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2026.08.28
遊びながら社会貢献!「ピクトレ」がかなえる社会課題解決の新しいカタチ
維持も防災も! 開発チームが目指す誰でも参加“インフラの民主化”
電柱というインフラの維持に挑む社会課題解決型ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」。アプリ上の地図に表示される電柱を撮影して陣地を増やし、チーム同士で競い合うシンプルさ、そしてゲームを通して社会貢献ができる点で注目されている。本特集第2回は、引き続き運営するGrowth Ring Grid Pte.Ltd.(以下、GRG)共同代表取締役の鬼頭和希氏と、開発を担う株式会社Digital Entertainment Asset(以下、DEA)代表取締役社長の山田耕三氏に、ローンチから2年が経過した現在、ピクトレがどのような道を切り開いてきたか、そしてピクトレがもたらす「ゲーム×社会貢献」のさらなる可能性について聞く。
この記事のポイント
- ゲームを通じた社会貢献がプレーヤーの新たな価値になる
- 電柱以外にも広がる「インフラの民主化」
- 社会課題解決の鍵は「無関係な人」を巻き込むこと
- 第1回
- 第2回遊びながら社会貢献!「ピクトレ」がかなえる社会課題解決の新しいカタチ
- 「ゲームで切り開く社会課題解決」に戻る
「自分の行動が世界を少し良くしている」という報酬
ピクトレで撮影された電柱の写真は、撮影された地域を管轄する電力会社へ共有され、保守や修繕が必要なものがないかのチェックを行い、実際の作業に活用されている。
「ローンチ当初は、電柱の写真がたくさん集まるとそれだけ保守作業が必要な所が発生し、現場を担当する方々の負担が増えました。ですが、実際にそれらの作業を行うことで電線を起因とするトラブルも、火災の通報も減っています。こうした成果が出ていることが明確になったおかげで、一本一本巡視せずとも作業が必要な電柱が分かり、東京電力グループ内でも『うちの部門でも活用したい』という要望が挙がるようになり、良い循環が生まれています」(鬼頭氏)
電柱のメンテナンスが行き届くことは、プレーヤーにとっても小さな報酬となる。
例えば、蔓(つる)・蔦(つた)が絡まった電柱の写真を集めるイベントでは、送られてきた写真から危険度を判断し、蔓・蔦の伐採が行われた。プレーヤーは後日、メンテナンスされた電柱を見て「自分の撮った写真が実際の保守に生かされている」ことに気が付く。ゲームのために行った行動が、現実世界に生かされていることは「自分にもできることがある」という喜びにつながっていく。

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ピクトレは「防災チャンピオンシップ2026」を11月末まで開催。全国1741市区町村の自治体対抗イベントで、市民が街中の防災設備(消火栓・AED・避難所など)を撮影・投稿し、自治体も把握し切れていない最新の防災インフラ情報を可視化する
画像提供:株式会社 Digital Entertainment Asset
「そここそが、このゲームのプレーヤー最大の“快感”。勝負に勝つとか、レアアイテムが手に入るといった設計のゲームはたくさんあります。ピクトレはそれだけではなく、『自分の行動によって世界がより良い方向に変わる』ことを感じられるゲーム。ポイントを稼ぐというのが最初のモチベーションではありながらも、他者から褒められる、感謝されるという体験価値がある点で、新しいものを世に送り出せたと感じています」(山田氏)
ピクトレで広がる、企業の枠を超えた取り組み
ピクトレは電柱を通したインフラ維持のためのゲームだが、このノウハウを東京電力グループ外へ展開し、既に全国のさまざまな企業と連携が行われている。
「ピクトレは東京電力グループの業務改善ツールとしての面だけではないと考えています。GRGでは『インフラの民主化』を掲げていて、電柱の保守はその第一歩に過ぎません。道路がくぼんでいたり、街灯が切れていたり。自分が住んでいるエリアで起こる困り事に対して、住民がそのメンテナンスに自然と参加できる世界を目指しているんです。そういった面では、防災にもつながる部分が非常に大きいと思います」(鬼頭氏)

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今年7月に開催されたアジア最大級のテクノロジーカンファレンス「WebX 2026」では、山田氏がモデレーターを務めパネルディスカッションを開催。鬼頭氏も参加し経済産業省、自治体、企業の代表とインフラの“次の10年”を熱く語り合った
画像提供:株式会社 Digital Entertainment Asset
鬼頭氏はそう前置きし、2026年2月、沖縄電力株式会社とNTT西日本株式会社との協働で実施された「ぼくとわたしの電柱合戦 in沖縄」を例に挙げる。本イベントでは、通信会社と電力会社がこれまで個別に行ってきた電柱などのインフラ点検を連携、重複作業を省きながら効率的・高品質な点検体制を構築する“共同点検”に取り組んだ。

