Prix」と呼ばれ、今回の東京開催は「Tokyo E-Prix」(シーズン10ラウンド5)として国内外から注目を集めている。

フォーミュラEシーズン10は2024年1月から7月にかけて、世界中で開催される

写真:Shutterstock

現在、フォーミュラEに参戦するマニュファクチャラー(自動車メーカー)はポルシェ、ジャガー、マセラティといった世界的メーカーが数多く並んでおり、日本からも日産自動車が参戦している。「Tokyo E-Prix」は日本で公道を使った初めてのレースイベントとあって、モータースポーツファンからの期待も大きい。

BEVによる世界的なレースイベントということもあり、東京都もフォーミュラEの開催に力を入れている。東京都は2050年までにCO2の排出実質ゼロを目指すゼロエミッションに向けた起爆剤の一つとして、フォーミュラEを挙げている。

都心近くで本格的なモータースポーツに触れられる絶好の機会

フォーミュラEでは、シャシーやタイヤ、フロントサスペンションに加えて、バッテリーに至るまでワンメイク(同一規格)レギュレーションを採用。一方で、モーターやギアボックス、インバーターといったリア部分は各チームの独自開発だ。2022-2023年シーズンから第3世代となるGen3マシンが導入されたことでバッテリーの最大出力は350kWにまで上がり、最高速度320km/hを実現した。

モータージャーナリストの小川フミオ氏は、フォーミュラEのレースとしての魅力を次のように話す。

「サーキットを前提としたF1と違い、公道レースはカーブなども多いため、見せ場を作るためには瞬間的にトルクを上げた加速が重要となります。その点、フォーミュラEはモーターの特性を生かして瞬間加速に優れるBEVに合ったコース設定となっていて、EVの加速力やその速さを直接見ることができます。EVへの一般的なイメージは、『エネルギー効率が良い』『環境に優しい』などが大半だと思います。しかし、フォーミュラEを観戦すればすごい速さやスポーティーさを目の当たりにして、EVに対するイメージが大きく変わるはずです」

BEVのイメージを覆す走行もフォーミュラEの魅力

写真:GettyImages

レース観戦を通じて、現状では世間に浸透し切っていないBEVのポテンシャルを新たに感じさせてくれるのだという。さらに、近年人気が高まる背景としてはBEVに対する注目度に加えて、イベント自体の企画力も大きいとする。

「2023年にロンドンで行われたe-Prixを取材した際に感じたのは、シティセンターに近い市街地で開催することによって、人々の週末の過ごし方の中にレース観戦が組み込まれているという設計が素晴らしいと感じました。レース自体は1時間ほどで終わりますが、ものすごいスピードで加速するマシン同士のつばぜり合いを十分に楽しめます。また、合間には歌やショーといった趣向も凝らされていて、一つのエンターテインメントになっているんです。これまで日本で生のレースを観戦するとなると、遠くのサーキットまで足を運ぶ必要がありましたが、都心近くで本格的なモータースポーツに触れられるというのはとても良い機会でしょう」

小川氏が訪れたロンドン会場では、ジャガーのEVに乗ってプロドライバーの運転で実際のコースを回るアトラクションなども設けられていたという。「Tokyo E-Prix」会場では、音楽のライブステージやフォーミュラEのコースを再現したレーシングシミュレーター、ドライバーサイン会の他、キッズエリアやフードコートも展開予定だ。

フォーミュラEはこうしたエンターテインメント性でも人気を博していて、かつてはサポートレース(副次的なイベント)としてAIによる自動運転車が競い合う「ROBORACE(ロボレース)」も検討・模索していた。ロボレースは2020年にシーズンベータを実施して現在はプログラム終了とされているが、BEVを活用したこうした挑戦的な企画もまた一つの魅力といえるだろう。

電気自動車の技術発展にも期待

さらにフォーミュラEは、BEVの技術発展といった点でも期待がかかる。「レースは走る実験室」とは自動車メーカーの本田技研工業創業者・本田宗一郎の言葉だが、フォーミュラEもまた電気自動車に関する新技術の試験場と目されている面がある。小川氏は、ジャガーの担当者が「フォーミュラEは電気自動車の実験を行う場」と語っていたことを明かす。

一方で、小川氏はレースによって研究・発展した技術がすぐに一般化するといった理想像に対し、冷静な目を向ける。

「確かにフェラーリやマセラティなどは、F1の一部の技術を量産車に反映していると公言しています。しかし、レーシングカーと量産車に求められるスペックは大きく違うため、レーシングカーの技術が量産車に直接的に反映されているかというと断言は難しいです。ただし、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する電気自動車特有の“回生ブレーキ”技術をはじめ、インバーター技術であったりバッテリーの耐久性、急速充電機構であったりといった技術が、レースを通じて今後も発展していく可能性は大いにあると思います」

フォーミュラEの可能性について語るモータージャーナリストの小川フミオ氏

フォーミュラEは、日本では普段見ることができない最先端のBEVのすごさを目の当たりにできる貴重な機会だ。日本初となる公道レースということで、都心で開催される新たなエンターテインメントイベントとして楽しむもよし。観戦を通じて、ゼロエミッション社会における自動車と街の関係に思いを馳せるのもまた一興だろう。

続く本特集第2週では、フォーミュラEに国内メーカーで唯一参戦する日産に、参戦に至る経緯や狙いといった話を聞き、つまびらかにしていく。

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