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肉の代わりにカイコ!?昆虫食スタートアップが開発した次世代食品「シルクフード」

あらゆる料理に使える可能性を秘めた食材「カイコ」は新たなタンパク源としての地位を築けるか

牛、豚、鶏など動物由来のタンパク質と置き換えることで食糧問題を解消し、環境負荷も減らすことができると期待されている「昆虫食」。中でも、誰でも気軽に食べられると期待される昆虫食を、日本のスタートアップが開発した。その原料は「カイコ」だ。おいしさにこだわったというその味は、深いコクと甘味があるという。肉の代替食品として注目される、この新たな食品の可能性とは?

ハンバーガーからケーキまで!カイコで作れる料理の数々

SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが世界各国で進む昨今、人類が直面している問題の一つが食糧危機だ。その危機を救う次世代食糧として注目される「昆虫食」の研究が、世界規模で活発な動きを見せている。

※昆虫食の今はこちら「実は超効率的なスーパーフード! 昆虫食文化が世界で広まるワケ」

前置きしておかなければならないのが、ここでいう昆虫食とは、日本で食べられるイナゴの佃煮のような伝統食や地域食とは異なり、「効率良く量産化できること」「一般に広く浸透させること」を目的としたものであるということ。昆虫を調理して食べるのではなく、加工して料理の原料として使うものが主流となる。

日本でも、ここ3年ほどの間に昆虫食のスタートアップ企業が増加。そのうちの一つ、エリー株式会社が京都大学や東京大学、大手食品メーカーと2018年から共同開発しているのが、カイコから生み出した機能性昆虫食「シルクフード」だ。

シルクフードの原料となるカイコは、明治時代以降、日本を支える重要な輸出産業だった

画像協力:エリー株式会社

そもそもカイコは、弥生時代には既に日本に伝わっていたとされる。養蚕業が最盛期となった1930年代には、農家の40%が行っていたが、近代化と共に衰退の一途をたどってきた。近年では、食用とは別のところで、養蚕業を再生させようという動きもある。

長い飼育の歴史があるカイコ。シルクフードは、このカイコを原料とした加工食品で、深いコク・甘味・余韻が風味の特徴だという。材料の50%をシルクフードに置き換えたパティを挟む「シルクバーガー」は、同社が開発したメニューの代表例。メニュー考案に携わったレストラン「Quindi(クインディ)」(代々木上原)の安藤曜磁シェフは、「主役にも引き立て役にもなれる可能性にあふれた食材」であると語り、その味にも自信をのぞかせる。

「シルクバーガー」と、ミネストローネにシルクフードを取り入れた「シルクスープ」のセット1100円(税込)

画像協力:エリー株式会社

2020年1月には、シルクフードを味わえるショップ「シルクフードラボ」が期間限定で表参道「COMMUNE」にオープン。「シルクバーガー」の他、パスタに混ぜ込んで揚げた「シルクスナック」や、ナッツのような風味を味わえる「シルクシフォンケーキ」など、さまざまな料理が提供されている。

表参道・COMMUNEで営業している「シルクフードラボ」。テイクアウトほか、オープンスペースで食べることも

画像協力:エリー株式会社

加工がしやすく栄養価も高い!カイコが優良食品になれる理由

エリーの代表取締役・梶栗隆弘氏は、「カイコは世界で唯一と言っていいほど量産化の手法が完全に確立されている稀有な昆虫であり、次世代の昆虫食に適した性質を持っている」と言う。

鳴いたり飛び跳ねたりせず、共食いもしないため、飼育がしやすく、省スペースでも問題がない。また、古くからタイやベトナム、韓国といった世界中で食べられてきた歴史を持ち、安全性が確認されている。そうした好条件に加えて、日本は世界で最もカイコの研究が進んでいる国であり、品種改良などがしやすい環境が整っているという。他の食用昆虫と比較すると、カイコを食材として展開するメリットは意外に多いのだ。

日本の農業の中で受け継がれてきた養蚕の技術が、次の時代に新しい価値を見出される可能性も

写真:photoAC

さらに、京都大学との共同研究から、タンパク質やビタミンなどの基本的な栄養素だけでなく、50種類を超える機能性成分が含有されていることが分かってきた。

現在、食用昆虫は、世界的に見てもシンプルにタンパク質を代替することが主流となっている。そこに機能性を付加できるとあれば頭一つ抜ける。エリーはこれまで、シルクフード普及のために味と見た目を追求してきたが、今後はこの機能性の高さでも優位性を打ち出していきたい考えだ。

昆虫を食べる人はどうしたら増える?近未来に訪れる食の未来

このようにおいしくて栄養価も高く、環境負荷も少ないなどメリットの多いシルクフード。次世代の食糧として理想的に思えるが、その普及において最大の障壁となるのが、昆虫食そのもののイメージの悪さだろう。では、どうすればそのネガティブを払拭し、普及を加速させることができるのか。梶栗氏は、「打開策は3つある」と言う。

1つ目は、味と見た目の改善。初歩的だが、おいしいものを作ること。そして虫の形を残さないように加工し、既存の料理に取り入れやすくするのが最も効果的だ。

2つ目は、継続した商品展開による認知の向上。一過性のブームで終わらせないように、昆虫食業界全体で取り組み、積極的に商品を展開していくことが重要となる。その中で、高品質なものを提供し続けられるかは大きな課題だ。

3つ目は、健康促進効果のエビデンスの確立。カイコを食べることが地球環境のためだけでなく、自分自身の健康につながることが示せれば効果は大きい。

小麦粉をシルクフードに置き換えた「シルクスナック」600円(税込)。シルクフードラボで食べられる

画像協力:エリー株式会社

シルクフードは、既に1つ目と2つ目の課題をクリアし、現在は3つ目の健康機能性について、京都大学や東京大学、大手食品メーカーと連携しながら研究を行っているという。

そして、その先に見据えている未来。それは「カイコをタンパク源の一つとして定着させること」だと梶栗氏。将来的にはカイコそのものを改良し、健康機能性や味に優れた独自の「食用蚕」を生み出すことを視野に入れているそうだ。

シルクフードのロゴは、フラグメントを率いてデザイン活動などを行うクリエイター・デザイナーの藤原ヒロシ氏が制作

画像協力:エリー株式会社

食糧問題はわれわれが思っているよりも、ずっと身近に迫っている。昆虫食を口にしてみることは、食に対する考え方を変えるいいきっかけになるかもしれない。

「シルクフードラボ」は新型コロナウイルスの影響で一時休業していたが、6月から再開し、2020年7月31日まで表参道で営業予定だ。まだまだ“キワモノ”のイメージが強い昆虫食だが、急に食べざるを得ない状況を迎えてしまう前に、一度体験してみるのもいいのではないだろうか。

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