空想未来研究所2.0

1発で人類3600億年分のエネルギー! 超ド級戦闘要塞「デス・スター」の中身を分析

『宇宙の建造物』のエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「宇宙の建造物」。昨年末にエピソードⅨが劇場公開された映画『スター・ウォーズ』シリーズで、ファンの心を捉えて離さない超巨大戦闘要塞「デス・スター」のエネルギーについて考えてみました。

衝撃!二等辺三角形で与えた「どこまで感」

1977年に公開された『スター・ウォーズ エピソードⅣ 新たなる希望』のオープニングは、衝撃的だった。

惑星に向かって進む宇宙船。それを別の宇宙船が追っている。追跡する宇宙船は三角形で、その船底がどんどん画面を覆っていくのだが、進めども進めども船体が続く。どんだけデカいんだ、このフネは!?

この「どこまで感」を際立たせているのが、船体が二等辺三角形であることだろう。

通常の船の両舷は曲線になっているから、そのカーブの変化から全体の大きさが推し測れる。ところが、直線に挟まれた二等辺三角形だと、それができない。数学的にも感覚的にも、大きさがまったく予測不可能!

これぞ帝国軍の主力艦スター・デストロイヤー。後日リリースされた情報によれば、いくつかの艦種があり、ここに出てきた「インペリアル級」は全長1600m。艦尾がJR渋谷駅のホームの南の端にあるとすれば、艦首はJR原宿駅のホームの北の端!

常識を打ち破るスケールであり、まさに宇宙を舞台とするにふさわしいが、この映画にはさらなる超ド級の建造物が登場する。そう、戦闘要塞「デス・スター」だ。

デス・スターは初代、第2と2つ建造された。

初代は直径120km。東京上空に飛来したら、神奈川、埼玉、千葉にも影を落とす!

第2デス・スターはさらに大きく直径160km。同じく、山梨、群馬、栃木、茨城の一部まで影の中!

乗員は、初代が100万人、第2が200万人(諸説あり)!

表面に配備されたターボレーザーの砲塔は、初代が1万5000基、第2が3万基!

そして、どちらも搭載するスーパーレーザーは、惑星さえも破壊する!

この恐るべき戦闘要塞を、エネルギーの観点から分析してみよう。

デス・スターの床面積、日本よりはるかに広い

直径120km、160kmとは、とんでもない大きさだ。NASAは、地表から高度100km以上を「宇宙」と呼んでいる。もし両デス・スターが地球に着陸したら、どちらも上部が宇宙に飛び出す!

この巨大な戦闘要塞は、ハイパーマター(超物質)反応炉で稼働するという。その反応炉も、もちろん巨大である。『エピソードⅣ』に初代デス・スターの断面図が出てきたが、それによれば反応炉も球形で、直径はデス・スター全体の12分の1。すなわち直径10km!

現在、日本の量子科学技術研究開発機構が、試験用核融合炉「JT‐60SA」を建設中だが、その直径は12m、高さは16m。その数百倍という激烈な大きさだ。

内部空間もかなり広かっただろう。筆者は断面図を見たとき、居住区や格納庫は、反応炉の周囲に同心球状で配置されていると思い込んだ。そして、その部分の厚さは55km(デス・スターの半径60km-反応炉の半径5km)だから、天井の高さを平均5mとすると、1万1000階層に及び、「エレベーターで移動するのも大変だろうなあ」などと夢想していた。

ところが、違った。『エピソードⅥ』に出てきた建造中の第2デス・スターは、下から上に平行な床が並んでいる。つまり、輪切り状!『エピソードⅢ』で描かれた建造中の初代デス・スターも輪切り状!

これでは、一番下から一番上に行くには、反応炉を迂回せねばならず、不便ではないかなあと思ったものだ。

そして、最近になって『きみは、知っているか!? スター・ウォーズ はやわかりデータブック』(講談社)という書物に出合い、さらなる驚愕を味わう。

初代デス・スターは357階層、第2デス・スターは560階層だというのである! これ、天井がモノスゴク高いことにならないか!?

1階層の平均の厚さ、すなわち建築資材の厚さを無視した天井の高さは、初代が336m。建築資材の厚さが3mを超えない限り、357階層の各階に東京タワーが立つ!

第2の天井の高さは、286mとやや低い。第2は、初代の欠点を改善して建造されたというが、「やっぱり天井が高すぎたかな~」と反省したのかもしれない。

総床面積は、どれほどあるのだろうか。初代デス・スターの反応炉を除く体積は904兆m3。その10%を建築資材が占めるとすると、内部空間の体積は814兆m3。これを天井の高さで割れば、近似値ではあるが、かなりの精度で総床面積が出るはずだ。

答えは242万km2。日本の国土(37.8万km2※北方領土含む)の6.4倍、世界10位のアルジェリア(238万km2)より広い!

第2デス・スターは675万km2で日本の17.8倍。世界7位のインド(329万km2)の2倍を超え、世界6位のオーストラリア(769万km2)に迫る!

