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カーボンニュートラルコンクリート誕生!? 日本の研究チームによる世界初の新技術とは

完全な資源循環に道筋! 何度でもリサイクルできる次世代コンクリート技術

コンクリート製造に必要不可欠なセメント──。生産工程において多くのCO2を排出し、その量はこれまでの人類の活動由来における総CO2排出量のおよそ5%に相当する約550億トンにも及ぶと推定されている。そのため、現在は建設分野のCO2排出量削減を目指した技術開発が世界的規模で進行中だ。そうした中、東京大学をはじめとする日本の研究グループが、完全リサイクル可能なカーボンニュートラルコンクリートの製造原理の開発に成功した。今後のCO2排出量削減に大きな貢献が期待される技術の詳細をお届けする。

長年ボトルネックになっていた技術課題を一挙に解決!

全世界で年間約45億トン(2015年時点)が生産されているセメント。近年、日本では高度経済成長期の建造物が老朽化してきており、その需要はことさら高い。

しかし、セメントは生産時における炭酸カルシウム(石灰石)の高温分解(約900~1100度でCO2と石灰に分解)や原材料輸送の燃料消費によって、1トンあたり約800kgものCO2を排出しているという。

これまでのセメント生産によって発生したCO2は薄く大気中に分散された状態で存在しているが、高濃度のCO2ガスと異なり希薄な状態のCO2の有効的な活用法は現在まで確立されていなかった。

また、インフラの再整備や人口減少に伴う都市開発をはじめ、近年、被害拡大が著しい自然災害によって大量発生するセメント・コンクリート系廃棄物も問題となっている。

セメント・コンクリート系廃棄物には当然ながらカルシウム(Ca)が含まれているため、本来であれば、それらを回収してセメント製造用のカルシウム源などに再利用したいところ。しかし、コンクリートとともに広く分散したカルシウムの有効利用も長きにわたり解決困難な技術課題とされ、いずれも技術革新が望まれていた。

現在のセメント・コンクリートに関する資源循環の現状

そうした中、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が取り組んでいる“日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する”ムーンショットプロジェクトにおいて「C4S(Calcium Carbonate Circulation System for Construction/建設分野の炭酸カルシウム循環システム)研究開発プロジェクト」の研究チームが、完全リサイクル可能なカーボンニュートラルコンクリートの基礎的な製造技術開発を発表した。

4月のオンライン発表会で成果報告をする野口貴文教授(東京大学)。「C4S研究開発プロジェクト」では、プロジェクトマネージャーを務めている

プロジェクトメンバーは東京大学をはじめ、北海道大学や太平洋セメント株式会社、東京理科大学、宇都宮大学、工学院大学、清水建設株式会社、増尾リサイクル株式会社という日本を代表する大学と企業で構成される。

大気中のCO2をコンクリート内に固定化!

「C4S研究開発プロジェクト」の開発原理担当である丸山一平教授(東京大学)を中心に開発された新たなコンクリートの製造原理。

その特徴は、日本全国どこにでもあるCaを含んだ使用済みコンクリートと大気中のCO2、水から製造可能で、何度でもリサイクルできること。加えて、使用済みコンクリートが生成過程で排出していたCO2と最大でほぼ同量のCO2を固定化できるという。

研究チームでは、この製造原理を用いて製造される硬化体を「CCC」(Calcium Carbonate Concrete/カルシウムカーボネートコンクリート)と名付けた。

CCCによるCO2とCaの資源循環の構図

公開された「CCC」。従来のセメント・コンクリートがCaを起点に低密度水和物(水分子を含む物質)を作る水和反応によって強度を増大させているのに対して、全く異なる硬化メカニズムでアプローチした

想定される製造方法は、まず使用済みコンクリートを砕いてCaを取り出しやすい状態で水槽に入れ、同時に空気中からCO2を取り込む。次に、水槽内のCaとCO2の石灰岩に戻す反応を利用して結合材となる炭酸カルシウムを生成。最後に砕いた使用済みコンクリートの粒子間に生成した炭酸カルシウムを析出(せきしゅつ)、硬化させるというもの。

今回、研究チームは原理実証を目的に、廃コンクリートを模したセメントペースト粉末と珪砂(けいしゃ)を骨材に、石灰岩とCO2ガスを用いて溶液を生成・結合させた「CCC」を製造した。

セメントペースト粉末を骨材とした「CCC」(左)と珪砂を骨材とした「CCC」(右)

炭酸カルシウムの空間充填(てん)の様子。今回の実験では、骨材質量に対して8%の炭酸カルシウムが結合材として隙間を埋めることを確認。つまり、炭酸カルシウムの生成はわずかでよく、使用済みコンクリートの大部分は骨材として再利用が可能になる

この「CCC」を観察・分析した結果、推定されるCO2の固定量は1m3の「CCC」に124kg以上。

これは、1m3のコンクリートが「CCC」に置き換われば、従来のセメント・コンクリートが排出していたCO2の大幅削減(生コンクリートの場合、推定される排出量は237kg/m3)と合わせて、トータルで320~460kg/m3のCO2マイナス効果が生じる計算だという。

このことから、仮に2050年に従来コンクリートの半分が「CCC」に置き換わった場合、年間約2000万トンのCO2排出量削減に加えて、年間約620万トンのCO2の固定化が可能になると見込んでいる。

将来的にコンクリートがカーボンニュートラルになる可能性をも秘めている今回の新たな技術開発。

社会実装の早期実現に向けて、さらなる研究開発の進展に期待したい。

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