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速い・安い・環境に優しい! 世界で注目を集める次世代交通システム「SkyWay」

ドバイでの導入が決定! 電車やバスに取って代わる可能性のある未来のモビリティ

1964(昭和39)年の東海道新幹線開業から55年。現在では北海道から鹿児島までが新幹線でつながり、2027年にはリニア中央新幹線(リニアモーターカー)の開通も予定されている。そんな鉄道大国・日本においても、将来導入されるかもしれない新型交通システムの開発がベラルーシの新興企業・SkyWay社で進行中。ケーブルカーに似た仕組みで、現在実験段階ながらも時速150kmを実現(プロトタイプが運行中)し、なにより建設費を抑えられるのが特徴だ。世界から熱視線を向けられる新しい交通システムを紹介する。

シンプルさと高機能を兼ね備えた公共交通の未来モデル

次世代の乗り物として開発が進むリニアモーターカー。リニア中央新幹線の東京~名古屋間の開通は2027年、その先、大阪までの開通は最短で2037年が予定されている。営業運転速度は500km/hで、東京から名古屋まで約40分、大阪までをおよそ67分で結ぶ夢の高速鉄道だ。

日本でリニアモーターカーの研究・開発が始められたのは1962(昭和37)年。それから50年以上が経過した2014年に工事が認可され、いよいよ完成までのカウントダウンが始まった。

山梨リニア実験線を走るリニア中央新幹線。首都圏・中京圏・関西圏を約1時間で結ぶことで、人口約6500万人の巨大都市圏が完成する

(C)aouei / PIXTA(ピクスタ)

しかし、その巨額な建設費用、ルートの大半を占めるトンネル掘削での環境負荷やエネルギー効率など、問題視されている部分も少なくない。

国土交通大臣により決定された整備計画における東京~大阪間の工事費は約9兆300億円。路線の総延長距離は438kmの予定のため、1kmあたりの工事費は優に200億円を超える計算だ。

既に上海で実用化されている常電導リニア(一般的な電磁石による吸引力で浮上するリニアモーターカー)と違い、世界初の超電導リニア(強力な超電導電磁石によって10cmほどの大きな浮上高を得られるリニアモーターカー)となる日本の技術。安全性や速度は折り紙付きだが、その高い建設コストから他国で導入されるような動きはない。

一方で、その建設費の安さから世界各国の注目を集めている新しい交通システムがあることをご存じだろうか。

その名は「SkyWay」。

東欧のベラルーシに本社を構えるSkyWay社が開発した、ケーブルカーや懸垂式のモノレールに似た次世代型の交通システムだ。

SkyWayの概要を説明した動画。さまざまなレールを用い、多種多様な車両の運行が可能なことが見て分かる

建設費を抑えられる理由は、使用する資材の量を少なくしたため。車両の軽量化を行い、基礎やレールのデザインをシンプルかつ極限まで細くすることに成功。レールの建設コストはモノレールの約10分の1、鉄道の約2分の1で済むという。また、維持費や運行コストも安くすることができ、モノレールの約5分の1、鉄道の約2分の1と試算されている。

現在、同社が開発しているのは、市街地を走行するUrban、長距離の移動を想定したHigh-speed、貨物を運搬するCargoの3カテゴリー。その中で一番実用化に近いのが、レールにぶら下がるようにして走行するUrbanカテゴリーのユニカーやユニバスだ。

ユニカーは定員2~6名で、ユニバスは7~168名(連結した場合)。さまざまな大きさの車両を取りそろえており、いずれも空気力学に基づいた縦型の細長いデザインが特徴的だ。最も細いものでは、人が縦1列のみに着席するタイプの車両も製作。これは、可能な限り空気抵抗を減らすことで、エネルギー効率を向上させるための工夫だ。

車両上部に自社製造のバッテリーとモーターが内蔵されており、最高時速は約150km。1車両に乗車できる人数は少ないが、わずか2秒の車両間隔で無人運行できる点も強みと考えられている。

2つのレールを使って走行する大型タイプのユニバス。すべてのモデルで衝突防止センサーが導入されている

建設費の安さも魅力の一つだが、注目を浴びる理由はほかにもある。

まずは、環境面。

従来の鉄道工事と異なり、盛り土やトンネル掘削の必要がないため環境への負荷が少ない。また、使用する建設資材が少ないことも、資源保護の観点から高く評価されている。電気をエネルギーとして走行するため、もちろん排気ガスはゼロ。従来の電車よりも走行音を抑えられるため、周辺住民や動物への影響も少ないとされる。

次に、安全面。

独自の脱輪防止システムが設けられており、従来の鉄道に比べて約10倍の脱輪防止性能を実現したという(SkyWay社調べ)。また、車や歩行者の頭上を走行するため、物理的な接触事故を防ぐこともできる。地上を走行する電車に比べてテロや破壊行為の対象になりにくいという宣伝文句は、海外ならではの視点だ。

まずは中東のドバイ、そして公共交通の整備が求められる国へ

これまで、インドやオーストラリア、イタリアなどで導入に向けた動きはあったが、残念ながら条件面などが折り合わず実現には至っていなかった。

しかし、2019年4月にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイで建設の認可が下りたことから、世界初の商用運行が決定的に。ドバイ・インターナショナル・フィナンシャル・センターやダウンタウン、ビジネス・ベイなど約15kmの距離を21駅で結ぶ計画となっており、2030年までの開通へ向けて期待がますます高まるばかりだ。

また、現在開発中のHigh-speedカテゴリーも気になるところ。理論上の最高時速は500kmとしており、日本のリニア中央新幹線と同等。1万kmのレール敷設が可能とされ、もちろん同社開発のシンプルな工法を採用する予定だ。

High-speedカテゴリーのユニバスは、レール上を走行。現在の想定では、24人乗りが最大とされている

これが実現すれば、さらに注目を集めることは必至。新興国や発展途上国では公共交通のインフラ整備が遅れており、Urbanカテゴリーを含めて導入を検討する国が増えることが予想されている。

そのためにもまずは、着実な運行実績が求められるSkyWay。中東の金融センターでもあるドバイで成功を収めれば、他国からの注目度も上昇。一気に世界の交通システムを席巻していく可能性もあるだろう。

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