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データセンター浸透で加速する ワット・ビット連携

100%再エネで稼働! 洋上浮体型データセンターが秘める可能性

日本郵船、NTTファシリティーズらが切り開く海上デジタルインフラの未来

データセンター(以下、DC)の需要が増す一方で、都心ではDCを稼働するための電力や建設用地をいかに確保するかという課題に直面している。そうした中、2026年3月よりDCを海上に設置し、100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)で稼働する実証実験が神奈川県横浜市で始まった。プロジェクトに参画する日本郵船株式会社の森福将之氏、大東鷹翔(おおひがし たかと)氏、株式会社NTTファシリティーズの児玉和之氏に話を伺った。

海運のノウハウを生かした新たなDCの実現へ

DCに必要な電力(ワット)を都市部に集中させず、再エネ由来のカーボンニュートラル(以下、CN)電源を有効活用し、情報通信インフラ(ビット)を地理的・空間的・時間的に柔軟に配置させる「ワット・ビット連携」。

未来に向けた国力の維持・増強に欠かせないDCを普及させつつ、GX(グリーントランスフォーメーション)と地域経済の両立を図る構想として期待されるが、現在は具体的な動きを加速させる推進力となる事例が求められる段階だ。

そうした中、世界最大級の輸送網を有し多種多様な船隊を保有・運航している日本郵船は近年、海運事業の知識・技術を生かした新たな事業領域に進出。「先端事業・宇宙事業開発チーム」が組織され、2022年にDCを洋上に設置するプロジェクトを立ち上げた。

‎同チームの洋上DCプロジェクト担当である森福氏が背景を説明する。

「DCは建設に際し、電力不足やCN化の必要性、土地の確保、建設コストの負担増などの課題を抱えています。これらを解決するソリューションとして洋上DCプロジェクトを立ち上げました」(森福氏)

「弊社は船舶のエンジンプラントを海水冷却するノウハウを有しており、DCを海上に設置することでサーバー冷却に活用できると考えました。また、“洋上浮体型”にすることで、地形や地盤に左右されず同じ設計図でどこの洋上でも設置できる利点もあり、短期間での普及も可能です」

ミニフロート(画像中央)上にコンテナ型DC(ミニフロート左端部)、太陽光発電および蓄電池設備(コンテナ型DC右隣)を設置

画像提供:日本郵船株式会社、株式会社NTTファリシティーズ

この着想にいち早く共鳴したのがNTTファシリティーズだ。

日本、北米、アジア太平洋エリアを中心に大規模DCの構築を手掛け、国内のDCの約7割の構築・運用に携わるが、「洋上DCは弊社にとっても初の試みでした」と同社ソリューション部 エネルギー部門 グリーン担当の児玉氏は話す。

「日本郵船さんのビジョンに共感し、まずは技術的な確認から始めようということで2022年より参画させていただきました。検討を進める中で、技術的にも十分可能であり、洋上DCの検討を通して得られる技術ノウハウは陸上のDCにフィードバックできる可能性に気付きました」

CNを進める横浜港で実証

実証実験は洋上浮体型DCとしてはアジア初、100%再エネ稼働は世界初となる。森福氏と同じく日本郵船先端事業・宇宙事業開発チームの大東氏は「商用電力系統に接続せず、再エネと蓄電池だけで稼働させる形態をとっています」と前置きし、次のように説明する。

「弊社にとって初めての挑戦ですので、複数の企業と協力しオープンイノベーションで取り組んでいます。弊社はプロジェクト全体を統括し、NTTファシリティーズさんには洋上DCの設計・構築・安定運用の技術検証を、風力・太陽光発電を扱う株式会社ユーラスエナジーホールディングスさんに再エネ100%で運用するオフグリッド型DCの技術検証を分担いただきました。株式会社三菱UFJ銀行さんにも賛同を得て資金面で協力をいただいています」

実証プラントは横浜港に設置された。

「横浜市は、横浜港と周辺地域を『カーボンニュートラルポート』として、さまざまなCN施策を進めていた中で、洋上DCのビジョンに共感いただき、横浜港を活用させていただくことになりました」(森福氏)‎

実証プラントは大さん橋や横浜税関など横浜港の主要な港湾施設が集まる中区海岸通の埠頭(ふとう)に設置(赤丸印)

