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バイオマス廃棄物を電力源に! 世界初のエビ養殖システムの実証研究がスタート

バイオガスの固体酸化物形燃料電池(以下、SOFC) 導入で事業効率化、工学院大学がベトナムで実施

エビの養殖が急拡大したベトナムでは、その過程で発生するバイオマス廃棄物が大きな社会課題となっている。そうした中、バイオマス廃棄物を効率よく電力に変換して利活用する新たなシステムの実証研究がスタートした。クリーンかつ養殖生産量の最大化を目指す新たな取り組みを紹介する。

エビ養殖システムで社会課題を解消へ

年間貿易額は24兆円以上(2021年)に上り、日本の貿易総額の約15%を占めるなど関係の深いASEAN諸国。

近年は経済発展と人口増加が目覚ましく、今後のさらなる発展が期待される半面、それらを支えるために化石燃料の需要が増加しているのが実情だ。

また、経済活動に伴う廃棄物処理も課題とされ、特にベトナムの農業・水産養殖の中心地であるメコンデルタ地域では、農業残渣(ざんさ/稲わら、バガス=サトウキビを圧縮した後の搾りカス、レモングラス廃材など)や水産養殖池から排出される汚泥などのバイオマス廃棄物が社会課題として顕在化。SDGsの観点からも解決策の早期確立が求められている。

そうした中、2022年11月より工学院大学 先進工学部機械理工学科の白鳥祐介教授が、ベトナム・ティエンザン省にある養殖場で世界初となるバイオガスで作動するSOFCとIoTを用いたエビ養殖システムの実証研究を開始した。

2022年11月3日にベトナムで行われた実施者間による科学技術共同契約(ST)に関する署名式の様子

画像提供:工学院大学

なお今回の実証実験は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けた国際プロジェクト「地域のバイオマスを利用した省エネ型エビ養殖システム高度化実証研究(ベトナム)」の下で実施される。

バイオガスから高効率発電を可能にするSOFC

実証研究で使用されるエビ養殖システムは、バイオガスSOFCによる再生可能エネルギー由来のグリーン電力供給と、IoT水管理によるエビ増産システムが統合された循環型システムだ。

バイオガスで作動するSOFCとIoTセンサーの2つを組み合わせた世界初のエビ養殖システムの概要図

画像提供:工学院大学

グリーン電力供給の核を成すSOFCとは、セラミックス材料から成る高温作動(700~900℃)の燃料電池で、発電効率は数kWレベルの小規模発電でも約50%と極めて高い。

その特徴から、バイオガスを利用したオンサイト発電(敷地内に再生可能エネルギー電源を設置し、自家消費するモデル)技術として注目されている。

エビ養殖システムは、まず地域の未利用バイオマス(レモングラスの葉)とエビ養殖汚泥を樹脂製のメタン発酵槽に投入してバイオガスを製造。このバイオガスをSOFCに供給して高効率発電を行うことで、エビの育成に必要となる養殖池への空気供給の電力源としてグリーン電力の利用を目指す。

一方のエビ増産システムは、IoTによる養殖池の水質や養殖関連機器の常時監視・調整と、微細な気泡で溶存酸素濃度を高めるマイクロバブルディフューザーによって、エビの生存率・成長率を引き上げて養殖生産量の最大化を狙う。

エビ養殖システムが設置される養殖場

今回の取り組みについて白鳥教授は「養殖汚泥とバイオマス廃棄物で、発電とIoTを用いた制御によるエビ養殖の掛け合わせ実証研究は世界で初めてです。これによりバイオマス廃棄物を効率よく電力に変換し、利活用する仕組みが確立されれば、地域の持続的発展に貢献できるはずです」と語る。

社会課題を解消し、持続可能なエビ養殖システムの確立を目指す今回の実証研究の成功に期待したい。

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