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電動車開発が前進! シャープが新構造の積層型太陽電池で世界最高変換効率を達成

太陽電池モジュール技術の進歩を示す重要なマイルストーンに

シャープ株式会社は、世界最高の変換効率33.66%を達成する積層型太陽電池※1モジュールの開発に成功したと2023年10月下旬に発表した。化合物2接合型太陽電池モジュールをシリコン太陽電池モジュールと組み合わせ、異なる波長の光をより効率的にエネルギーへ変換することを可能にした本研究の意義と可能性をひもとく。
※1…種類(波長)の異なる太陽電池セルを組み合わせ、太陽光の波長を広範囲で吸収、変換効率を高める太陽電池の一種。多接合型、スタック型、タンデム型とも称される

求められる高効率&低コストの車載向け太陽電池

エネルギー需要の大半を化石燃料に依存する運輸業界は、二酸化炭素(CO2)排出量削減や大気汚染対策の一環として、電気自動車(EV)導入を加速させつつある。そうした取り組みの中で最大限の効果を得るために、再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来電源の電力供給、その関連技術革新が日々求められている。

また、EVやドローンなどの移動体は、太陽電池を搭載することで再エネ由来電源の電力を直接供給することができ、燃料費や充電回数の削減などが見込め、ユーザーの利便性向上への期待が高まっている。

EVへの太陽電池搭載のイメージ(画像と本文は関係ありません)

(C)MediaFOTO / PIXTA(ピクスタ)

シャープは1967(昭和42)年より宇宙用太陽電池開発を推進。2013年には化合物3接合型太陽電池セルで37.9%の世界最高変換効率を樹立するなど、太陽電池の研究・開発に長年注力している。

そんな同社は、こうしたニーズを背景に一般向けのEVから宇宙・航空分野まで移動体向けに、高効率・低コストで搭載可能な太陽電池モジュールの開発にも注力。今回の技術開発もその一環となる。

従来の化合物3接合型を2接合型へ、材料コストを節減

2020年からは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト」に取り組み、その一部で東京大学・豊田工業大学との共同研究を実施している。

同プロジェクトは電動車用パネルなどの開発を経て、高効率の太陽電池モジュールの研究へ移行。化合物2接合型太陽電池モジュールとシリコン太陽電池モジュールを組み合わせた積層型太陽電池モジュールを開発し、世界最高の変換効率33.66%を達成※2した。

化合物2接合型太陽電池モジュールは、トップ層にインジウム(In)、ガリウム(Ga)、リン(P)を、ボトム層にGa、ヒ素(As)を使用した2つの光吸収層を有する太陽電池である。

※2…2023年10月27日現在、研究レベルにおける太陽電池モジュールにおいて(シャープ調べ)

積層型太陽電池モジュールの構成イメージ

資料提供:シャープ株式会社

試作した太陽電池モジュールは、化合物2接合型太陽電池セルをトップ層に、シリコン太陽電池セルをボトム層に配置した新構造により、さまざまな波長の光を効率的にエネルギー変換できることから、高効率化を実現した。

2022年には化合物3接合型モジュールで32.65%効率を達成しており、その成功を飛躍させる研究となった。化合物2接合型太陽電池の厚さは、化合物3接合型太陽電池に比べて3分の1以下に薄層化され、材料コストの削減につながり、太陽電池技術の新たな節目を示した。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けた太陽発電の拡大が見込まれる中、EVや航空宇宙分野での応用を含め、多様な環境での利用拡大への道を示した。

高効率な太陽電池モジュールの開発は、経済性の向上だけでなく、太陽エネルギーの幅広い活用を促進し、未来のエネルギー供給に貢献することが期待される。

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