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CO2をコンクリートに封じ込める! 大成建設が目指す「カーボンニュートラル」実現への道筋

CO2排出をマイナス化する環境配慮コンクリートとは

「脱炭素社会」を目指す手段として掲げられている「カーボンニュートラル(炭素中立)」。大成建設株式会社は、建設に欠かせない“コンクリート”を通してこのカーボンニュートラルに挑戦し、コンクリートの製造過程において二酸化炭素(CO2)排出の主な要因となっているセメント使用量を減らした「T-eConcrete(R)」を新開発。さらに2021年にはCO2の収支をマイナスにするコンクリート「T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle」を開発し業界の注目を集めている。その仕組みと可能性、2050年を見据えた普及への課題について、同社の技術センター社会基盤技術研究部の大脇英司氏に話を聞いた。

環境配慮コンクリートはいかにして生まれたか?

地球温暖化に歯止めをかける手段として、温室効果ガスの排出量削減を掲げた「地球温暖化対策基本法案」が閣議決定されたのが2010年のこと。

2020年には、さらに目標を高くした「2050年カーボンニュートラル宣言」も発表され、二酸化炭素(CO2)排出は削減ではなくゼロ、あるいはマイナスにすることを求められているのが現状といえる。

通常、コンクリートはセメントと砂利・砂、水、混和剤などの薬剤を混ぜて作られる。セメントの使用量は体積で示すと全体の1割程度だが、そのセメントを製造する際に必要な燃料や、さらにはセメントの原料である石灰石そのものからCO2が大量に放出される。こうしたものを含めて、コンクリート製造時のCO2排出量のうち80%以上をセメント起因のものが占めている。

大成建設株式会社 技術センター社会基盤技術研究部の大脇英司氏は「現在は1m3のコンクリートを作るのに、260~300kgものCO2が排出されています。当社ではその主たる原因であるセメントの使用量を減らし、CO2排出量を減らした『T-eConcrete(R)』シリーズを開発しました」と語る。

博士(工学)、技術士(総合技術監理部門・建設部門)でもある大脇氏は、同社材工研究室、材料化学チームのリーダーを務める。コンクリートへの並々ならぬ見識を有している

「T-eConcrete(R)」は、セメントの使用量を減らし、またはセメントの代わりに製鉄などの過程で生まれる副産物の“高炉スラグ”を使用したコンクリートの総称だ。

同社では建築基準法に準拠したセメント配合量の「建築基準法対応型」をはじめ、鉄工所や発電所など石炭を使用し、石炭灰が大量に生まれる施設での使用に適した「フライアッシュ活用型」、さらにセメント使用量をゼロにした「セメント・ゼロ型」をこれまでに発表している。

また、2010年から“セメントを使用せず、「CO2を有効利用するコンクリート」”の開発にも取り組んでおり、国立研究開発法人 土木研究所との共同研究を通じて性能を評価するなど、建築・建設現場での実用化に向けて積極的に動いてきた。

「T-eConcrete(R)」のバリエーションと、製造時のCO2排出割合。CO2を固定した「T-eConcrete(R)/Carbon Recycle」は-20%の数値をはじき出している

硬化前の「T-eConcrete(R)/Carbon Recycle」(左)と硬化後の「T-eConcrete(R)/Carbon Recycle」。左が試験体、右は石材調建材「T-razzo(R)」加工例

画像提供:大成建設株式会社

直径10cmの「T-eConcrete(R)/Carbon Recycle」の断面。細かな白い点がすべて、コンクリート内に固定されたCO2

画像提供:大成建設株式会社

「通常のコンクリートを作る際に排出されるCO2の量を100%とすると、建築基準法対応型は40%弱、フライアッシュ活用型で30%弱となります。さらにセメント・ゼロ型では20%まで排出量を下げることができていますが、2021年の春に発表した『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』は、ゼロのラインを下回るマイナス20%を実現しました」

CO2排出収支をマイナスにするコンクリート

「『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』は、排出されたCO2を回収・再資源化する“カーボンリサイクル”によって生まれた炭酸カルシウムを利用したコンクリートです。大量のCO2をコンクリートの内部に固定でき、1m3あたり70~170kgの二酸化炭素の固定が可能になります。もちろんこの量がそのまま削減量になるわけではなく、製造や運送の際に排出されるCO2などを差し引きした結果、1m3あたりのマイナス量は5~55kgとなります」

「T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle」におけるCO2の吸収・固定の効果。製造時にCO2は排出するものの、炭酸カルシウム内のCO2固定量が上回り、結果的に排出量がマイナスとなる

さらに、そこに使用されるはずだった既存のコンクリートを製造・使用しないことで「排出されるはずだったCO2をなくす」という削減もできると考えれば、最大で1m3あたり265~355kgの削減効果が得られる。

