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夏の“ニオイ”問題に終止符? 電気の力で抗菌する世界初の繊維を開発

株式会社村田製作所と帝人フロンティア株式会社がタッグ! 新型コロナウイルスへの有用性も検証中の新繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」

すっかりおなじみとなった消臭・抗菌機能付きのTシャツや靴下などは、においケアが必須のビジネスマンにとってはマストアイテムといっても過言ではない。そうした中、繊維に力を加えることで電気が生まれ、においの元凶の細菌を死滅させる技術が新開発されたという。半永久的に機能が持続することに加え、環境にも優しいというこの繊維、一刻も早い製品化が待たれること間違いなしだ。

後付けではなく繊維自体に抗菌機能を

汗をかきやすいこれからの季節。自分、または近くの人のにおいが気になった経験はないだろうか?

「意外」と感じる人も多いかもしれないが、汗自体のにおいは基本的に無臭と考えられている。かいた汗を放置すると皮脂の汚れや垢(あか)と混ざり合い、それらが細菌によって分解されることで嫌なにおいが生じているのだ。

また、汗をかいたことで衣服が湿り気を帯び、いわゆる“ニオイ戻り”が発生している可能性も高い。

“ニオイ戻り”とは、洗濯・乾燥後の衣服に付いた水分や汗が蒸発する際に生じるにおいのこと。繊維の奥に潜んでいたモラクセラ菌などの細菌が原因とされ、通常の洗濯だけでは除去しきれないのが特徴だ。

部屋干しを続けることも細菌を増やしてしまう一つの原因だが、天日干ししても死滅しない細菌は多いとされる

最近はスメルハラスメントという言葉が一般的になるなど、においに対する関心度は非常に高い。消臭・抗菌作用を銘打ったTシャツや靴下、下着類も数多く販売されており、今や当たり前の機能となりつつある。

しかし、それらの抗菌作用は無機系もしくは有機系の抗菌剤を繊維に対して後付けしたもので、洗濯やアイロンがけなどによって徐々に作用が低下してしまうことが明らかになっている。

そうした中、半永久的に抗菌作用を持続させる繊維が新開発されたという。

両社の技術を結集して作られた「PIECLEX」。社名と製品名を同じにしたことからも期待値の大きさがうかがえる

電子部品メーカーの村田製作所と繊維商社の帝人フロンティアが共同開発したのは、人の動きから得られる電気エネルギーを用いることにより抗菌性能を発揮する繊維「PIECLEX」。

両社はことし4月、同繊維の研究・開発および製造・販売を目的に株式会社ピエクレックスを合弁で設立している。

人の動きで電気を作り細菌を撃退

村田製作所が培ってきた圧電技術と帝人フロンティアが有する繊維技術を組み合わせることで完成した圧電繊維・PIECLEX。最大の特徴は、人が動くことによって繊維に生じる力(圧力)を電気に変える圧電技術を用い、繊維に付いた細菌を不活化させてしまうという点にある。

PIECLEXの原料はポリ乳酸(以下、PLA)と呼ばれるもので、植物から抽出したデンプンを発酵させて乳酸を作り結合させたもの。

植物由来であることによるカーボンニュートラル性に加え、微生物によって土に還(かえ)る生分解性を持つことから環境に優しい素材としても知られ、最近ではPLAから作られたゴミ袋やストローなども普及しつつある。

また、圧力を加えると電気エネルギーが発生する性質があることでも知られており、今回はその特性を保った繊維を作るという世界初の技術を開発した。

立つ、座る、歩くなど、人間が行う動作をエネルギー源にすることで、環境への負荷は一切かからない

電力が発生するといっても1V程度なので、ビビッと痛みを感じる静電気(約3000V)には遠く及ばない。また、繊維の内部で起電することから、人の肌では全く何も感じることはないという。

しかし、細菌を不活化させるには十分なエネルギーであり、PIECLEXの生地を使った抗菌性の試験では、その高い有用性を示している。

抗菌のメカニズムを表した繊維の断面図

黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性の試験結果を示した図。伸縮することで電気エネルギーが生まれ、抗菌性を発揮していることが分かる

また、PLAから作られた繊維のため圧力を加える限りは電気が生まれ、半永久的に抗菌効果を発揮。

伸縮することが多い靴下や肌着といったアパレルのほか、マスクや紙おむつといった衛生材向けに使用されることを想定しているという。

PIECLEXを用いて作られた靴下やマスク、スポーツウエアなど。繊維なので、あらゆる形への加工が容易だ

新型コロナウイルスなどに対する抗ウイルス性についても、現在検証中だというこのPIECLEX。

今年度中には国内アパレル業界向けに出荷を開始する予定。また、電気によって人の細胞に働きかける効果で、美容や医療界に貢献できる可能性も模索し、将来的には海外展開や産業用資材への導入も視野に2025年度には売上高100億円を目指しているとのこと。

部屋干し臭から夏の衣類のにおいまで、細菌が原因の嫌なにおいが解消される日も近いのかもしれない。

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