画像提供:日本郵船株式会社、株式会社NTTファリシティーズ

実証実験は2026年3月25日にスタートし、2026年度末の終了をめどに実施中だ。実用化に向けて塩害や振動観点での稼働安定性やエネルギーマネジメント関連の検証などが行われる。

洋上DC実現に向けた検討項目

画像提供:日本郵船株式会社、株式会社NTTファリシティーズ

「海上での運用という点では設備の塩害、金属腐食対策が気になるかと思います。日本郵船が船舶の精密機械に施している空調コントロールやメンテナンス技術を転用しており、10年、20年と長期運用していくための術(すべ)を1年間で分析します」(大東氏)

嵐や波浪など海特有の気象にも、船舶同様に構造的な対策で災害リスクを下げている。

「船舶は沖合に出ていると津波や地震の影響は受けません。台風には海洋プラントへの船舶の係留技術を応用できます。将来的に沖合で建設予定のDCは外力に最も強い円柱状で、波も風もその力を受け流す形になり、構造的な対応で災害リスクを下げていきます」(森福氏)

本プロジェクトが設置を目指す円柱型の洋上浮体型DCの完成イメージ

画像提供:日本郵船株式会社、株式会社NTTファリシティーズ

こうした洋上浮体型DCは、船舶のように造船ドックで製造し、海上へ運ぶことが可能であるという。

「昨今、DCはプレファブリケーション(あらかじめ工場で製作・加工し、現地施工を減らす工法)が増えていますが、洋上DCはドックで各設備を組み上げて製造し、そのまま現地まで海上輸送ができるため現地での作業がほぼなく、工期も短縮できます」(児玉氏)

「洋上浮体型DCの需要は世界的に広がると考えており、日本で建設し輸出することで、国全体の産業活性化にも貢献できるのではないかと考えています」(児玉氏)

日本の造船業は長年厳しい国際競争にさらされる状況にあるが「洋上DCを地域の造船所で造ることで、地域活性に結び付く可能性もあるかもしれません」(森福氏)と話す。

洋上DC市場が地域産業を活性化させる未来もあり得るだろう。

2030年前後の設置を目指して

本プロジェクトは今後、実証実験の結果を受けて、実用化に向けて進みだす。

「円柱型の浮体型DCは2030年以降の設置を目指しており、逆算して考えると今後3~4年の間で幾つかのフェーズを達成する必要があります。‎ 急務ではありますが、それでも今から陸上で建設するより早く、低コストでのDC設置が可能です」(森福氏)

洋上浮体型DCの実用化へ向けた課題は、技術面よりも「『海の上にDCができるのか?』という既成概念を変えることだと思っています」と大東氏は話す。

「実証実験でデータを集めること、設置に関心を持たれた企業や自治体の方々に実証プラントへ訪れていただき『海の上にDCが設置できる』と実感してもらうことを着実に進めていく必要があると考えています」(大東氏)‎

「ワット・ビット連携」の観点からも本プロジェクトの貢献が大いに期待される。

「洋上浮体型DCは、社会課題解決型のプロジェクトであると考えています。都市圏のDC設置は昨今、稼働に必要な電力の確保が課題となっています。対して洋上DCは太陽光や洋上風力など地域の再エネ発電施設に隣接させることを見据えています。そうすることで既存の電力系統に大きな負荷をかけず、送電による電気のロスも抑えられます。

また、地域の発電所では昨今、再エネ由来の電気がつくられても地元での需要が少なく、電気の出力制限を行うケースもあります。地域にDCが設置されることで電力需要が生まれ、ワット・ビット連携を推進する流れを生むことになると考えています」(森福氏)

2026年2月、本プロジェクトは「日本オープンイノベーション大賞 総務大臣賞」を受賞。デジタルインフラの成長と地球環境の保全を両立する革新的な取り組みとして注目が高まっている

画像提供:日本郵船株式会社、株式会社NTTファリシティーズ

“陸のDC”とはほぼ無縁だった“海の企業”の挑戦が、DC業界のパラダイムシフトを巻き起こし、そして国全体のデジタル産業の活性化を推し進めていく──。

既成概念を打ち破る、海に浮かぶデータセンター の“航海”を今後も見守っていきたい。

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