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二酸化炭素をほぼ100%メタンに変換! 金属製自己触媒反応器を大阪大学が開発

レーザー金属3Dプリンティング技術と電気化学的表面処理を組み合わせて次世代触媒を作製

地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする、カーボンニュートラル。今や世界的な目標であり、日本でも2050年までの実現に向けて動きが加速している。そうした中で2023年6月、大阪大学はCO2を都市ガスなどの主成分であるメタン(CH4)にほぼ100%変換できる、金属製の自己触媒反応器(SCR:Self Catalytic Reactor)の開発に成功したと発表した。カーボンニュートラルへの貢献が期待される、新たな技術の中身に迫る。

CO2のメタン化が抱える課題

高密度でエネルギーを貯蔵する方法として期待されている、CO2のメタン化。これは、大気中のCO2を有用な化学工業原料に変換する、すなわちカーボンニュートラルを実現する方法の一つとしても有望視されている。

CO2は安定性が高く、メタン化するには大量のエネルギーの投入が必要となる。そのため一般的には、活性化エネルギーを下げて変換を促進できる、信頼性の高い触媒が必要となる。

これに対し現状では、粉末状の金属ナノ粒子担持触媒を充填した反応器が用いられている。しかし、既存の粉末状金属ナノ粒子担持触媒は表面エネルギーが高いため、過酷な環境下では凝集や表面構造の変化が起こり、不活性化してしまう点が問題となっている。また、化学プラントの省エネルギー化のためにも、新たな触媒形状の提案が求められている。

なお、工業的に利用されている触媒としてセラミックス製のハニカム触媒もあるが、それ自身は触媒機能を持たない。故に、金属ナノ粒子の担持(付着した状態で持っていること)は不可欠となっている。また、セラミックス製のハニカム触媒は、触媒層に温度分布が生じやすい。特に発熱反応ではホットスポットにより反応の熱暴走・触媒活性の低下が起こってしまい、反応の制御が困難という問題がある。

新たな触媒でほぼ100%メタン化に成功

こうした課題に対して2023年6月、大阪大学大学院工学研究科の森浩亮准教授、大学院生のKIM Hyojinさん、中野貴由教授、山下弘巳教授らの研究グループは、CO2をほぼ100%メタンに変換できる、金属製自己触媒反応器の開発に成功したと発表した。

研究グループは材料として、ニッケル、クロム、鉄、モリブデンなどが主成分で高温強度、耐酸化性、熱伝導性に優れ、宇宙航空用途などに使用されている固溶強化型合金「Hastelloy X」に着目。レーザー金属3Dプリンティング技術でチャンネル構造を付与し、電気化学的表面処理により触媒機能を示す活性金属を表面に露出させることで、触媒機能と反応管としての機能を併せ持った金属製の自己触媒反応器を作製した。

通常、レーザー金属3Dプリンティング技術で作製された反応管は触媒機能を示さないが、最適な印可電圧の下で電気化学的表面処理を施すと、触媒作用を示すニッケル金属を表面に露出させることができるのだ。

レーザー金属3Dプリンティング技術と作製された自己触媒反応管の概略図

この自己触媒反応器の触媒性能を、環境・エネルギー分野で注目されるCO2の資源化反応(温室効果ガスであるCO2を炭素原料とし、水素などと反応させることで、化学工業で有用な一酸化炭素やメタンなどへ変換すること)にて評価したところ、従来の触媒に比べて高い活性・選択制を示し、100%に近い選択制でメタンが得られたという。

また、400℃で数日間利用しても活性が変化しないほど極めて高い耐久性が示された。さらに、水酸化ナトリウム水溶液に浸すだけで自己溶解メカニズムによって表面の再構築が起こり、触媒活性が向上するという極めて特殊な現象も見いだされた。加えて、レーザー金属3Dプリンティング技術のスキャンストラテジーによって結晶方位が変化し、それによって触媒性能が変化することが示された。

作製された自己触媒反応管

カーボンニュートラル実現に向けて

今回開発された金属製の自己触媒反応器は、レーザー金属3Dプリンティング技術を利用することで多様な触媒プロセスに最適な構造を提案できることや、過酷な環境下においても安定性が高く触媒の交換が容易なバルク状(薄膜状態)であることなど、実用化触媒に不可欠な基礎要素を兼ね備えている。また、レーザー金属3Dプリンティング技術による多結晶から単結晶へのマイクロオーダーでの結晶方位・組織制御を駆使することで、触媒性能のカスタム制御の可能性を示している。

今後研究チームはまず、高温強度・熱伝導性に優れた金属材料と緻密な3D形状の造形が可能なレーザー金属3Dプリンティング技術を融合することで、本研究をさらに高活性・高選択制・高温耐久性を兼ね備えた次世代触媒へと発展させることを目標としている。そして最終的に、独自に蓄積した先導的なノウハウを基軸に、2050年におけるカーボンニュートラルを実現する技術へと発展させる考えだ。

このように、本研究成果は今後カーボンニュートラルを指向した触媒分野はもちろん、レーザー金属3Dプリンティング技術を基盤とした先進的なマテリアルサイエンス分野へも多大な波及効果をもたらすことが期待される。

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