未来シティ予想図

富山県南砺市が“エコビレッジ”で目指す持続可能な地域づくり!

リバースプロジェクトと連携してSDGs(持続可能な開発目標)の推進に取り組む

空飛ぶクルマや人型ロボットが行き交う未来を想像すると胸が高鳴るものの、気候変動など地球規模の環境変化とも向き合っていく必要がある。「SDGs(Sustainable Development Goals)」が世界共通の課題として広く認識される以前から、俳優の伊勢谷友介氏が立ち上げたリバースプロジェクトはさまざまな形で社会貢献活動を行ってきた。2011年からは、全国の地方都市とタッグを組んで“持続可能な地域づくり”にも着手。豊かな未来を目指して、現代人は何ができるのか──。彼らを突き動かす問題意識は、決して他人事ではない。
TOP画像:sada / PIXTA(ピクスタ)

南砺市が掲げる“エコビレッジ”の浸透を目指して

伊勢谷友介氏を中心に、建築家やアーティストといったさまざまな才能を持ったメンバーが集う「リバースプロジェクト」。衣食住、あらゆる分野で社会貢献を願う企業・団体の商品開発やイベントのプロデュースを担うなど、多岐にわたる活動を続けている。

2011年からは一般社団法人として、各自治体や民間企業と共同して持続可能な地域づくりにも取り組んできた。理念や具体的なプロジェクトの進捗、今後のビジョンについて、代表理事の村松一(はじめ)氏に話を聞いた。

「リバースプロジェクトは『人類が地球に生き残るためにはどうするべきか?』という命題を掲げています。地域づくりにおける目標も、人々が持続可能な生活を営んでいけるようなコミュニティを各地で展開していくこと。具体的には、全国各地で、水や食料、エネルギーを可能な限り自給自足するための計画をデザインしたり、人々が政策に関する合意形成を行えるコミュニティを作るお手伝いをしています」

「一般社団法人 リバースプロジェクト」の代表理事を務める村松一氏。1975(昭和50)年、奈良県生まれ。地域づくりのみならず、全国各地で建築家としての知識や経験を生かした商品開発や空間デザインも手掛けてきた

現在、村松氏が軸足を置いているのは富山県南砺市におけるプロジェクト。

2012年に同市の田中幹夫市長から直々のアプローチを受けて動きだすことになった。

「市長が飛び込みで事務所を訪ねてきて、南砺市が掲げる『エコビレッジ構想』に参加してほしいと。その気さくな人柄や、われわれの理念に通じるビジョンに共感しました。そして、現地に『土徳(どとく)』という相互扶助の文化が根付いていることにも大きな可能性を感じましたね」

「エコビレッジ」とは、海外に先行事例がある循環型社会を実現する地域、自主コミュニティを意味する。国内では企業によって開発名称として使われる事例はあったものの、自治体主導の本格的な試みとしては国内初だった。

「これまでに南砺市の地形的中心部に位置する桜ヶ池をモデル地区と定め、木質バイオマスのエネルギーを使ったペレット工場や、化学肥料や農薬を用いない炭素循環有機栽培などの整備を完成させました。さらに、南砺市の豊かな自然や独自の文化を次世代につないでいくために、寄付金の運用などで地域の課題解決に取り組む『南砺幸せ未来基金』を設立。そういった活動の周知を図るために、市民参加型の会議やワークショップも定期的に実施しています」

富山県西部に位置する南砺市は平野部と山岳部で構成され、世界遺産である「白川郷・五箇山の合掌造り集落」を擁する。浄土真宗の教えを基に、人々が利他的で豊かな自然に感謝しながら暮らす精神が根付いており「土徳の里」と呼ばれてきた

(C)まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

市長からの要請があったとはいえ、地域づくりは生半可な気持ちで推し進められるものではない。村松氏は実に7年以上もかけて住民との信頼関係を築き上げてきた。

「どこへ行っても同じですが、地域づくりにおいてわれわれのような在京の組織は“よそ者”という印象がなかなか拭い切れないものです。そこでしっかりとした活動を行うために、リバースプロジェクトでは一担当者が一地域に軸足を置くスタイルを理想としています。日帰りであちこちの地域に行っているようでは、やはり不信感を抱かれてしまいますからね。私自身もこれまでに数百回は南砺市に足を運んでいますし、家族を東京に残して現地に移り住み、厳しい冬を体験したこともあります」