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「ぼくとわたしの電柱合戦 in沖縄」では、電力会社と通信会社が同じ仕組みの下で効率的に点検できる新たな共同点検モデルの実現性の検証が実施された
画像提供:株式会社 Digital Entertainment Asset
「電力会社が持っている電柱と通信会社が持っている電信柱、普通に暮らしている人にとっては見分けがつきませんよね。それなら、写真はAIによる判定で電柱と電信柱に振り分けができるし、区別なく撮ってもらってもいいのでは?と、NTT西日本さんとのコラボイベントを実施しました。
電力会社と通信会社の枠組み、地域の枠組みを超えた取り組みというのは、各社で模索しながらもなかなか実現できない部分です。それがピクトレというソリューションで実現できたのは、電力業界や通信業界の方にとって大きな一歩になりました」(鬼頭氏)
こうした企業間の枠組みを超えた取り組み事例は他にもあり、山田氏は、新潟県で実施された三菱電機株式会社とのカーブミラー点検を挙げる。
「プレーヤーの皆さんにカーブミラーを撮影していただき、点検に活用するという形でコラボレーションしました。三菱電機さんの社内では今回集まった情報やデータを整理して、活用するための実証もされていて、ピクトレを使ってさらに一歩進んでいけたと実感しています」(山田氏)

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今年1月、新潟市で「新潟市カーブミラー撮影ミッションinにいがた2km」を開催。ピクトレのゲームシステムがそのままカーブミラーの撮影・保守点検に生かされた
画像提供:株式会社 Digital Entertainment Asset
プレーヤーから集まるデータは、電柱やカーブミラーの写真だけではない。プレーヤー自身の行動データも蓄積されていく。従来、ゲーム開発においてはほとんどが不要なデータでもあるが、ピクトレではこうしたユーザーのデータにも活用の余地がある。
「ブロックチェーン技術などを使って、そのプレーヤーがどのくらいの電柱を撮影したのかといったデータの保存が可能で、例えばそれを“社会貢献度”の指標にすることもできます。ピクトレで電柱を2万本撮影したという人がいたら、即採用したいくらい(笑)。これを応用して、例えば防災拠点を回ってもらって『この地域では何人が防災拠点に行ったか』をデータ化し、避難訓練の計画に活用する、といったことも可能になります」
もちろん、まだまだ改善点や検討すべき材料は多い。だが、ピクトレという一つのゲームから、インフラ維持や防災への活用の道が少しずつではあるが見え始めており、そこに目を向ける企業や自治体も出てきている。
社会課題解決の鍵は、無関係な人を巻き込むこと
ゲームを通じた社会課題解決に可能性を見いだしている企業やスタートアップは多い。「EMIRAビジコン」でも、2025年は「エンタメ」、2026年は「ゲーム」を取り上げており、エネルギー問題とゲームを掛け合わせるアイデアが多く集まっている。
【参照】「ゲーム×エネルギー」をテーマにした多彩なビジネスアイデアが集結!
こうした流れについて、まさにそのトップを走る両氏はどう感じているのだろうか。
「ゲームを好んでプレーするという人は、世界で約30億人といわれています。反対に、残りの50億人はゲームしないわけです。その人たちを取り込むゲームがあれば、社会課題さえ解決できる革命を起こすこともできる。ピクトレはそれができるゲームだと思っています。そして、これからこうしたゲームを考案する人は増えます。そこで意識しておきたいのが、課題を解決しようとするときに、当事者間での押し付け合いにしてしまわないことです」(山田氏)

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「ゲームはどんなにレベルを上げても、レアアイテムを集めても、現実では何ももたらさない、無駄なものと考えている人も少なくありません。ピクトレはその概念を覆せると考えています」(鬼頭氏)
何かの課題に取り組むとき、自分がタスクを背負い込むことを避けて「それはそちらの仕事」と押し付け合いになることは多い。最も効果的なのは「無関係な人を巻き込むこと」だと山田氏は続ける。
「例えばピクトレでは、電柱の保守をするのに最も縁遠い人、つまり一般の人をイメージしました。電柱に興味もなく、もちろん作業をするわけでもない人です。でもそういう人たちは、たくさん道を歩いて、彼らのパワーが電柱の側に向いたなら、それは電柱の保守にすごくいい効果を生むのではないかと考え、ピクトレの構想へとつながったんです」

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「ピクトレのゲーム名は鬼頭さんが考えられたのですが、あえて『電柱』だけを想起させる言葉にならなかったのが功を奏していますね。電柱以外のインフラや社会課題ともコラボレーションしやすくて、いい名前だなと改めて感じています」(山田氏)
自分の世界の外側へ目を向けるという点で、鬼頭氏もそれに同調する。
「毎日同じ道を通って、同じ友人や同僚と会話をしていて、新しいものが生まれることはないと確信しています。あえてコンフォートゾーンを出て、わざと日常にエラーを起こすことは大切だなと感じていますし、だからこそ山田さんと出会い、ピクトレのような革新的なゲームを作れたのかなって」(鬼頭氏)
ゲーム内での価値を、現実世界でも通用する価値へと変換する。
無理だと思われてきたことが、Web3によって実現しつつある。
ゲームを楽しんでいるうちにインフラが守られ、社会がより良くなる。
そんな世界が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。
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