これほど広い船内に100万人とか200万人しかいなかったら、ガラーンとしているのではないだろうか。人口密度は、初代が0.413人/km2、第2が0.296人/km2、世界で最も人口密度の低いモンゴル(2.07人/km2)を下回る。

3交代制で警備に当たるとしたら、初代の兵士は1人で2.7km四方を、第2は3.2km四方を担当しなければならない。

ルークたちは、警備の目をかいくぐって結構自由に動き回っていたが、これほど手薄だったら、当然かもしれない。

スーパーレーザー1発=人類3600億年分

デス・スターの象徴といえば、惑星をも破壊するスーパーレーザーだろう。ここでは、『エピソードⅣ』で、レイア姫が育った惑星オルデラーンを破壊したシーンに注目しよう。

虜囚としたレイア姫に、デス・スター司令官のターキンは、反乱軍の基地の場所を白状させようとする。そうしなければ、レイア姫の故郷・惑星オルデラーンを破壊すると言うのだ。

レイア姫は、住民20億人を犠牲にはできないと、やむなく口を開く。情報を得ると、ターキンはスーパーレーザーの発射を命じた! レイア姫が答えようと答えまいと、初めから彼女の故郷を爆破するつもりだったのだ。

そして、デス・スターから緑色の光線が発射され、オルデラーンは大爆発。レイア姫は、一瞬にして故郷と20億の同胞を失ったのだ。心ない者に強大な武器や権力を持たせると、本当に何をするかわからない。

オルデラーンの人々の冥福を祈りつつ、この悪魔の兵器のエネルギーを求めよう。

天体の破壊には、2通りが考えられる。それはエネルギーの量によって変わる。

エネルギーがある境界に達しなければ、飛び散った破片が互いの重力で再び集まる。ただし、元に戻るのではなく、衝突のエネルギーで熱が発生し、惑星全体がドロドロに溶けたマグマの塊になる。地球が誕生したときに起こった「マグマ・オーシャン」だ。

エネルギーがある境界以上だと、破片が互いの重力を振り切って飛び散り、後には何も残らない。

映画の描写から、オルデラーンは後者のタイプの破壊をされたと思われる。

その境界となるエネルギーを「天体破壊の境界エネルギー」と名づけると、これを求める式は、次の通り。

【天体破壊の境界エネルギー=3/5×天体の質量×表面の重力加速度×天体半径】

「重力加速度」とは重力の強さを表す数字で、地球の表面の場合は9.8[m/秒2(m毎秒毎秒)]。オルデラーンの質量と半径が地球と同じだとすれば、質量は5.97×1024[kg]、半径は6.38×106[m]。重力加速度も同じになる。

ここからスーパーレーザーが放ったエネルギーを計算すると、2.24×1032[J]。これは全世界で消費されるエネルギー(2018年石油換算で138.6億t)の3600億年分! 平和利用すれば、どれほど喜ばれただろう。

エネルギーが莫大なだけに、一度放つと、エネルギー充塡のために次を撃つまでに時間がかかっていた。おそらく、そのエネルギーは、ハイパーマター反応炉から供給されていたのだろう。

前出の『きみは、知っているか!?~』によれば、「スーパーレーザーの再充電時間は24時間」(原文ママ)。「そんなにかかるのか……」と思ったあなたは、数行前を読み直してね。スーパーレーザーは、全人類が3600億年も暮らせるエネルギーを持っているのだ。それを24時間で供給できるって、すごすぎないですか!?

24時間とは8万6400秒だから、ハイパーマター反応炉の出力は…

【2.24×1032[J]÷8.64×104[秒]=2.59×1027[W]=2.59×1024[kW]】

『グローバルエネルギー統計イヤーブック2019』(Enerdata)のデータから計算すると、2018年の全世界の発電力は30億kW。ハイパーマター反応炉が1基あれば、地球を864兆個も維持できる!

銀河系にある恒星は2000億個だから、その全ての惑星に住人がいたとしても楽々と暮らせる。本当に、心から平和利用をお願いしたい。

デス・スター、マッハでぶっ飛んでいく

こんなエネルギーをぶっ放して、デス・スター自身は大丈夫なのか。

ピストルを撃つと反動を受けるように、光も一方向に発射すると反作用が発生する。その反作用が大きければ、自分が後ろにぶっ飛ばされることもある。その速度を求める式は、次の通り。

【光の反作用で飛ぶ速度[m/秒]=光の出力[W]÷光速[m/秒]÷物体の質量[kg]】

つまり、飛ばされる速度は、光の出力が大きいほど速くなり、質量が大きいほど遅くなる。光速は2.998×108[m/秒]で、この大きな数値も速度を遅くするのに貢献する。さて、実際にどうだろう。

デス・スターが鉄(宇宙で最も多い金属)でできていて、全体積の10%をこれが占めるとすれば、質量は712兆t。全世界で生産される粗鋼(そこう:加工前の鋼。2019年で18億6990万t)の38万年分である!

しかし、光の出力が半端ではない。スーパーレーザーが発射されていた時間は2秒ほど。2.24×1032[J]を2秒で放つ出力とは、1.12×1032[W]。

もうお分かりですね。デス・スターは猛烈に重いけれど、出力が途轍もないので、ぶっ飛ばされる速度は信じがたいものになる。

結果はこれです。秒速52万4000m=マッハ1540!

ターキン司令官にとっては、オルデラーン側にある壁が、マッハ1540でぶつかってくるわけである。コイツは自業自得だけど、レイア姫がカワイソウだ~。

あまりに巨大すぎて運用が困難な戦闘要塞に、あまりに強力すぎて自らをも破滅させる究極兵器。しかし、その裏側には、銀河系の全住人が平和で豊かに暮らせる技術がある。科学も技術も使い方次第ということだ。人間の想像力は本当に素晴らしい!

※原稿では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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