南砺市が掲げる「エコビレッジ構想」の桜ヶ池エリアのアクションプランマップ

築350年の合掌造り家屋を活動拠点に

昨年7月には、エコビレッジ構想の推進拠点として、南砺市の合掌造り家屋をゲストハウスに再生させた「かずら」をオープン。運営はリバースプロジェクトが担っている。

「合掌造りのハードとしての強さは申し分ありません。築350年以上の歴史ある建物は世界文化遺産の合掌造り集落がある五箇山から移築され、かつては料理店として使われていました。以前の所有者の方は、民芸品を扱いながら文化拠点にしたいという思いがあったそうです。そんな背景も含めて、人を集める引力を感じました」

南砺市立野原東の桜ヶ池を見下ろす高台に立つ「かずら」。空き家だった合掌造りをリバースプロジェクトが補助金を活用しながら買い取り、自分たちで改修作業を行った

3階建て構造の家屋のうち、現在は1階だけを開放している。

バス・トイレ付きの客室が2室あり、最大の特徴は共有スペースが広くとられていること。

「設計で意図したことは、地元のコミュニティでいろいろなイベントや会合をする方と、観光で訪れた方が、図らずも交流できるような空間を創出することです。もともと商業的な成功を目指して購入したわけではないですし、約2年前には改修作業が完了していましたが、オープンを焦らずに慎重に時間をかけて準備しました。現地での運営を任せるマネージャーも、選考に半年ほど時間をかけて採用しました」

1階の共有スペースは会合やイベントに活用できるように開放している。地域の歴史学習や食育、伝統産業体験を盛り込む体験イベント「かずら塾」を展開する計画も立案中。今後は2・3階の活用も考えていくという

“半農半〇”の成功事例を増やしていきたい

南砺市は昨年7月、内閣府からSDGs達成に向けて環境に優しいまちづくりなどに取り組む「SDGs未来都市」に選定された。

木質ペレットの生産や農林業の再生が評価されており、今後はエコビレッジ構想のさらなる深化が期待されている。具体的には、南砺市の移住者を対象に“半林半〇”“半農半〇”を実践。林業とクリエイターを両立するなど、個人に合わせた生活スタイルを提案していく。

「やはり、移住してきて早々に100%農業や林業の従事者になるのは難しいと思います。そこで、住民が木を切り出してペレット工場に持って行けば地域通貨がもらえるようにします。その地域通貨で生活用品を購入できるようになり、地域のコミュニティで回るような経済の循環の仕組みを整えている最中です」

村松氏はエコビレッジ市民会議アドバイザーとして南砺市の構想に通年参加してきた

人類が地球環境に与えている負荷の大きさを測る「エコロジカル・フットプリント」という指標によれば、世界中の人がアメリカ人と同じ生活をしたら自然資源は地球5個分必要になると言われている。日本を基準に合わせても地球2個分に相当する。

このまま人類が存続していくためには、現代人は地球1個分の暮らしができるようにライフスタイルを最適化する作業を始めなければいけない。そこに向かっていくためにも、まずは多くの“半林半〇”“半農半〇”のような成功事例を生み出していく必要がある。

「もともと南砺市には兼業農家の方がすごく多いのです。伝統工芸の職人さんも農業をやっているし、市役所の方でさえも農繁期には仕事を休んで稲刈りに励んだりしています。クリエイティブなライフスタイルを実現することが根付いているんですね。したがって僕らがやらなければならないのは、そういった生活のサンプルをたくさん作っていくこと。真似したくなるような事例を数多く作ることが大事なことだと思っています」

「何も行動せずに地球の足を引っ張るのはダサい」。そんな思いで、リバースプロジェクトは地域づくりに励んできた。

「最終的に出入り禁止になるか、行くたびに歓迎されるか。どちらかになるくらいの覚悟を持っていないと、地域づくりはできません。どっちにもならないようであれば、何もしていないのと一緒ですから。これからも、地域に根ざした活動を続けていきたいですね」

南砺市エコビレッジ構想では、“世界に誇る一流の田舎”を目標として掲げている。

その将来像は、持続可能な本当の地域のあり方なのかもしれない。

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