2024.11.26
高速道路の耐久性アップへ! NEXCO総研とNIPPOが新素材を開発
山陽道の舗装・補修工事に高弾性アスファルト混合物を投入
西日本高速道路株式会社(以下、NEXCO西日本)は、中国支社管内の山陽自動車道において、株式会社高速道路総合技術研究所と株式会社NIPPOの共同研究で新たに開発された高弾性アスファルト混合物(High Modulus Asphalt、以下HiMA)を舗装補修に使用した高速道路リニューアルプロジェクトに着手した。老朽化が懸念される高速道路の路盤破損のメカニズムを分析し、路盤舗装の高耐久化による舗装補修の頻度軽減を目指したこの取り組みを解説する。
(<C>メイン画像:ペイレスイメージズ2 / PIXTA<ピクスタ>)
路盤の変状メカニズムが新たに解明
東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)、中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)、NEXCO西日本の3社が運営する高速道路は、誕生から60年を経て、その長さは全国約1万kmに達し、自動車による貨物輸送の約8割を担っている。一方で、日々の物流を支えるネットワークは近年、過酷な使用状況と経年による老朽化が懸念されている。
この課題にNEXCO3社は橋りょう床板の取り換え工事、トンネルを補強するインバートの設置工事など最新技術を用い高速道路のリニューアルを進め、機能維持、性能強化、長寿命化を図ってきた。
最新技術によるリニューアルが進む一方で、調査技術の発達により道路の点検精度も向上。センサーを用い舗装を壊さず内部の損傷を確認する調査で、新たな劣化事象が判明した。
高速道路の舗装は表面から下へ「表層」「基層」「上層路盤」「下層路盤」の順に4層で構成されている。これまでは交通荷重による表層・基層に発生した変状の補修を繰り返すことで、舗装の健全性が維持できると想定してきた。
しかし近年、路面に土砂が吹き出す現象、路盤に及ぶひび割れなどが顕在化。その場合、路盤を同等性能の材料で補修しても短期間で新たな変状が再発し、補修頻度が著しく高くなる問題が生じていた。補修頻度が高くなれば工事を行う現場の労力・負担ものしかかり、業種を問わず問題となっている働き手不足の深刻化も懸念される。
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高速道路における舗装の変状メカニズム
資料提供:NEXCO西日本
そこでNEXCO3社はセンサーを用いた調査を行い、内部で生じるひび割れから舗装が壊れる事例が判明。実際に舗装を開削した結果、アスファルト路盤部にひび割れが見つかり、舗装の変状メカニズムが新たに解明された。
山陽自動車道で高耐久化が進行中
NEXCO3社はこうした損傷を抑えるため、新たな補修工法では損傷部分を耐久性の高い新しい材料に取り換えて舗装の長寿命化に取り組むことになった。
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舗装の高耐久化のイメージ。上層路盤を従来のアスファルトからHiMAに取り換え、層の厚みも10cmから15cmに変更する(山陽自動車道 岩国IC~玖珂<くが>ICの場合)
資料提供:NEXCO西日本
新たに開発されたHiMAを上層路盤に使用した舗装補修工事は、舗装の補修頻度を低減させることを目的に、舗装厚が比較的薄い箇所や路床および路盤の脆弱(ぜいじゃく)化が進む箇所を対象に実施する。
現在、NEXCO西日本中国支社管内の山陽自動車道岩国ICから玖珂IC間の下り線において工事が進行中。2025年4月には同じく岩国ICから徳山西IC間でも着手予定だ。
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舗装の高耐久化を図る補修工事の様子
画像提供:NEXCO西日本
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山陽自動車道岩国IC~玖珂IC下り線(九州方面)では走行車線および追越車線ともに補修が行われ、平日(月~金曜)の昼夜連続車線規制(規制延長:約10~12km)を実施。工事は12月中旬まで予定されている
資料提供:NEXCO西日本
物流に欠かせない総延長1万kmにも及ぶ高速道路。
安全、安心で長く利用されるために、その高耐久化プロジェクトが着実に進みだした。
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text: サンクレイオ翼
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