これは、例えば延床面積100m2の住宅をこのコンクリートで建てた場合、その家庭から出る8~11年分のCO2排出量を相殺できる計算になるという。

これまでにも、各企業で環境に配慮したコンクリートの製造は研究されてきた。原料となる砂利や砂にCO2を吸収させたり、コンクリートの練り混ぜ時に一緒に練り込んだり、建設現場などでコンクリートを流し込んだ後で吸収させるなど多くの方法が考案されているが、コンクリート製造の場に新たな設備追加が必要なものも多く、広く普及させるには課題がある。

「『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』は通常のコンクリートと製造過程は同じで、特別な設備への投資は不要です。また、高濃度のCO2を生コン工場や建設現場で扱う必要もなく、安全面でもメリットがあります」(大脇氏)

さらに気になるのは強度や実用性だが、「T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle」は建設現場で用いられるコンクリートと比較して強度も同等で、熱膨張や塩害への耐性も高いものになっている。

特筆すべきは鉄筋のさびを防ぐ力だ。

CO2を含む炭酸カルシウム、製鉄過程などで副生される高炉スラグを用いることで製造できる「T-eConcrete(R)/Carbon Recycle」。シンプルな工程が、より実用化を推し進める

「コンクリートというのは強アルカリ性を示しますが、CO2は弱酸性。つまりCO2をコンクリートそのものに溶かし込むと徐々にアルカリを中和していき、コンクリートの中にある鉄筋のさびにつながります。『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』は弱アルカリ性の炭酸カルシウムを添加するだけですから、鉄筋のさびを防げるアルカリ性を保ったまま施工・供用が可能です」

現場での実用化についてはコスト面でのメリットづくりや建設時のルール整備が追い付いていないためまだまだ発展途上である、としながらも、高いポテンシャルを見せているという。

「2014年、当社技術センターのZEB実証棟(※)に『建築基準法対応型』を使用しました。また、『T-eConcrete(R)』シリーズは高炉スラグを多く含むため白っぽい色に仕上がる点を生かして、道路のブロックや街中のベンチ、さらに床や壁など、デザイン性が発揮できる場所への施工もしています。現場でコンクリートを直接流し込んで固める“現場打ち”をするのではなく、工場で製造して出荷する“二次製品”としての実用にも注力し、2021年には大阪のシールドトンネル工事現場に採用されました」
※Zero Energy Building(ゼロ・エネルギー・ビル):2014年竣工。オフィスとして利用しながら、導入した省エネルギー技術や太陽光パネルによる創エネルギー技術の検証を行い、ビル単体での年間エネルギー収支ゼロを竣工以来5年間達成し続けている

「2050年カーボンニュートラル」実現の足がかりとして

地球環境の保全は世界中が直面している課題だ。

「T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle」が完成したことでCO2のマイナス化を実現した同社だが、同時に今後の課題も見えてきている。

2016年に発効した「パリ協定」に応える形で2020年10月に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル」。

長年頼ってきた石炭火力による発電から新たなエネルギーへシフトするとともに、各事業者単位での温室効果ガス排出削減への取り組みや、さらには新たな技術開発による温室効果ガスの低減・再資源化が喫緊の課題だ。

「『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』実用化に向けて、第三者による性能評価を行い、使用時のガイドラインやマニュアルを作成することで促進する必要があります」(大脇氏)

「『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』をより多くの建設現場に取り入れるためには、実用化面の課題と生産面の課題があります。実用化においては、法整備がまだ進んでいないこと。施主にとって新しい素材や技術を取り入れるというのは難しい判断になりますし、実績がない状態では採用してもらうのも厳しい。生産面では炭酸カルシウムの安定供給が課題です。従来化粧品や食品、ゴムやプラスチックに用いられてきた化学合成による炭酸カルシウムは、コンクリートなど大きなものに用いるレベルでの大量生産が行われていません。CO2を取り込んだ炭酸カルシウムをより低コストで生産する技術も必要となってきますし、もしもこうした技術をお持ちの企業があれば、ぜひ一緒に取り組んでいきたいですね」

2019年6月に経済産業省が取りまとめた「カーボンリサイクル技術ロードマップ」において、コンクリートはさらなる低コスト化を求められている。

「元々、コンクリートというのは非常に低価格なものです。というのも、大量生産によるコストの縮減や国内の各地への供給に適したサプライチェーンの構築が十分に進んでいるからです。『T-eConcrete(R)/Carbon-Recycle』は炭酸カルシウムを添加する必要があるためその分の費用はかかりますし、各工場への炭酸カルシウムの供給が欠かせません。どこか1カ所で製造して各地へ運送していては、そのトラックを動かすための燃料が必要になり、二酸化炭素の削減効果が減ってしまいます。低コスト化を実現する技術の開発とともに、どこででも炭酸カルシウムを作れるようになったり、炭酸カルシウムを供給できる企業が各地に増えたりすれば『T-eConcrete(R)』の可能性は大きく広がるでしょう」(大脇氏)

もちろん脱炭素化は、大成建設1社の力のみで実現できることではない、と大脇氏は続ける。

各社の技術を適材適所に組み合わせながら進めていくべきカーボンニュートラルの実現──。

建設業界からその一翼を担えたら、と意欲をのぞかせた。

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