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スマホの充電が不要になる日も近い?世界初の固体型色素増感太陽電池をリコーが発売

ミニマムな自立型電源。微弱な光でも高効率に発電できる新しい太陽電池の可能性とは

社会全体で進められるIoT(モノのインターネット)化。ネットワークに接続すればいいと思いがちだが、より高度なIoTを実現するためには、内蔵機器用の「オフグリッド(自立型電源)」の高度化が求められている。そんな中、株式会社リコーが世界で初めて「固体型色素増感太陽電池」を一般向けに発売し、注目を集めている。

室内でも感度抜群!高効率で発電する新しい太陽電池

今、IoT化に欠かせない技術を支えるオフグリッドのテクノロジーに大きな期待が寄せられている。オフグリッドとは、送電網につなげずに電力を自給自足する状態のことを指す。最も身近なものが「電池」だが、発電・供給までを自立してできる電源の高度化が、IoT社会の実現に有用と考えられているのだ。

そんな中、2020年2月にリコーが、「RICOH EH DSSC」シリーズと銘打った固体型色素増感太陽電池を世界で初めて発売した。

「RICOH EH DSSC」シリーズは、「DSSC1719」「DSSC2832」「DSSC5284」の3種類が販売されている(写真は「DSSC5284」)。赤く見える部分が固体型色素増感太陽電池

色素増感太陽電池とは、色素が光を吸収することで発電するデバイスで、室内光など微弱な光でも高い発電性能がある。

これまでの色素増感太陽電池といえば、ヨウ素系の電解液を使用しているのが一般的だった。だが、液体を用いるため、経年劣化による電解液の揮発や腐食、破損による液漏れなど、実用化レベルに達するには、耐久性や安全面で乗り越えなければならない壁がいくつもあった。

そこでリコーは2014年に、電解液の代わりに固体の有機材料を用いた電解質を開発し、先の課題を解決した。さらに、室内光の波長に適した色素の選定や機器の構造を改良したことで発電効率が向上、ついに製品化にこぎ着けた。

リコーによると、標準的な白色LEDを照射した場合、発売した固体型色素増感太陽電池の発電効率は13.6μW/cm2(マイクロワット/平方センチメートル)。同様の条件で、現状トップレベルの性能とされているアモルファスシリコン太陽電池は6.5μW/cm2、従来の電解液型色素増感太陽電池でも8.4μW/cm2なので、太陽電池の性能を飛躍させたことになる。

太陽電池が家から電池をなくす?

3サイズで発売された「RICOH EH DSSC」シリーズは、サイズによって発電力や用途が異なっている。

横17mm×縦19mmと最小の「RICOH EH DSSC1719」はボタン電池で動くような超小型センサーなど、横28mm×縦32mmの「RICOH EH DSSC2832」はリモコンやセンサーといった乾電池を入れて使うものに適している。

横52mm×縦84mmと最大サイズである「RICOH EH DSSC5284」は、サイズが大きい分、発電出力も大きい。

リコー製のプロジェクター用リモコンに「RICOH EH DSSC2832」を搭載したプロトタイプ

この太陽電池が小型のリモコンから大型機器にまで幅広く使えるようになると、家庭の生活レベルでも大きな変化をもたらす可能性を秘めている。

例えば、時計や懐中電灯などの電池交換は不要になり、スマートフォンの充電もなくなる。PCを電源とした周辺機器のケーブル接続や、コンセントの場所である程度決まってしまう家電配置なども、“電源コードなし”なら自由度は飛躍的に増すだろう。

実はその可能性を体感できるプロダクトも、既に登場している。最も大きなサイズの「DSSC5284」が一足先にオフィス家具に搭載されてデビューしているのだ。2019年6月に発売されたバッテリー搭載型デスク「LOOPLINE T1(ループライン ティーワン)」が、それだ。

大成株式会社と株式会社デザインオフィス ラインが手掛けた「LOOPLINE T1」。天板上の赤いラインがリコー製の固体型色素増感太陽電池。デスクは3サイズで販売されており、最大サイズには48個の太陽電池が搭載されている

机上に設置された「RICOH EH DSSC」によって、デスク内蔵のモバイルバッテリー(取り外し可能)が充電される。会議での利用といった通常時はもちろんだが、災害時の停電などの状況下でも、スマートフォンやモバイルデバイスへの電力供給源として期待できる。

リコーの担当者によると、「RICOH EH DSSCシリーズ発売以降、既に100社を超える企業から声を掛けられています。今後、この固体型色素増感太陽電池が搭載されたさまざまな製品が増えていくことが予想されます」と、その将来性に自信を示している。

文字表示やシースルー化で家電が変わる

家電やデジタルデバイスなど、さまざまな製品に搭載されるためには、発電・供給といった機能だけでなく、搭載する製品のデザインを損なわない構造も必要になる。

今回発売された「RICOH EH DSSC」シリーズは定型化されたものだが、この固体型色素増感太陽電池には改造の余地がある。リコーは、製品名や企業名などの文字を表示する加工技術、製品の色に合わせて色を変えるカラー化技術など、さまざまな応用パターンを開発済みだという。

リコーが開発した環境センサー。「RICOH EH DSSC1719」によって電力を得て、温度、湿度、照度を計測することができる

デバイスに使用されている色素を変えることでさまざまな色が作り出せる

中でも注目したいのが、「シースルー化」だ。色の付いたデバイス越しでも文字や画像が透けて見えるため、スマートフォンやモニターなどの画面にそのまま搭載することができる。現時点では同系色の文字や図柄が同化して視認性が落ちてしまう問題があり、製品に採用されるまでには至っていないが、改善に期待したい。

色素は一定の光を透過するため、半透明でも発電量をそれほど落とさずに性能を維持できる

「スマートフォンは特に多くの人にとって一番身近にあり、使う頻度も高い。もしこの技術が実現して搭載されれば、バッテリー切れを気にせずに使えるようになります。また、例えば災害時の安否確認や救助要請、避難生活下の情報不足など、電源がないことで生じていた課題を解消できる可能性も期待できます」とリコー担当者。今後は、高い発電量を担保する新技術の研究開発を進めながら、さらなる透明化を目指していく。

日々の暮らしだけでなく、緊急時の電源としても活用できる可能性のある固体型色素増感太陽電池。近い将来、内蔵された家電やデジタルデバイスが続々と登場するかもしれない。

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